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2025-06-04

新日本プロレス・辻陽太のインドネシア訪問の理由。目指す興行開催とリング上の延長線上としてのボランティア活動【週刊プロレス】

現地の子どもたちと交流した辻(本人提供写真)

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思い立ったが吉日――辻陽太は衝動的に飛行機のチケットを購入した。

 年に一度のジュニアの祭典『ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア』開催中、新日本プロレスの公式サイトに「辻陽太選手がインドネシアをボランティア訪問!」なるニュースがアップされた。

「特に貧困地域の人々に、ライオンTシャツを寄付。農村で暮らす子供たちと交流しました。子供たちは初めて見るチャンピオンベルトに大興奮。また、現地の伝統的な料理で温かく迎えていただき、親睦を深めました」

 5月のオフ期間、辻は2泊3日のスケジュールでインドネシアを訪れた。きっかけは社会人時代の同僚との食事の席。かねてインドネシアという国に興味を持っていた中、思わぬ形で“接点”を得ることになった。

「社会人時代の同僚の友だちが、インドネシアからバニラビーンズを輸入する仕事をしているんですよ。彼はコロナ禍でその事業を始めて、仕事でやり取りはしていても、まだ一回も現地には行ったことがないと。自分も一度インドネシアに行ってみたかったので、5月に時間があるのでいっしょに行きましょう!っていうことで、その場ですぐ飛行機のチケットを取りました(笑)。

 インドネシアの輸出先の会社は、その事業で得た利益で水、お米、卵とかの物資を、たとえば恵まれない人たちにボランティアで運んだりしていると聞いたんです。個人的にボランティア活動にも興味があるので、その人たちにあやかっていっしょに現地でボランティア活動もできたらいいですねっていう話になって、今回の活動につながったんです」

 元々、辻は社会経済の分野にも関心があり、アジア圏にも着目。インドネシアは現在、インド、中国、アメリカに次いで世界4位の人口(約2億8000万人。ちなみに日本は12位)を有し、世界的に見てもSNS利用率が高い。「アジア系でこれからもっと伸びていく国」としてインドネシアに興味を持ち、さらに団体に対してもビジネスチャンスを広げる意味でアジア圏での興行を提案してきた。

「自分は前々からアメリカとかではなくて、アジアを攻めた方がいいんじゃないか、アジアで興行とかをやった方がいいんじゃないかと団体に投げ掛けていたんです。口だけじゃダメだと思って、実際に一度、現地に足を運んで現状を見てみたいというのもあって。今回、現地のコーディネーターの人と話したら、今後、現地のレスリング協会、スポーツ省とかを紹介できるかもしれないと。まだなにも話は進んでいないけど、日本に帰ってから今回の話をしたら新日本側も興味は示してくれているので、もしかしたら今後つながっていくかもしれない。

 実際、現地でのプロレスの知名度はどうなのかっていうと、凄く山奥でどうにか電気が通っているような地域の方に『プロレスは知っていますか?』って聞いたら、『知らないです』と。でも、WWEは知られていて、プロレスではなくWWEという一つのジャンルとして認識している感じでしたね。現地のプロモーター的な人が言うには、むかしはテレビ放送もあったらしいんですよ。だから個人的には、プロレスが広まる土壌、可能性はあるんじゃないかなと思ったし、いつかインドネシアで興行ができたらいいですね」

 特に公表はしていないものの、辻は以前からボランティア活動にも励んでおり、たとえば『子ども食堂』への支援などをおこなっている。それはプロレスラーとしての役割、表現の延長線上にあるものだと語る。

「どうしてもボランティアというと偽善的に見られるかもしれないけど、でもボクらは普段、プロレスを見ることでみんなに元気になってもらったりとか、そういうことをしているわけですよね。実際に自分が足を運んで子どもたちが喜んでくれるとか、プロレスだけじゃなくてほかにも形としてできることがあると思うし、自分の立場を使ってできることであれば、それはプロレス以外のことでもいいのかなって。今回も日本人がほとんど行かないようなインドネシアの山奥の地域の方と交流して、少しでもなにか力になれたらいいかなと思って、活動させてもらいました」

 奇しくも辻と同期の上村優也も、さまざまな社会貢献活動に積極的に取り組んでいる。新日本マットの近未来を担う一人として存在感を強める一方、フットワークの軽い行動力と柔軟な思考をもって活動の幅を広げていく。“新世代”はリング上の立場のみを指してのものではなく、プロレスラー像をアップデートしていくリング外の姿勢にも当てはまる。

(市川 亨)

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