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2024-01-20

【相撲編集部が選ぶ初場所7日目の一番】大の里が若手対決を圧勝し、朝乃山を1差追走。照ノ富士は2敗に後退

大の里は王鵬との若手ホープ対決に圧勝して1敗をキープ。後半戦がますます楽しみになってきた

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大の里(寄り切り)王鵬

1敗同士の期待の若手対決は、予想以上にあっけなく終わってしまった。
 
大の里が、王鵬を一気に寄り切って圧勝した。きのうまでは5勝1敗の好調同士、学年では早生まれの王鵬が1つ上だが、ともに23歳で、将来の角界を背負うホープだ。大の里は鳴り物入りで入門し、その期待にたがわず幕下10枚目格付け出しから所要4場所で今場所新入幕。192センチ、176キロの体で前に出る相撲で、ここまでは阿武咲に1敗を喫したのみで、幕内下位の力士を圧倒してきた。王鵬は、祖父があの大横綱大鵬、父が元関脇貴闘力というDNAを持つ。令和4年の11月場所に優勝争いを演じてブレーク、その後は5年5月場所の11勝以外は、幕内下位で負け越すなど、やや停滞も、このところ積極的に前に出る相撲が出始めており、停滞を破ろうとしている感もあった。191センチ、174キロの体は大の里とほぼ同サイズで、簡単には押し負けないかと思われたが……。
 
立ち合い。右差し狙いの大の里に対して、王鵬はこの日は突き放しではなく、左から押っつけにいく作戦を取った。もしかしたらこのあたりは、3日目に大の里に土をつけた阿武咲の相撲を参考に、そのイメージで下から押し上げていこう、ということだったのかもしれない。
 
ただ、大の里もさるもの。「立ち合いは前に出ることだけを考えていきました。左の押っつけが強い相手なので、安易に右を差しにいかないようにした」と、ある程度それを読んでいたようだ。この日は右差しにはいったが、深く差すというより、差し手は浅くてもいいのでしっかり返していく、ということを優先していたような形に。これで王鵬の押っつけの威力を減じながら、立ち合いの勢いのまま前へ。押された王鵬が右から叩きを見せるのについていき、そのまま右の差し手を返して突きつけるようにして寄り切った。
 
ここまではほぼ、右差しを狙って胸から立ち、その勢いを生かして押っつけながら前に出るという相撲だけで勝ち込んできた印象のある大の里だが、このあたり、相手によって立ち合いも細かく調整し始めていることがうかがえる。夜には連日、同部屋の白熊や嘉陽と「作戦会議」をしているのだというが、6日目には四つ身の強い宝富士に対してモロ手突きで立つなど、どんどん工夫が加わってきており、進化を続けているように見える。
 
もともとある恵まれた素質に、この研究心があれば鬼に金棒。もはや幕内下位ではそれほど負けないのでは、という感じもするが、このまま「上位陣と顔を合わせなければ」と審判部に思わせるところまで勝ち込んでいくことができるか。「これから強い相手とやることになると思いますので、最終的な目標はケガなく勝ち越すことですが、立ち合いの一歩を集中してやれるように頑張ります」と大の里。その後半戦の戦いには楽しみしかない。故郷の石川の方々に元気をもたらす使命も帯びており、今後も奮闘が期待される。
 
この日は、朝乃山は全勝をキープ、1敗はきのうの7人から4人となった。1敗勢の中では、横綱照ノ富士が正代にモロ差し速攻を許して敗れ、2敗に後退。平幕の朝乃山はひとまず別として上位の優勝候補の霧島、琴ノ若とはまだ1差なので、自力で追いつく可能性は残されているが、今場所の相撲内容で上回る2人を追う形になったことで、優勝争いではかなり苦しくなったと考えていい。
 
今場所の優勝者は、現状全勝と1敗の5人の中から出る確率がかなり高くなった。霧島あるいは琴ノ若は、上の地位への昇進のプレッシャーにも打ち勝って栄冠を手にできるか。そして朝乃山や大の里ら平幕勢の奮闘はどこまで続くか。あすで場所も折り返し。後半戦も見どころは満載だ。

文=藤本泰祐

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