女子プロレス団体「アイスリボン」の鈴季すずは昨年大みそかにデビューしたキャリア11カ月の17歳。「プロレスでハッピー!」をキャッチフレーズに掲げるアイス期待の新人レスラーだ。
そんな彼女は11月23日、横浜ラジアントホール大会で団体の最高峰王座ICE×∞に初挑戦する。相手は今年のアイスリボンの顔、雪妃真矢。11・23横浜で5周年を迎えるトップ選手をキャリア11カ月の新人が挑戦するなんて普通ならあり得ない。
しかし、すずはICE×∞王者・雪妃真矢に挑む。それも「すずならジャイアントキリングを起こしてくれるんじゃないか…」という期待とともに。
夏から秋にかけてさまざまなアクシデントが起きたアイスリボン。良くも悪くも何が起きてもおかしくない状況にある。ICE×∞初挑戦を果たす17歳が奇跡の王座戴冠を果たす可能性もゼロじゃない。すず自身、団体を取り巻く現状や、自分に懸けられた期待の大きさをよくわかっている。わかっていて、それでもベルトを取ってアイスに新しい風景を描く、本気でこう思っている。
中学卒業と同時に女子プロレスの世界に足を踏み入れた17歳。昨年夏には自転車事故を起こしてデビュー戦が延期になるなど様々なアクシデントもあったが、それらを乗り越え、愛らしいビジュアルに天性の明るさ、類まれなプロレスセンスを武器にレスラー人生最初の大一番に挑むすずのインタビューをお届けする。
写真◎週刊プロレス
――初めてプロレスに触れたのは?
すず 中学2年生の夏だったと思います。テレビで小橋建太さん(のプロデュース大会)のフォーチュン・ドリームがやってて。そこで初めてプロレスというものを見ました。
――見たのは偶然ですか?
すず 夜中に目が覚めてテレビつけたら、ポッと出てきて。最初は何の興味もなかったんですけど、なんとなく流してたら、あれ?って。なんかすごいデカい人が雄たけびをあげて暴れ回ってる…何これ?と思って。
――それに中2の女子が興味を抱いたと?
すず なんだ、これ? ビビビ?みたいな、フフフ。それでプロレスとはなんぞや?っていうのをインターネットとかで調べるようになって。動画も見ました。それで大日本プロレスさんを見るようになって。そこでデスマッチを知ったんです。
――中2の女子がデスマッチに…?
すず はい(笑)。デスマッチは見るほうも痛いじゃないですか。なんじゃこれ…って。あと、人間の体ってすごい丈夫なんだ、ちょっとやそっとじゃ壊れないんだとか思いました。
――すごい感想ですね(笑)。流血に引いたりしなかったですか?
すず なかったです。キャー、怖い…見れない…みたいな感じではなく、ガンガン見てました、中2の女子が(笑)。ガンガンデスマッチ見て、学校でプロレスのことを語ったり、デスマッチがどうのこうのって話すんですけど、誰も話が通じる子がいない(苦笑)。
――1人もいなかったですか?
すず いなかったですね。友だちをいかにプロレスの渦に引き込んでいくか、魅力を伝えていくかっていう感じで。
――何人かは引き込みました?
すず 引き込めませんでした(笑)。みんな、「あー、はいはい」「また言ってるよ」みたいな感じでしたね。
――ご家族は?
すず 父も母も小さい頃にテレビでやってたのを見たことがあるぐらいで。だから自分がプロレスを見始めたときはお父さんがビックリしちゃって、「ど、どうしたんだ?」って。でも、プロレスとかデスマッチの魅力を説明したら、お父さんもハマッちゃって、一緒に観戦も行きました。宮崎はほとんど来ないんですけど、大日本さんがたまに来て。
――そこで生デスマッチを?
すず はい。面白かったですねぇ。テレビの画面で見るのとは違うじゃないですか、音とか迫力も違うし。リングから降りて、目の前で殴り合ってるし。ヤバッって(笑)。そこからガッツリプロレスにハマりましたね。好きになったらこうなる(のめり込む)タイプなので、プロレスばっかり見てました。
――とはいえ、「プロレス好き」と「プロレスをやりたい」では大きな違いがあると思います。
すず ふふふ、そうですよね。最初は普通にプロレスファンとして見てたんですけど。急にやりたくなったんですよね。
――何かキッカケが?
すず 最初は男子のプロレスしか見てなくて、女子プロレスというものを観たことがなくて。でも、大日本の選手が出てるデスマッチを動画サイトで観たんですけど、相手が世羅さんだったんです。
――アイスリボンの世羅りさ選手。現代のデスマッチ・クイーンですね。
すず はい。初めて女性がデスマッチしてるのをたまたま見つけて。女の人でもデスマッチってできるんだ、かっこいいなぁって思って。そこからですよね、やりたい欲が出てきちゃって。そこから世羅さんについていろいろ調べて、動画も見て…。
――気づいたらやりたくなっていたと?
すず はい。自分の両親は、なんでも挑戦しろっていう教育方針だったので。プロレスもやりたいって言ったら、いいよって。反対はされなかったですね。
――とはいえ、プロレスって始めるハードルが高いじゃないですか?
すず はい。なので、アイスリボンが夏にやってる合宿をやってるっていうのを知って、それに1週間参加して。その後、地元に戻って自主練して、冬にまた合宿に参加してみたいな。
――合宿はしんどくなかったですか?
すず しんどかったです(笑)。超しんどかった。鬼しんどくて。あぁ…ダメだって何回も思いました。筋トレもあんまりやったことなかったし、長距離も苦手なタイプだったので。1週間いたんですけど、4、5人で寝て、起きて、掃除して、筋トレして、走って、練習してみたいな。そんな1週間を過ごしました。でも、(プロレスを)諦めようとは思わなかったです。ここまできてしまったら、やるしかないなって。親にも地元の友だちにも「プロレスラーになるんだ!」って言ってきてしまったので。やっぱり無理でした…なんて言いたくないなって。
――アイスリボン以外の選択肢は考えなかったんですか?
すず ほかの団体も知ってはいましたけど、やっぱり世羅さんのデスマッチを見て女子プロレスにあこがれて、その世羅さんがいる団体はアイスリボンだったから。だから全然迷いはなかったです。
――2018年春に入門。不安はありませんでしたか?
すず 不安は…ありました。いまあんまりいないじゃないですか、昔と違って中卒でプロレスラー目指すって。それに宮崎の畑と道路と田んぼしかないところから出てきたんで、東京は人が多いのにビックリしたし、右も左もわからないから電車の乗り換えとか、もうヤバいと思いました(笑)。
――短期合宿と入門は違いましたか?
すず 全然違いましたね。大変でした。最初の1週間で心が折れて、社長に帰りたいですって泣いたこともありました。合宿の時は〝お客さん〟でしたけど、練習生になったら先輩の指導の厳しさも違うし、練習メニューもプロ用で。筋トレの回数も全然違うし、ついていけなかったら、怒られるとかじゃなくて、もういいよみたいな。
でも、最初は何もできなかったのが毎日道場に行って、毎日練習するので少しずつできるようになってくるんです。マット運動の難しい動きとかロープワークとか。できるようになることがドンドン増えて、それを先輩に「今日はこれができるようになりました」「あれができました!」って言ったら一緒になって喜んでくれて。そういうのが心の支えになってました。まだ頑張れる、もうちょっと頑張れるって。
――入門から約4カ月後の‘18年7・8後楽園でデビューが発表されました。舞台は同年8・26横浜文体。
すず (遠い目をしながら)あの時はうれしかったですねぇ。後楽園のリングに立つのも初めてだし、そこでデビューを言われて、しかも横浜文体。ヤバッ!と思いました。
――期待の新人がデビューという感じで紹介されてました。
すず ずっと藤本(つかさ=アイスリボンのトップ選手)さんには「あなたには期待してるから」って言われていたし、デビューも決まって、ワクワクしかなかったです。浮かれてました。
――浮かれすぎて…。
すず 後楽園からの帰り道、自転車で転んでしまいました…。
――発表当日の夜、藤本取締役からすず選手のデビュー戦消滅を聞いて、僕も衝撃を覚えました(笑)。
すず ホントすいませんでした…。最寄りの駅から道場までの帰り道、(先に行っていた)先輩たちに追いつこうと思って、自転車に乗ってメッチャ飛ばしてたら…。
――何があったんですか?
すず カゴがない自転車で荷物を手で持ってたんです。走ってたら荷物が挟まったかなんかで、ポーンって。
――宙を舞ったと?
すず 飛びました(笑)。地面が近づいてくる感じがスローモーションで見えたんです。ヤバッ、どう着地しようって思ってたら地面がドンドン近づいてきて。それでクルッて横向いたら肩から落ちて…。
――左鎖骨骨幹部骨折という重症でした。今となっては笑い話ですが、当時は…。
すず 笑えなかったです。最初は折れてないって思ってたんですけど、鎖骨を触ったら折れてるー…って。やっちまったって思いましたね。そしたら周りにいた人たちが「大丈夫か?」って寄ってきて。そのなかにアイスリボンを知ってる人がいて、「さっきつくしちゃんたちが歩いてたよ」って言ってたので、「ちょっと呼んできてもらってもいいですか?」って。それから救急車に乗って病院に行って。
――歓喜のデビュー戦決定からまさかの負傷。天国から地獄ですね。
すず 病院で「8月26日にデビューするんですけど、いけますか?」って聞いたらアッサリ「無理だね」って言われて。そこからズーン…っていう感じになって。
――その2日後にはデビュー戦延期会見もやりました。
すず やりましたね(苦笑)。でも、その時はもう現実を受け止めていたので。泣きわめいても治るわけじゃないし。
――とはいえ会見で泣いてましたね。
すず そうですねぇ…。でもラッキーって思ったのは、その会見を週プロモバイルのトップニュースとして載せていただいたじゃないですか。あれ、会見が終わって寮に帰ろうと思ったら「すずー!」って藤本さんに呼ばれて、見せていただいて。よっしゃ!と思いました(笑)。
――あのシチュエーションでよっしゃと思えるのもさすがですね。
すず えへへ。
――事故から4カ月後の‘18年大みそか後楽園ホール大会で同い年の先輩、朝陽選手を相手にデビュー戦が決まりました。
すず やっとですよね。うれしかったのもあったけど、一番は緊張でした、一回あれだけ大々的にデビュー決定って発表してもらったのにケガがあって。欠場してる間にどのぐらいレベルアップしたかっていうのもお客さんにも見せたいし、先輩たちにもこんなに元気になったぞっていうのを見せたかったし。それをやり切らなきゃ!っていう気持ちがあって、超緊張しました。
――デビュー戦では先輩、朝陽選手相手に鮮烈な勝利を飾りました。
すず やっぱり(朝陽とは)比べられるし、毎日、寮で一緒に生活してると、お互いのいいところも悪いところも見えてくるので。私情も含めてのデビュー戦でしたね。あの時の緊張感とか感覚って一生忘れないと思います。強烈でした。ひたすら朝陽さんしか見てなくて、周りは何も見えなかったです。
――ジャーマン・スープレックスで勝利をつかみました。
すず 安心感が一番でしたね。よっしゃ、やり切ったぞ!って。ヒソヒソ練習してたジャーマンを決めれたぞ!って。
――勝ったすず選手、負けた朝陽選手。試合後の寮での関係はどうでしたか?
すず 気まずいですよ(苦笑)。向こうはあー…!って感じだし、こっちもやっぱり気にしますし。
――リングを降りればノーサイドと言いますが…?
すず そうはならなかったですね。
――今年9月14日にはすず選手にとっては初めての、そして当初デビュー戦をおこなう予定だった横浜文体での試合を経験。この大会でも朝陽選手と対戦予定でしたが、相手が試合恐怖症となり緊急欠場。大会前日になってようやく相手が決まるというアクシデントに見舞われました。
すず あれを乗り越えたら何も怖いものないなって思いました。前日まで対戦相手が決まらない。デビュー戦ができなかった文体、1年越しの待ちに待った大会でですよ。
(朝陽のことを)最後まで信じようとは思ってたんです。ライバルだけど、デビューする前からずっと続いてきたライバル関係で。でも、文体に向けてモチベーションを上げまくっていた自分と、モチベーションが下がって出れないかも…ってなってた朝陽さん。ネガティブな気持ちにつられちゃうのが嫌で、あえて寄り添ったりはしませんでした。自分は自分。(朝陽とは)もう立ってる場所が違うって思ったので。出ないならそれでいいし、私は引きずらないからって。
――とはいえ、心のなかは穏やかではなかったのでは?
すず ザワついてました。すごいザワザワした1週間でした。でも、対戦相手が決まってからは気持ちは切り替えて。文体は鈴季すずというレスラーにとって初めての、そして一番大きい会場だし、デビューできなかった時の悔しさとかいろんな思いをかみしめながら試合をしましたね。
――11・23横浜ラジアントでは雪妃真矢選手の持つICE×∞王座に挑戦します。
すず 文体が終わったぐらいから、ベルト戦線に絡めるような選手になりたいなって思ってたんです。でも、今じゃないなって。もっとレベルアップして、みんなが認めるレベルになってから挑戦をしようって。だけど、11月3日の大阪大会が終わって、いまだ!と思って挑戦表明をして。
――先に尾﨑妹加選手が挑戦表明してましたが、そこに割って入る形で名乗り出ましたね。
すず 妹加さんとユキさんの間で(タイトル戦が)実現したらタイミングがなくなってしまうと思って、割って入っちゃいました。
――当初は「みんなが認める選手になってから」だったのが「いまだ!」になったのはなぜなんでしょう?
すず 文体から大阪までの短い期間にいろいろなことがあったので。すごいザワザワした1カ月だったというか。
その1カ月で自分自身のプロレスに対しての気持ちとかモチベーションがガラっと変わりました。私がアイスリボンを引っ張っていきたい!って思ったし、すずにならアイスリボンを任せられるって言わせるような選手になりたいなって思ったので。
――文体から大阪までの間に朝陽選手、テキーラ沙弥選手、ジュリア選手。すず選手と近い間柄にあった人たちがそれぞれ大きな出来事に見舞われました。
すず これまで自分が深くかかわった人たちがいろいろな方向に行ったじゃないですか。朝陽さんはまだ欠場してるけど復帰に向けて頑張っていて(※11・23横浜で復帰予定)、ジュリアさんは違うステージに行かれて、やっぱりショックとか驚きがあったし。沙弥さんは台風があって(引退延期になって)、もう一回引退しようって決めて、そこから気持ちを作り直す姿を目の当たりにしたり。ホントいろいろ思うところはあったけど、こういう時こそポジティブにいかねばならん!と思って。自分がやらなきゃ! 自分しかいない!って。もう(ベルト挑戦へ)自信満々ですよ!
――とはいえ相手は雪妃選手。いまのアイスを引っ張っているスター選手です。
すず 11月23日はユキさんの5周年記念大会で、あえてそこでやろうよって笑顔で言ってきましたからね。目は怒ってたけど。でも、そんなんでおじけづいてたらベルトに挑戦できないので。目はそらさなかったです! 目をかっぴろげてにらみつけてやりました!
――勝利のイメージはできてますか?
すず ジャーマンをいっぱい投げてスリーを取る! 沙弥さんからいただいたグランマエストロ・デ・テキーラ(変型キドクラッチ)でスリーを取る! いまユキさんがアイスリボンを引っ張っていってるじゃないですか。だけど、すずがベルトに挑戦して、ベルトを巻いたとしたらアイスリボンがまた新しい色になるかなと思ってます。ドッカーン!とやりますよ! デビュー戦の時よりも、どんな試合の時よりもすごいジャーマンでドッカーン!と。
――すず選手が勝てばアイスの空気は大きく変わると?
すず はい! 自分は寮に住んでて、事務所にも道場にもずっといる人間なので。アイスリボンの空気はやっぱり感じていて。だけど、アイスリボンはいろんなことがあっても団結力があるから。みんなが前を向いて進むことができるアイスリボンが大好きなので。そんなアイスリボンに鈴季すずが新しい光を灯したいなって。
――団体への思いが原動力になると?
すず はい! アイスリボンが好きだし、アイスの先輩たちがいなかったらいまの鈴季すずはいないので。そういう感謝の気持ちを込めて、11月23日、ベルトを取ります! 取りますよ! 取って、いっぱい防衛戦をやりたい。いろんな人と防衛戦をやりたい。団体内でも他団体でも海外でもどこでも、誰でもいいからベルトの防衛戦をいっぱいやって、アイスリボンを盛り上げたい!
――そのためにもICE×∞のベルトを取らなきゃいけないと?
すず はい! もちろんです! がんばります! ユキさんに勝って、絶対ベルト取ります!
★11月23日(土)神奈川・横浜ラジアント(12:00)
⑥ICE×∞選手権試合◎<王者>雪妃真矢vs鈴季すず<挑戦者>
⑤トライアングルリボン選手権試合◎<王者>松屋うのvsバニー及川<挑戦者>vsチェリー<推薦者>
④藤本つかさ&つくし&世羅りさvs星いぶき&朱里&本間多恵
③柊くるみ&藤田あかねvsトトロさつき&青野未来
②尾﨑妹加&ラム会長vs角田奈穂&Yappy
①テキーラ沙弥vs朝陽
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