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2025-11-21

【相撲編集部が選ぶ九州場所13日目の一番】大の里、きわどい相撲も安青錦を降す。V争い先頭は豊昇龍と横綱2人に

このあと、大の里の左ヒザも土俵に落ちるが、安青錦の体が先に土俵外に飛んでいると判断され、大の里が「3強決勝リーグ」の初戦を白星。精神的に残り2日を戦いやすい状況を作ることに成功したといえる

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大の里(寄り切り)安青錦

きわどい相撲だった。
 
物言いがついてもおかしくなかった。
 
ただそれでもやはり、「チョキ」(安青錦)は、「グー」(大の里)には勝てなかった。
 
12日目まで2敗できていた3力士による「決勝リーグ」の第1戦は、大の里が安青錦を退けた。
 
過去は2番とも大の里がモロ手突きで立ち合いから一気に押し込んで勝負をつけているこの対戦。今場所もやはり大の里はモロ手で突いて出た。ただ、安青錦もこれまでより立ち合いの圧力が増しているのか、今場所は立ち合い一発で押し込まれることはなかった。続いて大の里が右差しにきたところで左上手。この対戦では初めて相手の廻しに手を掛けた。
 
勢いに任せ、ここが勝負と体を預ける大の里に、安青錦は土俵の外に飛ばされながらも下に打つような上手投げ。体が伸びた大の里の左ヒザも結構早く落ちたように見えたが、安青錦が先に土俵外に飛んでいたと判断され、物言いはつかずで、軍配をもらった大の里が白星を得た。

「中に入りたかった。廻しは取れたが……」と安青錦。「これまでよりはいい相撲が取れたのでは」と、力の差を詰めたことは確かに感じさせたが、あと一歩。できれば取った上手の左側へ回れればよかったが、そこまでの余裕は作れなかった。あともう少し立ち合いの圧力差を縮められればそれが可能になるので、また次の対戦に期待だ。
 
大の里は、危なかったが前に出る圧力で何とか白星は手にした格好。それでも難敵を倒し、「(土俵際は)体を寄せて前に出たんで勝ちかな。自信は少しありました。うまく走れた。(上手を取られたが)うまく対応できた」と、いつもよりはコメント多めで大一番を振り返った。大きな関門を越え、少しはほっとしたところがあったのだろうか。

大の里は「決勝リーグ」の初戦に勝ったことで、これで気持ちの上ではほかの2人より優位に立った。もちろんあすの琴櫻戦も千秋楽の豊昇龍戦も、落とせる勝負はないが、少なくとも「決勝リーグ」を2番残す豊昇龍や、あすの横綱戦に必勝を要求される安青錦よりは、目の前の一番に集中していけばいい、という状態は作りやすいはずだ。相撲内容としては、ちょっと終盤戦に入って、腰が下りずに体が伸びたままでの攻めになっているところは気になるが、このあたりを修正できるか。
 
この日は3敗だった時疾風は4敗目を喫し脱落。豊昇龍は勝ち越しに向け必死の琴櫻との力相撲を制した。雑なところを見せずに、集中力と執念を貫いた相撲っぷりには、いい状態を持続させていることがうかがえる。
 
豊昇龍は、あすはこれまで連敗している安青錦戦。いくら大の里には分がいいと言っても、できれば千秋楽は相星決戦で迎えたいところだろう。義ノ富士が11日目に安青錦攻略に成功したように、突いて勝負をつけるぐらいの狙いで行く手はあると思うが、さてどうするか。
 
安青錦は、大の里に勝てなかった以上、ここで豊昇龍に勝てなければ、逆転優勝も、少なくとも今場所後の大関もない。何としてもこれまでのジャンケンどおりの結果を出したいところだ。これまでと同様、前傾姿勢で突きをしのぎ、横綱に「やはり突きだけでは無理」と思わせられれば、またいい形が作れるはずだ。
 
さあ、あすは「決勝リーグ」の第2幕。最終的に千秋楽の横綱相星決戦に収れんしていくのか、それとも……。豊昇龍と安青錦の対決だけでなく、大の里-琴櫻戦も含め、見逃せない戦いが続く。

文=藤本泰祐

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