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2024-05-02

東京女子5・6後楽園で渡辺未詩の持つプリプリ王座に挑む中島翔子にあったポジティブな変化【週刊プロレス】

 東京女子として2度目の開催となった3・31両国国技館大会を経て、団体の風景は一変した。最高峰王座のプリンセス・オブ・プリンセスは渡辺未詩が獲得、本人は否定しているものの新時代の風が吹いていることは明らかだ。

 ただ、そこで黙っていなかったのが団体の“初期メン”である中島翔子。両国後、フィラデルフィア大会を挟んで日本で一発目の試合となった4・13北沢で未詩から直接勝利をあげるとすぐに挑戦表明。5・6後楽園での挑戦が決まった。なお中島は'19年5月、'22年3月と同王座は二度戴冠している。そんな“1.47メートルの大怪獣”に今回の挑戦に向けた思いを聞いた。


――プリプリのベルトに絡むのは(王座陥落時の'22年10月以来)1年半ぶりくらいになります。

中島 団体に人が増えてきてからはそんなんばっかりだった気がします。だからそんなに自分の中で期間が空いたなとは思ってないんですよね。シングルもタッグもトーナメントは勝ち進めなかったんですけど、優勝者が挑戦って意味ではタイトル挑戦の延長線上ではあるので。なので個人的には空いた感覚はないんですけど、ファンの方は「やっと…」って言い方をされますよね。

――ファン目線からしたら「中島翔子がやっと動き出してくれた」と。2年前のご自身とまったく同じシチュエーション(会場、相手、懸かっているタイトル、挑戦者という立場)でしたが、両国での山下vs未詩はどう見ていましたか?

中島 やっぱり山下実優の芯のブレなさにすごみを感じましたし。未詩もさすがに緊張するかなって思ったんですけど、部屋(控室)を出ていく時はそこまで不安そうな顔をしていなかったというか。それまでの過ごし方もあまり変わらず、とにかくやれることをやるっていう過ごし方を道場でずっとしてたし。私は(2年前)死ぬほど緊張したから…未詩も本心はド緊張してたかもしれないですけど、傍から見てる分には両国を踏めるくらいの経験値はあるんだなと。そこに物怖じしないメンタルがある状態でベルトに臨んだんだなと思いましたね。

――あの試合前(2年前)、そこまでド緊張されていたんですね。

中島 とにかくカタかったと思います。それは私が背負いすぎてる部分が大きくて…いま思えばもっと自分のファイトでよかったんじゃないかなって部分はあって。やっぱり東京女子プロレスの初めての両国国技館、祈願じゃないですか。ずーっとそれが夢だった一発目で、2回目もあるかどうかも分からないし、ひょっとしたら最初で最後かもしれない。そのなかで、両国国技館のメインイベントでタイトルマッチをするプロレスラーが世の中に少ないのもそうじゃないですか。自分よりキャリアが上の先輩でもそのシチュエーションを踏まずに引退された方もいるし、すっごい尊敬しているレスラーの方でも経験してない人は山ほどいる。いっぱいいるんです。でも自分はキャリア9年で両国国技館でメインをやる、ベルトに挑戦するってところが私の中で大きく感じてしまって。だから、いまの自分でぶつかればいいやとは思わなくて、もっとすごくならなきゃって。タイトルマッチが決まったのが1月なんですけど、両国国技館に向けていまより成長しなきゃダメだって自分のこと鼓舞して、肉体改造もして、体重5キロくらい落としちゃったり…(苦笑)。あとは邪魔だから髪切ったりとか…だけじゃないんですよ。信じられないくらい道場もジムも行ったし。そんなかんじで気負ってたんです。結果的に勝つことができたんですけど、心の余裕はなかった記憶が強いですよね。

――現在、東京女子で両国国技館のメインに立っている選手は3人しかいないのですからそれも仕方ないかなと。今回はそこまでのド緊張はないですか?

中島 ですね(笑)。そのスタンスではないんですけど、前哨戦とかやってて思うのが…タイトルマッチは緊張するもんなんだなって、どこであろうが。両国だろうが後楽園だろうが大阪だろうが、タイトルマッチは緊張するものっていうのをこないだの北沢の前哨戦であらためて思い知らされたというか。やっぱり変な力の入り方するし。トーナメントで勝ち上がるって、私はそこまで気負ってないんですよ。まぁ気負うんですけど、何かが懸かってると懸かってないでは違うんです。だから、何年経ってもベルトっていうのは怖いものだと私は思ってますよ。

――会見でも言っていたように未詩選手とは普段から頻繁に道場で一緒に練習しているようですが、だからこそのやりやすさ、もしくはやりにくさはありますか?

中島 どうなんですかねぇ…。一緒に練習してると色んな面が見えるじゃないですか。けっこう(未詩は)完璧主義なところとかあって、できない自分が許せないみたいな。そういうところがあるから、ひとつの動作にしてもとにかく自分が一番うまくならなきゃ、みたいな。そういうこだわり、突き詰めていく部分があって。要はものすごく実直だし頑固者。不器用なところもあるんですけど、基本的には身体能力も高いし、そういうのを見てるからまっすぐ同じことするとどうだろうね…とは思います。やりやすくはないだろうから、得意なとことできないとこの間を突かないとやりやすくはないよね、とは思います。

――そんなに未詩選手は完璧主義者だったのですね。

中島 ですよ。想像の5倍くらい(笑)。体にしても突き詰めた結果だと思うし。たぶん未詩はいま自分が一番パワーがあるっていう自負があると思うんですよ。なので跳んだりとかするのはまだ私の方が上かもしれないけど、力比べとかになってくると大変ですよ(苦笑)。

――後楽園ではそのあたりの勝負は仕掛けないと。

中島 どうでしょうね? まぁ私はパワーあんまりないタイプなので…ただ自分のスタイルはどっちもできるところだと思ってて。ストレートでぶつかることもできるし、小細工をすることも戦略のひとつだと思ってるから。未詩はまっすぐタイプなので、そこにシンプルにぶつかりたいって気持ちもありますけど…やっぱり試合で一番大事なのは勝つことだから。自分は手を変え品を変え、ができるように10年過ごしてきたから。そこが一番の強みだと思って、カメレオンのように挑みたいなと。

――いまの東京女子には「新時代」というワードもありますが、そのあたりはいかがですか?

中島 あんまり新とか旧とかがしっくりきてないんですよ。でもどうしてもそういう言われ方をしちゃうから、それはウゼェよってまわりには言いたいから、「新時代クソくらえ」って言うんです。それは未詩とかに思ってるというよりかは、それを言ってるまわりに対してで。私はアジャコングになりたいと思ってるんですけど、そんなの100万年早いよって言われるじゃないですか。そう考えたらまだまだ若手なんです、私だって(笑)。発展途上だから、過ぎ去りし者みたいな言われ方をされたくないから、そこは意識したくないですね。

――今回も世代間のタイトルマッチというわけではなく、個人と個人でのシンプルな闘いだと。

中島 ですね。でもそれはホントにずっと前からそうなんですよ。それこそ2年前、トーナメントで闘った時が最後のシングルなんですけど、別にその時から私はこの子とは世代差をあんまり感じてないというか。だっていっつも一緒にいるし。

――では逆に他の選手とは世代差を感じるのですか?

中島 さすがに(昨年デビューの)HIMAWARIとか(上原)わかなとかには感じますけど、それは世代差というよりは後輩ってかんじで。未詩も後輩ではあるけど…例えばですけど、ふとした時にタメ口が飛んできても全然気にならないし。それくらいの関係性ではあるので。

――両国を終えてすぐフィラデルフィア大会、日本に帰ってきて未詩選手から直接勝利など直近で色々ありましたけども、今現在ご自身のコンディションはいかがですか?

中島 調子は上がってると思うんです。でも私って根が真面目で考えこんじゃうと楽しくないから考えこみたくないなって思ってるんですよ。で、最近はアメリカの2試合とか岡山いったりとか『HYPE!』(ハイパーミサヲプロデュース興行)があったりして、けっこう自分の中でシチュエーション全部がイレギュラーだったんですよ。それで言うと両国国技館もある意味イレギュラーで、対アジャコング&マックス・ジ・インペイラー組っていうのは。でもイレギュラーって積み上げてきた定石通りの試合が通用しないなって思ってて。アジャさん&マックスの試合とか、特にvsGCWの時とがそうなんですけど、むこうの選手がオープンマインドすぎて悩んでることがバカバカしくなったんですよ。私、技を失敗した時とかすごく落ち込むんですけど、そんなのどうでもいいなって。こんなに痛くて、こんなに狂ったことしてて、こんなに頭やばい人たちがいて。その中でムキになってソフビで殴り合いする自分がいて、試合は負けたけどちょー楽しかったなって。何をいままで技を失敗したくらいで悩んでたんだって。って思ったら、そっちの感情で試合したいなっていうのが強くなって。

――大きな変化のある期間だったのですね。

中島 ですね。『HYPE!』はけっこう大変だったんですけど、その前には岡山(がいせん桜プロレス)もあって。岡山もアジャさんとの試合だったんですけど、やっぱりすごいんですよ。地方行った時のお客さんの反応が「知ってる人が来た!」みたいなどよめきで。これが長くプロレスラーでいる方のすごみだと思ったし、桜が咲いてる中で散々やられたけど終わってみたらちょー楽しくて。

――ゆえに今回は割とリラックスした気分で臨める試合だと。

中島 はい。結果、その方が自分によかったんです。すべてノリでいけるんですよ。1回息を整えなくても、自分の本能のまま動く方が結果的によかったんです。だから、その感情は忘れずにいきたいから。むしろそれを味わったからこそ、いまはすごく調子がいいみたいな。

――いままでのタイトルマッチにそういった感情で臨んだことは?

中島 ないと思いますよ、やっぱり気負うから。未詩も言ってましたけど、2019年に山下に挑戦するときに私が謎のコメント(努力では天才に敵わない)を出しているんですよね。あの時は自分に足りないものが多すぎて坂口道場行ったりとか、別のアクロバット教室行ったりとか…やってること散らかってるじゃないですか。自分にどのスタイルが合ってるか分からなさすぎて、色々やりすぎて「ダメだ…」ってなってたから。そこからベルト取って結果出して、ちゃんと自分に合ってるスタイルがこれだっていうのを証明したかったのもあって、あんなにネガティブなコメントを言って。そんなかんじです。タイトルマッチはいつも気負っちゃう。ただ、いまはそれとも感情は違ってるから。

――あらためて聞くと、だいぶネガティブな発言でしたね。

中島 いまも根底ではそう思ってるけど…そこから数年コツコツとやってきて、割と「こんなの無理だろ」って思ってた動きはできるようになるんです。そこの変化はあるから、いまは努力に意味はないとはそこまで思ってないかな。自分で結果が出せるから。

――それで言うと今回の一戦は努力vs努力です。

中島 そうなんですけど、ただ未詩は元々ポテンシャルありましたよ。筋肉つきやすいかんじというか。デビュー当初も人を持ち上げたりするのは安定感あったし。そういう片鱗はあったけど、そこから形にしたのは努力ですね。みなさんがモノにしてると思ってるジャイアントスイングとかもまだ理想を探ってるみたいで。

――そうなんですね。仮に今回戴冠となれば3回目になりますが、王者として何をしていきたいですか?

中島 すごくなりたい! …私はとにかくすごいレスラーになりたいんです(笑)。だからいっぱい防衛するんですよね、きっと。ベルトを海外に持って行って、自分よりデッカイやつと試合して勝って。そのためにはやっぱり、自分のまわりにあることからやらなきゃいけないから変わんないですよね。ちゃんと強くなるために努力すること、頑張ることは変わらず。

――それが「アジャコングになりたい」発言につながってくると。

中島 アジャさんが53歳で、ミスター平成ライダーって言われてる高岩成二さんも53歳なんですよ。この世代の方々の活躍、すごくないですか? 高岩さんはアクション業界ではレジェンドって呼ばれてる方で、ずーっと仮面ライダーの中で仮面ライダーをやってた人です。いまはアクションを教える側だったりするんですけど、とにかく53歳ってすごいんですよ! 53歳のみなさんはすごいんです!

――中島選手も53歳になった時にはきっと…。では最後にあらためて意気込みを。

中島 やっぱり後輩たちの成長具合がすごいのはファンの方も見てて分かることだと思うんですけど、中島翔子も中島翔子で絶対にレベルアップしてるなっていうのは実感してて。だから会見でも言ったんですけど、2年前の自分がチャンピオンになれたんだからいまの自分がチャンピオンになれないわけがないって思ってるんです。だからそこは強く心に持ってタイトルマッチに挑みたいなと思ってます。

――そして織田信長になると。

中島 (笑)。織田信長になれるかは分からないですけど、あの発言は意外でしたね。もうちょっと舐めてると思ってた。そんなに尊敬されてると思ってないので。

――織田信長を尊敬している人って多いんですかね?

中島 ですよね。そこはアホだなーって(笑)。言ってくれるのは嬉しいですけど、いつも同じレベルで練習してるかんじだからそこまで尊敬してくれたんだなと。

――未詩選手が明智光秀になると。

中島 やられちゃうかもしれないですね、後楽園の変で(笑)。

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