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2024-09-19

【相撲編集部が選ぶ秋場所12日目の一番】大の里に土! 若隆景がストップを掛け、優勝争いは風雲急

若隆景にうまく取られ、ついに土。表情をゆがめながら土俵を割る大の里。優勝争いは、にわかに緊迫感を増してきた

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若隆景(寄り切り)大の里

止めたのは、若隆景だった。
 
初日から無敵の勢いで連勝街道を走ってきた大の里に、ついに土がついた。若隆景が、二度、三度と危ない場面をしのぎ、最後はうまく体を入れ替えての寄り切りで黒星をつけたのだ。
 
大の里と若隆景は、巡業の稽古などでは手合わせはあったというが、本場所ではこれが初対決。焦点は、低い若隆景の体勢を、大の里が起こせるかどうかにあった。
 
立ち合い、若隆景におっつけられることを嫌ったのか、大の里は右差し狙いではなく、モロ手突きを選択した。
 
先手を取ったのは大の里。モロ手突きの勢いを生かし、さらには今場所効いている左おっつけで赤房下方向へ攻め込んだ。ただ、若隆景も立ち合いの当たりは低く、鋭かった。体の大きさが違うので先に攻められはしたが、上体は起こされることはなかった。押されながらも右、左と下から入ってモロ差し。まず一度目の危機をしのぐと、両下手を引きつけ逆襲に出た。
 
今度は大の里がしのぐ番。右を首に巻くと、左から突き落とし、右で若隆景の頭を押さえつける。一瞬前にのめった若隆景だが、左足一本で残した。二度目の危機をしのいだ若隆景は、再び左を差し込んでモロ差し。大の里は、構わず右ノド輪で押し込み、決着をつけに出るが、この攻撃で、少し体が浮く形となった。黒房下、俵に詰まった若隆景だが、ここを残すと、大の里の下に自分の腰を入れることに成功、左の太ももを巧みに寄せて左下手をひねるように引きつけ、右下手から振ってうまく体を入れ替えると、最後は寄り切った。

「よく覚えてないけど、突き落としのところはよく残れた」と若隆景。「下から攻めていこうと思って、我慢して相撲が取れてよかった。俵の中にいる限り、勝負をあきらめることはない」とも。その残り腰と、最後の体の入れ替えの技術は、さすがだった。

一方、大の里は、「きのうからよくなかったんで、きのうの落とし穴がきょうハマった感じ。勝ちを拾った相撲も何番かあったので。きょうは詰めの甘さが出た」とのコメント。勝負どころだったのは間違いないとはいえ、ちょっと最後のところで攻め急いだといえるか。やはり元関脇、優勝経験もあるクラスの相手には、もうひと腰落として攻めなければ攻め切れない、というのはいい学びになったことだろう。
 
かくして大の里に土がつき、11日目まで3人いた2敗勢はこの日、錦木は大栄翔に敗れて3敗に後退したが、「よく突っ張れて勝機をつかめました」と小結平戸海を突き出した髙安と、「(目の前で大の里が敗れたが)自分の相撲に集中することだけを考えました」と、琴櫻を上手投げに破った霧島が2敗をキープ、大の里との差が1つになった。
 
大の里としては、大関昇進に向けては、まだ残り3日で星を重ねていけばいいので、さほど心配はないが、優勝ということに関しては、ほぼ無風に見えていたところに波風が立ち、風雲急を告げる形になった。
 
もちろん、まだ星1つリードしている大の里の優位は変わらないが、大の里は今場所ともに不調とはいえ、まだ琴櫻、豊昇龍の両大関との対戦を残しており、この先も楽とは言えない。さらに、もしこのまま1差でいった場合には、不調の関脇阿炎に代わって髙安が千秋楽の相手に浮上してくる可能性も高く、そうなると、番付に差があるとはいっても、髙安に自力逆転の可能性が生まれる以上は何が起こるか分からない。霧島も自力逆転はないが、もはや“負けてもともと”の気持ちで臨めるので、力は出しやすいだろう。

「もう一度集中して、あしたから頑張ります」と大の里。まあ、見るほうとしては、初日から行った行ったの大独走も、「ホントにスゲェな」ということにはなるが、それではちょっとあっさりしすぎている気もする。やはり、手応えのある相手や、山あり谷ありの場面を乗り越えてこそドラマ。そのほうが、優勝も、大関昇進も、より輝く、印象深いものになるようにも思う。にわかにわき起こってきた「まだまだ何かが起こるかも」のムードも、ファンとしてはそれはそれで大歓迎だ。

文=藤本泰祐

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