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2025-03-07

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第27回「誕生日」その2

平成28年7月3日、30歳となった稀勢の里に報道陣から特製ケーキが贈られた

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誰でもあるもの、それが誕生日です。
キリストの誕生日は12月25日、クリスマスですね。
では、お釈迦さまの誕生日は? 4月8日です。
令和3年はコロナ禍で低調でしたが、いわゆる花まつりです。
力士たちにも、もちろん、誕生日があります。
でも、おめでとう、と祝福され、ただケーキを食べてうれしがっているのはまだ子どもです。
この日だけはさまざま思いを巡らし、新たな目標に向かって心を新たにする。
それが大人ってものです。
力士たちも誕生日にはいろいろなコメント、反応を残しています。
そんな勝負師ならではの誕生日コメントを集めてみました。
おもしろいですよ。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

10代よりも元気
 
30歳の誕生日を飛躍の足掛かりにしたのは稀勢の里(現二所ノ関親方)も同じだ。平成28(2016)年7月3日、稀勢の里は大台に乗った。ということは、豪栄道(現武隈親方)と稀勢の里は同年齢だった、ということになる。
 
17歳9カ月で十両、半年後の18歳3カ月で入幕するなど早熟で、早くから、日本人力士期待の星、と言われ続けてきた稀勢の里だったが、このときはまだ大関。それも昇進して5年目、31場所を経過した、コケの生える寸前の古参大関だった。
 
それだけに、しびれを切らし、ときには辛辣な言葉を浴びせる熱烈なファンに対する反発もあったのかもしれない。稽古上がりに、報道陣から、相撲漫画家の琴剣さんが描いた賜盃を抱いてにっこりするイラスト入りのケーキを贈られて、

「10代の頃よりも、体はドンドン元気になっている。体の張りもいいし、力も増し、朝の目覚めも最高です」
 
と自画自賛し、

「早くこの(ケーキの)絵のようになれるようにがんばりたい」
 
と言い添えた。
 
稀勢の里がこの公約を守り、初優勝し、さらにファン待望の横綱に昇進したのは半年後の、年が変わったばかりの平成29年初場所だった。横綱昇進の伝達式が行われたのは場所後の1月25日で、場所は部屋が狭く、押しかけた報道陣らを収容できないために都内の帝国ホテルだった。当日、会場に母親の裕美子さんとともに姿を見せた父親の萩原貞彦さんは、

「横綱になると勝ってもらわないといけないので、見ている方がつらい。早く引退して欲しい」
 
と祝福らしからぬ言葉で祝福していた。

月刊『相撲』令和3年6月号掲載

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