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2023-11-17

【相撲編集部が選ぶ九州場所6日目の一番】豊昇龍、苦手の髙安に敗れ土。翔猿戦の連敗止めた貴景勝がにわかに再浮上!?

鮮やかな小股掬いで豊昇龍を倒す髙安。豊昇龍に土がつき、幕内の全勝は琴ノ若と一山本の2人に

髙安(小股掬い)豊昇龍

嫌な対戦成績は、生きていた。
 
この日の相手の髙安との対戦成績は、豊昇龍から見て2勝7敗。しかも直近の1勝は不戦勝なので(ただし、髙安にも過去不戦勝が1勝あり)、土俵上で勝ったことは1回(令和4年5月場所9日目、とったり)しかなく、実際の取組では3連敗中だ。
 
なので、豊昇龍にとって髙安が取りづらい相手であることは間違いがない。が、ただそうは言っても、今年の5月場所以降は対戦がなく、最近の豊昇龍の力の伸び具合、さらには今場所の調子を考え合わせれば、そろそろ大関が対戦成績を挽回し始める頃合いでは、という予想も立っておかしくはなかった。
 
だが結果はまさかの決着。大関は土俵中央で足を掬われ、ひっくり返された。
 
立ち合いから先手を取ったのは、豊昇龍だった。低く当たると、右のノド輪や突きで攻めた。髙安は土俵を回りながらこれをかわすと、少し突き返したあとイナシで距離を取り、攻められながらも何とか左差し。四つになって動きが止まったことで、「左がうまく入りましたんで、慌てず勝機を探りにいきました」という髙安には落ち着きが、そして豊昇龍には焦りが生まれた。
 
豊昇龍は抱えた右から強引な小手投げにいくが不発。左をさらに深く差した髙安が掬い投げを打ち返し、これをこらえた豊昇龍の右足が前に出たところを、「稽古場では(小股掬いを)よくやりますよ」という髙安が右手で掬って、鮮やかに大関をひっくり返した。
 
かくして豊昇龍に土。この日は熱海富士も、佐田の海に左上手を遠ざけながらのうまい攻めを見せられて黒星がつき、全勝は関脇琴ノ若と平幕の一山本の2人となった。また、霧島は豪ノ山に、大栄翔は正代に敗れて2敗に後退、貴景勝は翔猿を降し、1敗は貴景勝、豊昇龍、翠富士、熱海富士、美ノ海の5人となった。
 
貴景勝はこのところ5連敗と大の苦手にしていた翔猿の立ち合い変化にも落ち着いて対処、頭を下げずに、よく見ながら相手を正面に置いて胸を突く形で攻めて最後は送り出し。翔猿は立ち合いの変化で相手の勢いをそぎ、動き合いに持ち込むことには成功したが、相手に圧力をかけていないので、大関を慌てさせるには至らなかった。
 
貴景勝にとっては、前半戦で最も嫌な相手を突破する大きな白星。また状況的にも、これで前を行く上位陣は琴ノ若一人となり、豊昇龍とは並び。霧島、大栄翔は後続に回る形となって、優勝争いの上でも順位が上がってきた。もちろん、今場所後の綱取りに関して「残りほぼ全勝縛り」ということには変わりはないが、きのうまでほんのかすかだった可能性が、にわかに復活してきたと言えるだろう。
 
場所はまだ中盤戦に入ったばかり。関脇の琴ノ若が逃げ、3大関が追うという展開は、この先にまだまだヤマ場がいくつもありそうだ。

文=藤本泰祐

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