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2024-11-28

【しゅりんぷ池田のカード春秋】FUSION(第2回)「七夕の悲劇」の決着弾は代打の代打のサヨナラ満塁ホームランだった

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今季5月31日の楽天対ヤクルト戦の9回裏、2-3とリードされた楽天が一死一、二塁としたところで村林一輝に代打・茂木栄五郎が送られました。ここでヤクルトが左打者の茂木に対して左投手の長谷川宙輝を投入すると楽天は代打の代打として右打ちのフランコを送ります。ここでフランコが期待に応えて3ランを放って楽天がサヨナラ決着を果たしたのです。代打の代打のサヨナラ弾は80年の門田博光(南海)、83年の平田薫(巨人)、98年の広永益隆(オリックス)、06年のパスクチ(ロッテ)に次いで史上5例目なのだとか。

No.34 フランコ(楽)
No.34 フランコ(楽)

今回そのフランコと並べてカード化したOBは広永だったのですが、この日の試合は特筆すべきものでした。98年7月7日に行われたオリックス対ロッテ戦は前日までロッテが16連敗という中で行われた試合だったのです。

No.35 広永益隆(オ)
No.35 広永益隆(オ)

同戦は先発の黒木知宏が好投し、勝利目前に迫りながら3-1とリードしていた9回裏二死一塁からプリアムに2ランを喫して同点とされます。この被弾の直後から登板した二番手の藤田宗一が踏ん張って延長12回を迎えたのですが先頭のプリアムが中前打で出塁。続く代打の福留宏紀が送りバントを試みますが、藤田がこの処理を誤り無死一、二塁となると次打者を敬遠して満塁策を取ります。

ここでオリックスは右の藤本博史を代打に送りますが、ロッテは右投げの近藤芳久を三番手で投入。これに対してオリックスは左打ちの広永を代打の代打で起用します。そして、その3球目を右翼席に放り込んでオリックスが勝利。ロッテの連敗は17まで伸び、従前の記録を更新するプロ野球新記録となりました(翌日の同戦にも敗れ記録は18に)。

この試合は「七夕の悲劇」と呼ばれることになるのですが、この試合に決着をつけた広永は実働10年で34本塁打のみながら数々の節目のホームランをマークして「メモリアル男」とも呼ばれています。その主なものを挙げると…。

●1989年4月8日 福岡ダイエーホークス球団第1号/パ・リーグ平成第1号/開幕戦のプロ初打席で初本塁打
●1990年9月26日 プロ野球通算6万号
●1992年6月5日 パ・リーグ通算3万号
●1992年10月1日 平和台球場公式最終戦で本塁打

この試合は現在でもテレビでも取り上げられることが多く、プリアムに同点本塁打を喫してマウンドにしゃがみ込む黒木ばかりがクローズアップされるのですが、最後の最後はこんな劇的な本塁打で決していたのですね。


当コラムは、これまで「週刊ベースボール」の「Curutural Review」のページに掲載されていたカードのコラムを転載していたのですが、2001年春から続いていたこの連載が先日の4月1日号をもって終了しました。今後、当コラム「カード春秋」(※)はBBMカードサイトのオリジナルコラムとして続けていこうと考えておりますので、よろしくお願い致します。

※「カード春秋」というタイトルは、わたしの出身校・香川県立高松高校(旧制・高松中)の大先輩にして、文藝春秋社の創設者である菊池寛先生へのオマージュなのです。

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