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2023-12-21

【箱根駅伝の一番星】10年ぶりに箱根復帰の東京農大、原田洋輔の台頭で3本柱から4本柱へ

全日本の4区まで総合5位とシード圏内を走った東京農大。原田も3区で区間10位と好走した(写真/中野英聡)

陸マガの箱根駅伝2024カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」では、出場23校の注目選手を紹介。10年ぶり70回目の箱根出場となる東京農大は3本柱がチームを支えるが、全日本大学駅伝で第4の男が台頭。原田洋輔(2年)を加えた4本柱で往路8位以内、さらにシード権獲得を目指す。

全日本で強豪校のエースと競り合う

10年ぶりに箱根駅伝の出場権をつかんだ東京農大は、強力な3本柱がチームを引っ張る。主将の高槻芳照と並木寧音の4年生コンビは関東学連チームで箱根の出走経験があり、10000mで28分台10秒台のタイムを持っている。

そして、大学長距離界に衝撃を与えているスーパールーキーの前田和摩である。箱根駅伝予選会で日本人トップに立ち、全日本大学駅伝の2区では区間新(区間3位)の快走を見せた。

目標のシード権獲得には3人の爆発は欠かせないが、プラスアルファも必要となる。往路を8位以内で終えるプランを立てており、カギを握るのは「第4の男」。伊勢路で手応えを得た小指徹監督は「4本柱になったかな」と顔をほころばせていた。

新たに柱に加わったのは2年生の原田洋輔(大正中→鎌倉学園高)だ。生活面からストイックで、指揮官が前田と寮の同部屋にするほど信頼を置く一人である。伊勢路の3区でその前田からタスキを受けると、予想以上の走りを見せた。前回の箱根で2区区間賞を獲得した吉居大和(中大4年)と並走しながらスタートし、最初の1kmは2分39秒で突っ込む。5km通過は14分15秒。10km地点では28分47秒。いずれも自己ベストを上回るタイムだった。誰よりも驚いていたのは、“スピード超過”で走っていた本人である。

「気持ちが高ぶっていたのでしょうね。アドレナリンが出ていたんだと思います。本来、ポジティブラップは苦手だったのですが、あそこで対応できたことで自信になりました」

2年目でつかんだチャンス

全日本で手応えを得た原田は、自身初の箱根駅伝に向けて胸を弾ませている。神奈川県横浜市の戸塚区で生まれ育ち、幼少期から沿道で声援を送ってきた憧れの舞台。戸塚中継所からスタートする3区には特別な思い入れがある。3kmまでに通っていた中学校の校舎が見え、5km付近まで行くと、一緒に遊んだ友人の家が目に入るという。国道1号線を走る自分の姿を想像すると、自然と笑みがこぼれる。

「僕にとっては、ヒーローが走る場所でした。幼い頃、僕が箱根ランナーを見たように、今の子どもたちが僕を見てくれると思います。世代を越えて、夢をつなぎたいです」

ふと1年前の記憶がよみがえってくる。黄色のジャンバーを着て小田原中継所で補助員を務めていたとき、悔しさが込み上げてきたことを。

「箱根路を駆け抜けるランナーたちを見ると、予選会で負けた情景が頭に浮かんできたんです。あのとき、『僕もここを走りたい』と今まで以上に強く思いました」

2年目でようやくつかんだチャンス。力を最大限に出し切ることを誓う。個人目標は区間ひとケタ順位。伊勢路のときのように序盤から突っ込み、積極的に攻めていく。

「出し惜しみをすることなくペースを上げて、後半は粘るしかないです。他大学の選手よりもタイムでは劣っているかもしれませんが、3区であれば地元の利を生かしたいです」

1月2日だけは、慣れ親しんだ国道1号線を“速度超過”で走り抜けるつもりだ。


左から並木、原田、前田。合宿地の富士山をバックに。3人は寮の同部屋に住んでいるという

文/杉園昌之 写真/藤田真郷、中野英聡

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