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2026-04-28

【連載 泣き笑いどすこい劇場】第38回「号泣」その2

平成16年春場所3日目、引退会見での貴ノ浪。「悲しくはないんだけど、なぜか涙が出るんです」と名言を残した

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勝って泣き、また負けて泣く。
平成25年秋場所、松鳳山や碧山が横綱日馬富士から金星を挙げ、号泣した場面がありました。
最近は、泣きたくてもなかなか素直に泣けない鉄仮面人間が増えていますが、力士たちはまだまだ心が純なんでしょうか。
過去にも実にさまざまな場面で、多くの力士たちが感情を抑えきれずに大泣きしています。
今回はそんな涙にまつわるエピソードです。
※月刊『相撲』平成22年11月号から連載された「泣き笑いどすこい劇場」を一部編集。毎週火曜日に公開します。

悲しくないけど

力士たちの土俵に対するこだわり、思いは想像を絶するものがある。37場所も大関に在位し、優勝も2度している個性派相撲のかたまりのような貴ノ浪は、平成16(2004)年夏場所前に不整脈が出てひそかに入院した。

そして、迎えた夏場所、「出場したらたいへんなことになる」という医師の制止を振り切ってぶっつけ本番で出場したが、初日、2日目と完敗。この2日目の取組後、この日で幕内の出場回数が1118回となり、小錦を抜いて史上単独7位になったことに触れて、

「ハッハハハ。まあ、長く取っているだけのことですから。でも、勝たなくては長く取れない。いいことじゃないですか」

と明るく笑い飛ばして引き揚げたが、翌日、実にあっさり引退を表明。19年と2場所に渡る土俵一途の生活にピリオドを打った。

しかし、師匠の貴乃花親方同伴の引退会見では、

「場所前から今場所限り(で引退する)と決めていたんです。どこまで自分らしい相撲が取れるか、確かめるために出場しましたが、初日、2日目の相撲で無理だと判断しました」

と語り、会見の間中、涙をこぼした。

そして、この前日とはあまりの変わりように驚く報道陣にこう弁明して照れた。

「全然悲しくない。やれるだけのことはやりましたから。悲しくはないんだけど、なぜか、涙が出るんです」

この気持ち、分かるような気がする。それだけ相撲を愛し、いとおしい日々を過ごしたんですね。

月刊『相撲』平成25年12月号掲載

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