close

2023-12-19

【箱根駅伝の一番星】帝京大の気遣いの人、山中博生は箱根で全日本序盤の勢いの再現を狙う

前回の箱根8区、今季の全日本2区はいずれも区間6位と駅伝に強い山中博生(写真/中野英聡)

陸マガの箱根駅伝2024カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」では、出場23校の注目選手を紹介。帝京大の山中博生(3年)は前回の箱根駅伝で8区区間6位と好走し、今大会ではエースの期待がかかる。チーム思いでチームのために走る喜びを胸に、往路で全日本大学駅伝の再現を狙う。

ピンチになればなるほど行ける

3年生以下が7名出場した前回の箱根駅伝。8区を走り、下級生のなかで唯一の区間一ケタ順位となる区間6位だったのが山中博生(3年)だ。

「1年目は4年生が強かったので箱根は遠かったです。2年目も力的に足りないので走れるとは思っていなかったのですが、最後の調整でしっかりアピールできました」

それまでは箱根を走るのが目標だったが、いざ走るとなったら結果も残したいと思うようになった。シード圏内より遅れて15位でタスキを受けると、8区でチーム順位を一つ上げ、帝京大は最終的に総合13位まで浮上した。

「前を追うしかない状況だったし、自分がどう走るかでシード権を取れるかどうかの境目だと思ったので、前半から突っ込んで行きました。ピンチになればなるほど行けるのかもしれませんね」

勝ち切れた自信

3年目の今季は、チームを引っ張る立場になったことで、怖さも出てきたという。箱根予選会では本来なら同学年の福田翔と前で勝負する予定だったが、チームにコロナ明けの選手が多くいたことが気にかかり、少し抑えた走りになってしまった。1時間03分02秒の自己新ながら、福田には36秒遅れ、チーム順位は3番目だった。

「練習でも離れそうになった人がいれば見捨てずに声をかけるという癖もあったりするので、そういう性格もあると思います。中学時代、女子は全国に出場して男子はギリギリ出られないという状況だったので、チームでつくっていこうという意識が強かったです。高校は強くない学校で個人の結果に集中しましたが、帝京に入ってからはチームでやれるのが楽しくて、『個人だけじゃなくチームのために』という気持ちがまた出てきました」

仲間思いで主将向きの性格ともいえる山中。入学したときは学年5番目のタイムで、小林大晟や福島渉太、福田に追いつこうと練習を積み、今年に入ってからは同学年をライバルと考える気持ちは強くなった。自身は箱根で結果を残すことができた一方、箱根を走れなかった福田が2月の丸亀ハーフで帝京大タイ記録の1時間02分03秒をマークした。

「去年は(福田に)レースで勝てたことがなく、箱根で結果が出せてやっと競ることができるなと感じ始めた矢先にあの記録を出されたのは悔しかったです。3月の日本学生ハーフでも疲労のある福田に37秒負けたので、『これはちょっとやばいな』と思いました」

今季の全日本大学駅伝では福田が1区、山中が2区とつなぎ、シード圏内で走った。山中は中大の中野翔太(4年)ら他大のエース格と10km付近まで競り合い「自分も戦っていけると自信がついたし、チームとしても今の練習をしっかりやれば結果に結びつくというところも示せた」と手応えを得た。11月19日の学連10000m記録会の9組では、1学年下で前回箱根4区を走った柴戸遼太や福田と前に出てレースをつくり、自己新の28分35秒65を出して総合1位になった。

「大学に来て一度も勝ちレースをしたことがなかったので、そこを克服できたのはよかった。まだ行ける感覚はあったし、留学生もいるレベルの高いなかで揉まれながらレースをしてみるのが楽しみになった」

箱根本戦に向けては気遣いの人らしく、「どの区間でも走れるように準備します」。1区・福田、2区・山中、3区・柴戸の流れで5位に浮上した全日本を再現したいという思いもあるという。自身2度目の箱根は、往路を走るイメージが明確になってきた。


箱根ではどの区間でも走るという山中。エースとして往路でチームに勢いをつけるか

PROFILE
やまなか・ひろき◎2002年4月5日、滋賀県生まれ。水口中(滋賀)→草津東高(滋賀)。水口中3年時に都道府県対抗男子駅伝に出走(6区区間6位)。帝京大2年時の出雲駅伝で三大駅伝デビューし、5区区間11位。箱根駅伝では8区区間6位。今季は全日本大学駅伝に出走し、2区区間6位。11月の10000m記録挑戦会で28分35秒65の自己新をマークし、総合1位となった。自己ベストは、5000m14分25秒26(大2)、ハーフ1時間03分02秒(大3)。

文/折山淑美 写真/中野英聡、椛本結城

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事