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2023-12-18

【箱根駅伝の一番星】「チームを引っ張ってくれた4年生が笑って卒業できるように」順大・村尾雄己が主力としての自覚を持って主要区間を走る

村尾は昨年度の経験を得て、今季は主軸として箱根路に挑む(写真/中野英聡)

陸マガの箱根駅伝2024カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」では、出場23校の注目選手を紹介。昨年、順天堂大で三大駅伝に1年生で出走したのは3000mSCでも活躍する村尾雄己(2年)ただ一人だった。箱根に出走するも満足いく走りはできず、涙を流したが、その経験を経て迎えた今季、先輩方や後輩から刺激を受け、大きな成長を遂げた。主軸として覚悟を持って2度目の箱根路へ挑む。

学生の枠を超える戦いを経験しさらなる高みを目指す

前回の箱根駅伝は順大のなかでただ一人の1年生として出走するも、6区区間17位。フィニッシュ地点の大手町で4年生から「来年、頑張ればいい」と声をかけられると人目もはばからず、号泣した。
「あそこまで悔しく、情けないレースは初めてでした。自分の練習やレースに対しての甘さを痛感しました」
その経験から新チームでは自ら、前に出て引っ張る存在になろうと決めた。高校時代から村尾の周囲には常にエース格の選手がおり、そこについていくことが多かったが、その役目を自分で担うことにより、競技力向上につなげたいと考えたためである。
「まだ先の話ですが、4年目にはキャプテンもやりたいです。昨年度だった主将だった西澤侑真さん(現・トヨタ紡織)も箱根前には自分に“好きなように走ってこい”と励ましてくれるなど、いつも周りに気を配って言葉をかけてくれていて、自分もそういう周りを安心させられる存在になりたいと思っています」

トラックでは3000mSCが専門。この種目で世界と戦う三浦龍司(4年)の背中を追うが、同時に今年は5000mで日本人高校最高記録を持つ高校の後輩、吉岡大翔が入学し、大いに刺激を受けた。6月には初の日本選手権出場も果たし、実業団選手とも競い合った。
「この経験も大きかったですね。来年からは出るだけでなく、そこで戦えるようになりたいと考えています。三浦さんだけでなく、吉岡もレベルの高いところを目指しているので同じ景色を見たいです」と学生の枠を超える経験をし、さらに速くなりたいという思いが強くなったという。

主軸としての覚悟を持った走りを箱根路で

そして9月には日本インカレ3000mSCで優勝。初のタイトル獲得で大いに自信をつけた。この1年、村尾の変化を見続けてきた長門俊介監督は「年間を通じて頑張っていますが、日本インカレを勝ったことでまた変わりました。長い距離への対応もしっかりできていますし、箱根では重要な役目を果たすことになりそうです」と期待を寄せる。前回の箱根直後、村尾は長門監督に「次の箱根は平坦区間で戦えるように力をつけたい」と話したという。その言葉どおりの成長を遂げており、今大会の順大の鍵を握る存在と言えるだろう。
「全日本で10位とシード権を落とし、三浦さんから“来年、予選会からの参加になってしまい申し訳ない”と声をかけられました。でも自分も走っているのですから、責任は自分にもあります。これまで三浦さんなど4年生がチームを引っ張ってきてくれました。その先輩たちが笑って卒業できるように、自分も箱根ではチームを引っ張り上げる走りをして、なんとしても目標の5位に貢献したいです」

今回は主力選手としての自覚を持って挑む。その覚悟を走りで表現するつもりだ。

先輩や後輩からの刺激を受け「4年生が笑って卒業できるように」覚悟の走りを見せる(写真/阿部卓功)
先輩や後輩からの刺激を受け「4年生が笑って卒業できるように」覚悟の走りを見せる(写真/阿部卓功)

 PROFILE
むらお・ゆうき◎2003年4月20日、京都府生まれ。桂中(京都)→佐久長聖高(長野)。昨年度箱根駅伝で三大駅伝デビュー(6区17位)。今季は、トラックの3000mSCで日本インカレ優勝、学生個人選手権2位、関東インカレ3位、日本選手権10位。駅伝では、出雲2区7位、全日本4区11位。自己ベストは5000m13分58秒04(高3)、10000m28分52秒66(大2)。

文/加藤康博 写真/中野英聡、阿部卓功

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