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2025-09-30

出るだけでなく、戦うために。世界選手権初出場、森凪也の挑戦と見いだした光明

世界選手権男子5000mに出場した森。予選敗退となったが13分29秒44の日本人歴代最高タイムをマーク


世界で戦うために、日本記録更新を目指す

「実力だけが足りなかった」という森の言葉に呼応するかのように、小川監督も「戦えたとは思っていません」と淡々と振り返る。だが光明も見いだせた。3000mから4000mは周囲のペースアップに対応するため、2分32秒台とそれまでの2分45秒台のラップから一気に上げたが、その後も崩れることなく、ラスト1000mを2分40秒台でまとめた点を小川監督は評価する。

「最後にこらえられたということは、途中のペースアップも無謀なスパートでなかったということです。ただ世界のレースをもっと知っていれば、そこでもっと楽にペースを上げられたはずですし、こうした展開のなかでもラストを上げられるようになることが今後の課題です。そのためには1500mで3分35秒台、3000mでも7分32、33秒くらいの力は必要ですし、5000mでも日本記録を更新しなければいけません。そして来年はもっと海外のレースに出て、位置取りなどの技術を身につけていければと思っています」

世界大会特有の揺さぶりやペース変化への対応も、絶対的な走力があってこそ可能になる。5000mでいきなり12分台は難しくとも、13分2秒前後を目標とし、そのうえでまだ足りていない国際経験を積んでいきたいと小川監督はまとめた。今回の世界選手権の参加標準記録は13分01秒00。その突破か、そこに限りなく近づくことが、この種目で戦う上での条件だ。そして先の言葉にあった通り、1500m、3000mでも日本記録を更新できるスピードも求められる。


今回の世界選手権での経験を踏まえ、世界との差を埋め、戦いたいという意欲が芽生えた

森自身も「今までは代表という意識はあまりなかったですが、今回このユニフォームを着たことでその自覚を持って取り組んでいきたいと思うようになりました。差を埋めるためにもまずは日本記録を更新したい。自分のなかでその責任感が芽生えてきました」と自国開催の世界大会を経て、視線がさらに上を向いた。

世界に出るだけでなく、戦うために。ここからが森の本当の意味での世界への挑戦だ。その挑戦が日本長距離界の未来を切り開くことを期待したい。

文/加藤康博 写真/中野英聡、田中慎一郎

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