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2025-01-22

【相撲編集部が選ぶ初場所11日目の一番】怪物パワー炸裂! 金峰山が大の里を撃破し1敗キープ

きのうとは打って変わったバランスのいい突きで、大の里を一方的に突き倒した金峰山。1敗を守り、あすは豊昇龍に挑む

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金峰山(突き倒し)大の里

きのうとは、まるで別人だ。
 
この日は、持ち前の“怪物パワー”が炸裂した。金峰山が一方的に突き倒して大関大の里を撃破だ。
 
それにしても、気持ちの持ち方ひとつで、相撲とはこうも変わるものか。この日の金峰山は、「きのうみたいに肩に力入れたら、足が出なくなる」と、前日の敗戦の反省を生かす気持ちで土俵に立った。
 
その気持ちが、きのうとは打って変わったいい立ち合いにつながった。この日は下からの力がしっかり伝わる突きで、完全に立ち合い当たり勝ち。右のノド輪で大の里の上体を大きく反らせることに成功した。
 
先手を取られた大の里は、思わず引きを見せ、さらにその後、土俵際では左からの突き落としを見せた。しかしここでも、金峰山の反省が生きた。上体に力が入っていると、頭が突っ込んで、引きや突き落としに落ちやすくなるが、この日の金峰山は、きのうと違って頭を下げすぎずについていき、しっかりと大の里を突き倒した。

「立ち合いは決めてました。きょうは落ち着いて前に出るように頑張った」と金峰山。この日の相手の大の里は、プロでは実質初対戦(大の里に不戦勝1勝あり)だが、大学時代に対戦があり、2学年上の金峰山のほうが4勝2敗と勝ち越している。そういう意味では、相手が大関と言っても、金峰山にとっては気後れもなく、嫌なイメージもなくぶつかっていける相手ではあったはずで、そのあたりも、この日の圧勝へプラス要因になったであろう。
 
金峰山は単独トップの1敗をキープ。この一番は、上位相手にも勝てる力があることを証明し、同時に自らが優勝争いの本命であることも証明した一番となった。
 
この日は、きのうまでの2敗勢は、王鵬が阿武剋に一度組まれながらも前に出て白星を手にしたが、尊富士は大栄翔に敗れて3敗、さらに千代翔馬も大関豊昇龍にはね返されて一歩後退となった。きのうまでの3敗組は、豊昇龍のほか、霧島が白星をゲット。金峰山に敗れた大の里は4敗を数え、ほぼ脱落となった。整理すると、1敗が金峰山、2敗が王鵬、3敗で豊昇龍、霧島、千代翔馬、尊富士の4人が追うという展開となった。
 
金峰山が上位も倒せることを証明した以上、やはり情勢としては現状星のいい金峰山が優位とはいえるが、ただ王鵬、あす対戦する豊昇龍、霧島、千代翔馬と、優勝争いをしている3敗以内に未対戦の力士が多く、皆が寄ってたかって金峰山を引きずり降ろす可能性も、まだまだあり得る。
 
おそらくこの後は、基本的にはこの4人が対戦相手になるだろう(もし霧島、千代翔馬が優勝争いから脱落したときには、三役力士や髙安あたりが浮上か)。この残り4戦を金峰山が何勝何敗で乗り切れるか、中でも王鵬との対戦の行方が大事になる。
 
きのうときょうの相撲を見ていると、金峰山は上位も倒せる力はあるので、いかにいい精神状態でぶつかれるか次第、だということはほぼ間違いないだろう。この日の取組後のテレビインタビューでは、「優勝するために頑張ります」と答えた金峰山。今後大きくなってくるであろうプレッシャーの中で、この日のような相撲を取り続けられるか。それをやり切って、きのう言った「5日で4回は勝つでしょう」が実現できれば(1敗した場合、その相手が王鵬でないことが条件にはなるが)、初優勝に手が届く。
 
まずあすは豊昇龍戦。豊昇龍も金峰山の突きをまともに食らいたくはないはずなので、立ち合いをどうするかが問題だ。当たって突いていくのか、当たって廻しを狙いにいくのか、最初から廻しを狙いにいくのか……。ただ豊昇龍にそういった選択肢があることで、逆に金峰山のほうにも、この日のように100パーセントでぶつかっていけるか、という葛藤も生じるはず。両者がどんな立ち合いをしてくるか。まずはそこに注目だ。

文=藤本泰祐

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