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2023-11-14

【相撲編集部が選ぶ九州場所3日目の一番】琴ノ若が、幕内では13年ぶりの「大逆手」で逆転勝利し3連勝

これが「大逆手」。琴ノ若が右上手の方向に投げるようにして明生の体を裏返し、右足をつかせていることが分かる

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琴ノ若(大逆手)明生

14年近く現れなかった技で、窮地を脱した。
 
うまい相撲で明生に食いつかれ、土俵際に追い込まれた琴ノ若が、珍しい「大逆手(おおさかて)」という技で逆転勝ち。初日から3連勝とした。

「大逆手」は、大きく肩越しに上手を取り、上手をつかんだ腕の方向に相手を投げる技。この日の琴ノ若は、最後はモロ差しになられ、右上手一本になったが、土俵際で左から突き落としを見せ、その流れで最後は右上手から捻るようにしながら投げて、明生の体を裏返しにして右足を先につかせた。
 
この決まり手は、平成13年1月場所から公式発表に用いられるようになったもの(それ以前は、この形は概ね「上手捻り」で処理されていた)。以降幕内では、平成17年11月場所8日目に安美錦(現安治川親方)が高見盛(現東関親方)に、同22年1月場所14日目に把瑠都が垣添(現雷親方)に決めており、今回が3例目となった。
 
珍しい決まり手に、「初めて聞きました」と琴ノ若。ただ本人にとっては、決まり手どうこうより、「うまく中に入られてしまった」という危ない相撲を何とか拾ったことのほうが大きいだろう。
 
実際、この日の一番は危なかった。差し手争いで先手を取られ、左から抱えて何とか右を差し、下手を取ったが、この差し手はほとんど効かないような形。そこから左を巻き替えてモロ差しになった明生に、左を肩の近くまで差し込まれて食いつかれ、ヒザが伸びて立ち腰になるような形で土俵際まで攻められた。ギリギリで相手の攻めをしのぎ、最後に投げ捨てたのは、まさに執念だった。

「“もう一丁“かと思っていた。取り直しになってもいいように準備していた」と琴ノ若。それでも(土俵際のしぶとさは)「往生際が悪いというか、あきらめが悪いんじゃないですか」と笑顔を見せた。これで初日から白星を3つ並べ、この日を終わって貴景勝、霧島、豊昇龍の3大関、関脇大栄翔、さらには平幕の5人(湘南乃海、熱海富士、竜電、玉鷲、一山本)との並走をキープする形となった。
 
今場所、ここまでの相撲内容を見ると、3大関、中でも霧島がより充実しているように見えるが、とにかくトップ並走で進んでいけば、直接対決を残す限り、優勝へのチャンスは十分に残る。「まだ勝ち越したわけじゃないんで。でも、これが続いていけばいいと思います」。琴ノ若はこれまではどちらかと言うと後半戦に追い込んでくるタイプだったが、どこまで大関陣に食いついていけるか。
 
もちろん、先場所優勝同点の熱海富士をはじめ、平幕の全勝5人も実力者なので、ダークホースとなり得るが、上位陣が順調に星を重ねている今場所は、久しぶりに三役同士の争いを中心とした優勝争いが展開されそうな雲行き。充実の内容を見せる大関陣に関脇陣がついていくことができれば、より厚みのある優勝争いが見られることになるはずだ。こうなったら、もうしばらくはこのまま上位陣に力を見せてもらい、「さあ、これから後半戦で上位陣の星の潰し合いだ」という、このところすっかり忘れていた興奮を思い出したいような気もする。

文=藤本泰祐

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