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2020-09-01

青森山田中学校の監督に聞くサッカーの育成Part.3「成長する選手の保護者に共通するポイントは?」

KEYWORD 03「評価の仕方」

2019年度は、フジパンカップ関東少年サッカー大会優勝、東京都U-12サッカーリーグ優勝などの成績を収めた府中新町FC(写真は18年のもの)

司会 上田監督は「評価は他人がするもの」と話していますが、その点についても解説をお願いします。

上田 「僕はこんなに自主練しました。それなのに、なぜあいつがレギュラーに選ばれるのですか?」と、中学生が内面に不満を持っているだろうなと感じることがあります。しかし、青森山田ではどれだけ自主練したか、その練習量は評価の対象には入りません。表現するのはピッチの上であり、ピッチの上でやれたときに初めてできるようになったのだと判断します。

 努力する姿や練習する姿を他人に見せずに頑張っている選手はたくさんいます。もし、普段どれだけ練習するかで評価するとしたら、おそらく、みんなが監督の目の前で練習を始めるでしょう。私は、「オレの顔を見ながら練習しなくていいよ」と選手に言います。選手にとっては休むことも大切なのです。練習量で評価したら、休養するのがダメなことになってしまいます。

 やはり、自分を表現するピッチの上で結果を残すことが、一番の評価だと思います。そして、評価するのは他人であって自分ではありません。「あいつより僕のほうが自主練している。だから僕でしょう」というのは自己評価であり、自己満足に過ぎません。評価はあくまでも他人がするもの。いくら練習しても評価されなかったとしたら、それは間違った練習だったから、あるいは努力が足りなかったから、と思わなければいけません。

司会 私のクラブ(府中新町FC)でも、私たち指導者とやたら目が合う子がいます。ちらちらと、こちらを見るのです。監督やコーチに認められるように頑張りなさいと、保護者の方に言われているのかもしれません。しかし、成長し、うまくなっていく子は、コーチの目など気にせずに夢中になって集中してやっています。

 保護者は「ウチの子はこんなに頑張っているのに」と評価しがちです。以前、対戦相手の保護者が自分の子の指導者に文句を言っているシーンを目にしたことがあります。

上田 そういうことを選手自身がしっかりと理解すれば、いろいろなところに変化が出てきます。青森山田は寮生が多く、グラウンドに自由に出てすぐに自主練できる環境にありますが、中にはボールを置き、止まっているボールで何度もシュート練習をする選手がいます。しかし止まっているボールで行なうシュートは、フリーキックの練習にはなりますが、それ以外の効果はほぼないでしょう。一方で、工夫して、いろいろな状況をつくり出そうとしている選手もいます。コーンを使い、それを相手に見立てて背負ってターンするなど、実戦により近いイメージを持って練習をしているのです。見ていると、本当にさまざまな工夫をして自分の課題を克服しようと取り組んでいます。

 グラウンドにいる時間の長さだけではなく、そういった実戦的なトレーニングが身になるのだと思います。グラウンドに残ってトレーニングをただ行なうだけでは意味がありません。評価は、自分ではなく、他人がするものだということをしっかりと理解してほしいと思います。

川端 自分としては良くなったと思っても、他人が評価してくれなければ、意味がないことです。

上田 そういう意味で言うと、プロになった選手の共通点は、自分の限界を決めず、自分自身に満足しないということかもしれません。

川端 A代表に入るような選手たちは、自分で満足しませんし、自分の課題を常に自分で見つけていくマインドを持っているものですよね。    

※当企画はパート3で終了

青森山田中学校監督プロフィール

上田大貴(うえだ・だいき)/ 1985年9月25日生まれ、北海道出身。青森山田高校から仙台大学へ進む。社会人としてプレーしたあと、2011年に青森山田中学校の監督に就任。17年度までに全国中学校サッカー大会で5回の優勝を果たした(14年度から17年度まで史上初の4連覇。18年度と19年度は準優勝)。18年度のJFA 第22回全日本U-15サッカー大会では、中体連として史上2校目となる決勝進出に導いた

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