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2023-11-19

【相撲編集部が選ぶ九州場所8日目の一番】霧島除く大関・関脇総崩れ。貴景勝は休場明けの朝乃山に敗れ3敗目

貴景勝は体を預けたところを朝乃山に逆転の下手投げを決められ3敗目。今場所後の綱取りの望みはほぼなくなった

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朝乃山(下手投げ)貴景勝

幕内前半の取組で一山本が宝富士を突き落として1敗を守った後、幕内後半の土俵は荒れに荒れた。
 
関脇の取組に入り、まず一番手の大栄翔が阿炎に土俵際でかわされ3敗目。さらにはきのうまで1敗で優勝戦線のトップに並んでいた琴ノ若が、正代の強烈な左おっつけで攻め込まれ2敗目。立ち合いからの攻めは悪くなかったが、相手を起こし切れず、逆襲を招いた。続く若元春は、一瞬、得意の左を差しかけたが、そこから右ノド輪で突き放して右を差してくるという豪ノ山の予想外の攻めに押し出されて3連敗となる5敗目。豪ノ山はこれで2大関1関脇に3連勝だ。
 
大関が登場してもなお波乱はやまない。まずは貴景勝だ。相手の朝乃山は左ふくらはぎの肉離れで7日目まで休場し、この日から再出場。貴景勝は前に出て攻め込んだが土俵際で体を預けたところで逆転の下手投げを食らい、物言いがつく際どい相撲ではあったが敗れて3敗目。そして、きのうまで1敗の豊昇龍も、苦手の錦木を相手に突いて出たが、今場所も攻めきれず。小手投げでかわされると下半身が崩れるような形であえなく2敗目を喫した。結びで最後のトリデの霧島が北勝富士を送り出し、なんとか全滅は免れたが、この日の大関・関脇陣はまったく無残だった。
 
中でも痛い黒星なのは今場所綱取りを懸けていた貴景勝だ。逃げたり隠れたりする相手ではないので、立ち合いから先手を取って押していくことには成功したが、体を預ける形での勝負にしてしまったのが結果的にあだとなり、「左下手が取れて、投げを打った。内容は悪いけど、思い切ってやろうと思って」という朝乃山の動きと波長が合うことになってしまった。おそらくは体が反射的に動き、「ここが勝負」となってしまったのだろうが、相手は押される角度次第では踏ん張れないはずなので、もう少しじっくり攻める手もあったか。
 
貴景勝はこれで3敗目。トップとは星2つの差なので、まだ逆転優勝の望みはないわけではないが、中日まで5勝3敗の星は、とりあえずは優勝がどうとか横綱がどうとかいう話ではなくなってきた。平幕相手の3敗に、粂川審判長(元小結琴稲妻)も「もう厳しいんじゃないですか」という見解。この日をもって、今場所の大きな焦点は一つ消えたと言っていいだろう。

一方、「宿舎をテレビで見ているときは出たくてうずうずしていたんですけど、朝には逆に緊張した。土俵下では足が震えていたんですが、土俵に上がれば大丈夫でした」と朝乃山。ここから1番でも2番でも白星を重ねていきたいところだが、割を見ていると今後も上位と当てられる可能性は高く、あるいは今後の優勝争いのキャスティングボートを握る存在になるかもしれない。
 
優勝争いは、折り返し点を迎えて1敗が平幕の一山本ただ一人、2敗で霧島、豊昇龍、琴ノ若ら9人が追う形に。2敗の三役陣も負けるときはけっこうモロく、それほど決め手がある内容ではないが、霧島がこの日の「一人勝ち」で浮上してきたのは大きいか。
 
まずはあす9日目、豊昇龍と琴ノ若が2敗同士で激突。さあ、サバイバル戦の始まりだ。

文=藤本泰祐

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