まずは野球の楽しさを感じることがチームのモットーだ
今年よりポニーリーグに加盟したフィールド・オブ・ドリームズ。しかし、2014年の創設から6年間はどの中学硬式野球リーグにも所属していなかった。
そこには勝利至上主義の価値観から離れて、野球を楽しんでほしいという堀監督の思いがあった。
フィールド・オブ・ドリームズには、少年野球時代に指導者から厳しい叱責を受け、心に傷を負った選手が少なからずいる。試合になると顔が強張ってしまう選手もいたという。
「彼らはミスをしたら怒られることが当たり前になっていて、いくらチャレンジしていい、失敗してもいいと言っても、それを覆すことができません。それほど怖い思いをしたということでしょう。それでも『野球がしたい、ここならばできる』と本チームを選んでくれたのですから、少しでも野球を楽しんでもらいたいのです」
ただ、指導者が代わり、環境が変わっても、恐怖心がすぐに消え去るわけではない。ジュニア期の選手にとってはなおさらのことだ。
「今の子どもたちは恐怖心をあおられて動くことに慣れてしまっています。ではその恐怖を取り除けば自発的に動くようになるかというと、そうではない。『怒られなかったらやらなくていいんだ』という思考になっているんです。
しかし、強制されてやることなどたかが知れていて、技術も知識も夢中になるからこそ深まっていくもの。ですから、自発的に動けるようになるために、さまざまなアプローチすることが必要だと考えています」
その一つが、例年8月行われてきた「野球をしない合宿」。ミーティングやチームビルディングのゲームを行うことで、チームメートの違った一面を知ることができたり、自らの意見を発信する経験にもなる。指導者にとっても、選手の本質をつかむための大切な機会となっている。
これからの人生の糧となる経験を野球を通じて伝えることが堀監督の願いだ(写真=フィールド・オブ・ドリームズ提供)
すべての取り組みは選手のために。ポニーリーグへの加入を決めたのも、「Protect Our Nation's Youth」という子どもたちを第一に考える指導理念に賛同したためだ。
加入1年目の今年は新型コロナウイルスの影響により春季大会が中止、選手権大会も延期となっていたが、7月末からの選手権大会関西地区予選から公式戦に参加。見事、全国大会出場権を獲得した。
もちろん、これからも勝利至上主義ではなく、野球を楽しむことを追求するチームの姿勢が変わることはない。
堀監督は、野球に限ることなく、その子らしい道を進んでくれることが、指導者としての一番の願いだと語る。
「将来、これをやってみたいというものが見つかると思いますが、本当に好きなものと向き合うときは不安や恐れを感じるもの。そのとき、ここでの経験が恐怖心を乗り越える力の源泉になってくれればと思っています」
勝敗の結果だけでなく、何を子どもたちに与えることができるのか。これからのジュニアチームの指導には、この視点を欠かすことはできないだろう。
文責◎ベースボールクリニック編集部
フィールド・オブ・ドリームズ公式ホームページ
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