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2024-01-21

【相撲編集部が選ぶ初場所8日目の一番】霧島、綱取りへ痛い2敗目。朝乃山に土がつき、V争いはまた混戦に

霧島は翔猿に押し出されて2敗目。動きのある相手になかなか思いどおりの相撲がとれないあたりに、苦しさがうかがえる

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翔猿(押し出し)霧島

「こわごわ取りすぎている。怖がりすぎ」

審判部副部長の藤島親方(元大関武双山)のこのコメントが、この日の霧島の相撲をすべて言い表していた。
 
霧島が、綱取りへ向けて痛い2敗目を喫した。4日目に翠富士に喫した1敗からの悪い流れはすでに断ち切ったかに見えていたが、そんなことはなかったようだ。

この日は動きの速い翔猿との対戦。「よく見ていこう」という作戦になるのは当然で、霧島もモロ手突きから相手の腕を下からあてがうという形で取ったが、見ていこうという気持ちが強すぎたのか、腰が引けてしまい、まったく相手に圧力が伝わらず。少し左がのぞいたところで、右手で相手の首を抑えるように引いたが、相手が前傾姿勢とも言えないところでのこの引きはいかにも強引すぎた。「(引くところを)狙ってはいないけど、どんどん前に出る意識だった」という翔猿についてこられて、あっさりと押し出されてしまった。この引きに表れている、霧島らしからぬ勝負勘の狂いは、やはり焦りの表れといえるのか……。
 
これで2敗目。綱取りへ向けて痛い黒星となった。ただ、霧島にとって不幸中の幸いだったのは、この日は全勝だった朝乃山に土がつき、優勝争いのトップとの1差は変わらなかったことだ。横綱昇進への内規は「大関で2場所連続優勝か、それに準ずる成績」なので、多少星が崩れても、優勝さえ手にできれば、昇進の可能性はそれなりにある。1差はまだ自力優勝圏内なので、目の前の一番に集中して星を重ねていけば、可能性を回復できるチャンスはあるわけだ。「きょうは力負けしたわけじゃないから、切り替えたらいい」とは、前出の藤島親方。そのとおりだろう。
 
今場所の霧島の相撲を振り返ると、自分からしっかり当たって出ているときの内容は悪くはないだけに、思い切って当たれる後半の対上位戦のほうが本来の相撲を取れる可能性は高いかもしれず、苦しくはなったが、まだ期待を捨ててしまうところではないだろう。捕まえて料理したいタイプとしては、まだ宇良戦が残っているので、ここを腰を引かずにしっかり攻めていけるかに注目したい。
 
さてこの日は、先述のとおり、全勝だった朝乃山が玉鷲の掬い投げに敗れて土がついた。1敗したことより、取組中、右足をうまく送れずにひねってしまう場面があり、本人は「大丈夫」とは言っていたが、後半戦への影響がちょっと心配だ。
 
琴ノ若は髙安の再休場による不戦勝で1敗をキープ、阿武咲と大の里も勝ち、朝乃山を含め、1敗に4人が並ぶことになった。きのうの時点で「全勝と1敗の力士の中から優勝者が出る可能性が高い」と書いたが、本命の霧島が一歩後退したことで、そうとも言い切れなくなってきた。2敗は5人。この中には、この日は竜電に食い下がられながらなんとかしのいで星を重ねた照ノ富士をはじめ、豊昇龍、大栄翔もおり、今後の琴ノ若の出来次第では、大混戦になっていくこともあり得る。
 
あす9日目は朝乃山と阿武咲が1敗同士で直接対決、そして琴ノ若は大栄翔戦が組まれた。さあ後半戦、優勝をかけたサバイバル戦の始まりだ。

文=藤本泰祐

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