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2024-01-18

【相撲編集部が選ぶ初場所5日目の一番】豪ノ山の出足をさばけず、豊昇龍に土。全勝は琴ノ若と朝乃山の2人に

豊昇龍は豪ノ山の出足をかわせず、ついに1敗。優勝争いは、琴ノ若と朝乃山が一歩前に出る形となった

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豪ノ山(寄り切り)豊昇龍

押し相撲の豪ノ山に対して、廻しに手を掛けながら何もできなかった。きのうまで白星街道を走っていた大関豊昇龍に土がついた。

“つかまえれば大丈夫”。おそらくはそういう計算があったのだろう。この日の豊昇龍の立ち合いは右差し左上手狙い。踏み込みは悪いようには見えなかったが、少し上体が立ち、胸を出すような形になってしまった。
 
そこに「とにかく前に出ようという意識でした」という豪ノ山の出足が合致した。立ち合いの勢いのまま、豪ノ山に体を浴びせられ、豊昇龍はかわす暇もなく電車道で黒房下に寄り切られた。
 
この黒星は、不安的中の1敗ともいえた。4日目まできれいに白星を重ねていた豊昇龍だが、細かく内容を見ると、立ち合いから前に出て攻め切った相撲は一番もなかったからだ。初日の熱海富士戦は先に攻めて、逆襲にきたところを投げで体を入れ替えての寄り切りなのでまずまずよかったが、2日目から4日目は、まず相手に先手を許しての逆転という内容が続いていた。もちろん逆転で勝てるのも強さの一つではあるのだが、しのいで勝つ相撲には、やはり危うさがつきまとう。
 
場所前に右ヒザを痛めていた豊昇龍。本人は「大丈夫」と言っているので、実際どの程度影響があるのかは分からないが、少なくとも今場所は、今まで時折見せていた、頭から突き刺さるような立ち合いは一番も見せていない。一歩目の踏み込み自体は悪い感じはしないが、この日もそうだったように、いつもより上体が立っている感じはあり、そこを突かれる不安はあった。
 
またこの顔合わせは、先場所、立ち合いで豊昇龍が長時間手をつかず、物議をかもした因縁のカードでもあった。今場所は呼吸を合わせてきれいに立たなければかっこうがつかない。この日はノーコメントだったため、そのことがどの程度、豊昇龍の立ち合いに影響したかは分からないが、豪ノ山からすれば(「特に意識はしていませんでした」とコメントしてはいるが……)、“今場所は駆け引きなしに合わせてくるはず”という、自分の呼吸でぶつかりやすい状況があったことは想像に難くない。これも一つの伏線になった可能性はある。
 
かくして大関以上には全勝はいなくなり、関脇琴ノ若と、平幕の元大関朝乃山の2人が5連勝、1敗で8人が追う形となった。
 
1敗の中には、横綱照ノ富士、V候補本命の大関霧島、この日土がついた大関豊昇龍、関脇大栄翔、新入幕の大器・大の里が含まれており、「一周回って再スタート」みたいな形になったようにも見えるが、この時点で琴ノ若が星1つのリードを奪っているのが今後にどう影響してくるか。相撲内容ではここまでは最も安定しているといえるだけに、初V、そして大関へと期待は膨らむ。朝乃山も、ここまでは平幕相手なら地力は一枚上、という印象の圧勝を見せており、無傷のまま上位と当たる形に持ち込めれば面白い。
 
1敗組では、やはり力のある照ノ富士と霧島がどう立て直してくるかだろう。照ノ富士は上体のパワーでしのぐという相撲が続いており、内容的にはどうにか踏ん張っている感じだが、白星を重ねて星勘定に余裕が出てくれば、変わってくる可能性もある。霧島はこの日も阿炎の踏み出しに救われる危ない相撲で、やはりきのうの1敗の影響はなくはないようにも見受けられたが、綱取りがかかっている今場所は、余裕のある星勘定という状況はほぼ存在しないので、そのギリギリの中で気持ちをどうコントロールできるかがすべて。持てる力は十分だけに、その一点にかかっているといっていいだろう。
 
そして大の里。実力者の阿武咲には黒星を喫したが、番付の近い平幕10枚目以下が相手なら、今後もある程度高い勝率で星を残していきそうな感じは強い。ぜひ早めに勝ち越しを決めて、後半は上位戦が組まれるところまで暴れてほしいものだ。

文=藤本泰祐

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