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2026-05-01

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第37回「ハイ、納得」その4

平成29年初場所12日目、カド番大関の琴奨菊は玉鷲に押し出されて負け越し。大関から陥落となった

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勝ちか負けか、白か黒か、1つしかない力士たちの言動はスッキリしたものです。
見ていても、あるいは聞いてみても、胸にストンと落ちます。
やっぱり物ごとはこうでなくっちゃ。
そんな、そりゃそうだと納得がいくエピソードを集めてみました。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

勝負の世界は非情

誰だって、いつかは節目のときがくる。これは避けられないことだ。
 
平成29(2017)年初場所12日目、7度目のカド番を迎えていた大関琴奨菊(現秀ノ山親方)は、関脇玉鷲に立ち合いから一方的に押し出されて負け越し、5年4カ月、32場所も守った大関からの陥落が決まった。
 
こういうさまざまな思いが交錯する一番に対決しなければいけない力士は、感情のコントロールが難しい。勝った玉鷲は、

「勝ったんだから、笑顔でいていいのかどうか、難しいですね。勝負は勝負なんだけど、涙が出そうです」
 
と同じ一門の大関を思いやった。対照的に、琴奨菊はすでにこの日がやってくることを覚悟していたのか、淡々とした表情で引き揚げてくると、

「まあ、これが今の自分の力だと思います。でも、力士は負けたからって終わりじゃない。辞めたときが終わりだから。自分の気持ちを立て直して、これからもしっかりやっていきたい」
 
と話し、即引退をきっぱり否定した。
 
確かにそのとおりだ。まだやれる、もう一度、上に上がりたい、という気持ちがある限り、土俵に上がり続けるのが力士の本分。琴奨菊が現役生活に終わりを告げ、引退したのはそれから4年後の令和2年の九州場所。最後は十両にまで落ちていた。その間、3個も金星を挙げている。まさに完全燃焼の力士人生だった。

月刊『相撲』令和4年4月号掲載

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