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2019-09-03

【柔道】世界柔道選手権大会最終日 山下会長/井上&増地 両監督コメント

9月1日、男女混合団体戦で日本が3連覇を果たし、華々しく幕を閉じた世界柔道選手権東京大会。同大会の締めくくりとして、全日本柔道連盟・山下泰裕会長と、男子・井上康生監督、女子・増地克之監督のコメントを紹介する。

※写真上=男女混合団体戦の表彰式の主役となった日本チーム。2位のフランス、3位のロシア、ブラジルと共に、晴れやかな笑顔で大会を終えた
写真◎近代柔道

山下泰裕 会長

金メダルを獲った4人は
常に向かっていき、自分の
柔道に自信を持っていました

個人戦は金メダル4個、銀メダル6個、銅メダル5個、合計15個のメダルを獲ったのはすごいことだと思います。ただ、昨年(金7個、銀5個、銅4個)、一昨年(金7個、銀4個、銅1個)と比べると、なかなか組ませてもらえない。自分の柔道を出しきった選手もいますけれど、全体的な印象としてはよく研究されていて、少し苦戦している、日本選手に柔道をさせてくれない……そんな印象を持ちました。あと、勝っている試合でもかなり競っている試合もあって、気の抜けない戦いだったと見ています。

金を獲った4人の試合は、常に向かっていっていましたね。勝負にいっていました。前に出ていました。やるべきことをやってきた、そして自分自身と自分の柔道に自信を持っていた。もう一つ言うと、たとえ持たせてくれなくても、それに対応できる。いくつか引き出しを持っていたと思います。でも、今回と同じ柔道をやったら同じ結果になるのは極めて難しいということはわかっていると思います。目標に届かなかった選手たちも、この4人の戦い方をぜひ参考にして、学ぶべきところは学んでほしいと思います。

世界のレベルは、常に高いと思っています。ただ、ルールが変わってきた中でこれまでは外国の選手も組まざるをえない、そして組みにきて日本選手の餌食になる。組めば日本選手は技を持っていますから。そこのところが、どうやって日本人選手に柔道をさせないで戦いを続けていくかと、かなり研究をしています。去年までの戦いとはちょっと違った展開になっている気がしました。

JOCの会長としても、全日本柔道連盟の会長としても選手たちに望むことは、今回の結果を冷静に受け止めて、一つひとつの戦い、たとえ優勝した選手もその中で厳しい、紙一重の部分があったと思います。現状を認識して世界で活躍して、代表になれるから、まずは代表権を獲得することに全力を尽くしてほしい。その後はしっかりした準備をしてほしい。

そしてもう一つ、オリンピックに出られるということはすごいことですから、果敢に自分の夢に思いっきりチャレンジして、それができればおのずと結果がついてくると私は思います。結果を求めるというよりも、最高の準備をして、プレッシャーがかかるかもしれませんが一生に一度のチャンスにチャレンジしてほしいなと思います。

世界から集ったアスリートが、できるだけいいコンディションで存分に力を発揮する、これもホスト国の大事な役割です。大会運営に関していろいろな方に聞きましたが、大変よく運営されていると、来年のオリンピックに関しても全く心配していないということでした。

井上康生 男子監督

日本が世界一になるためにチームに
貢献するように、そして五輪に向けて
強烈にアピールするように…と伝えました

今日の団体戦優勝は、選手が一丸となって勝ち取った結果だったと思います。90kg超級については原沢久喜のコンディション面を考慮して影浦心を全試合で起用し、90kg級については向翔一郎が足の爪を痛めたということで、村尾三四郎がやはり全試合出場ということになりました。他にも出場しなかった選手、決勝に出場しなかった選手もおりましたが、自分を押し殺してチームのために尽くしていました。その姿を見たときは、今日の優勝は彼らがいたからこそだったんではないかなと思いました。

73kg級の橋本壮市も非常にいいコンディショニングでしたが、総合的に判断して決勝では大野将平を起用しました。控えに回った橋本は心から悔しかったんじゃないかと思いますが、声をかけたり、チームのために行動していました。

決勝で村尾には勝ちきってほしかったですが、伸びしろのある選手ですので、この経験が彼をより成長させてくれると期待しています。相手の寝技がかかっていた場面では、公平な目でみると、正直いってあそこで待てをかけることも、かける場所でもなかったのではないかと思いますし、あそこだけ見たら「まいった」と見られても仕方ないと思います。ただ、試合には流れがありますので、どのような状況だったのか、しっかりと検証しなければいけないと思っています。

朝、団体メンバーに伝えたことは、日本が世界一になるためにチームに貢献することと、五輪出場に向け、オレはここにいるんだということを強烈にアピールしてほしいということでした。また、来年の東京五輪を見すえたときに、五輪では個人戦のメンバーだけで団体戦を戦わなければなりませんから、個人戦からの肉体的なリカバリーだけでなく心のリカバリーも相当重要になるということです。強靱な精神力を持っていなければ、団体戦を戦うのは相当きついと思いますので、今日一日は来年を想定し、そのことを十分に頭に入れた上で過ごしなさいと伝えました。

66、81,100kg級の選手たちもエントリーできますので、今日出場しなかった選手たちにも、来年は起用するつもりでいることを伝えました。73、90、100kg超級の選手のケガなどのアクシデントを抜きにしても出場はある、だから、そのつもりで一日過ごしなさいと。こうしたことも含めて今日は、ウォーミングアップにしても休憩時間にしても、チームがひとつにまとまり、皆が助け合ったうえでの勝利だったと思います。

増地克之 女子監督

濵田には今朝、出場を話したのですが、
即答で「出ます!」と。特に準決勝、
決勝と、素晴らしい戦いぶりでした

朝からアクシデントがありまして、朝比奈沙羅と素根輝がコンディション不良で出られず、急遽、濵田に出番が回ってきたのですが、特に準優勝は大きなアルテマン、決勝では個人戦決勝で負けたマロンガに対して見事な戦いを見せてくれました。今朝、出場を話したのですが、即答で「出ます」と。大きな相手と戦うわけですから、ケガのリスクもあるのですが、素晴らしい内容の戦いぶりでした。

彼女は、どの大会でも同じ精神状態で試合に臨める。それは、顔の表情を見てもわかる通り、変わりませんよね。精神的な強さが見て取れると思います。

新井千鶴は個人戦の負けを払しょくできる戦いを見せてくれた。そのために出場させましたが、期待に応えてくれました。オリンピックでは個人戦の後に団体戦がありますので、そのことも想定させてやらせました。

※写真上=優勝を決めた濵田尚里を出迎える日本チーム
写真◎近代柔道

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