close

2026-05-10

【相撲編集部が選ぶ夏場所初日の一番】3年ぶりに関取復帰の炎鵬が、あのとき遠かった「1勝」をつかむ

最後まで頭を上げずに攻め続け、押し出して栃大海を破った炎鵬。十両力士としての白星は、令和5年3月場所千秋楽の白鷹山戦以来だ

炎鵬(押し出し)栃大海

ちょうど3年ぶりに、関取としての戦いの舞台に戻ってきた。そして、その3年前の5月場所ではつかむことのできなかった、白星をつかんだ。

「この1勝が、前回はできなかった。つくづく、きょうまでやってきてよかった」。その声に実感がこもっていた。
 
今場所、西十両14枚目に番付を戻してきた炎鵬だ。脊髄損傷の大ケガで、いったんは序ノ口まで番付を下げた。元幕内力士が、一度序ノ口まで下がって、また関取に復帰したというのは初めてのケースだ。

「これだけ(間隔が)空いちゃうと。土俵入りも緊張した」という炎鵬。「日常生活を送れるようになるためには、相撲は諦めてください」と言われたほどのケガだっただけに。「緊張というよりも、怖さがあった」というのもうなずけるが、それでもこの日、恐れることなく頭から当たっていったその姿に、その覚悟のほどが見えた。
 
立ち合い狙った左前ミツには手がかからなかったが、頭を相手のアゴの下にしっかりと置き続けた。左、右とハズにかかって攻め、相手の引きにも乗じて攻め込む。最後まで頭を上げず、相手の胸から腹のあたりを押して、栃大海を最後は押し出した。
 
折しもこの日は母の日。「母(由美子さん)はかなり張り切って見に来ていると思う。きょう白星を挙げられたことが、何よりのプレゼント」と炎鵬。「母は今でも毎日、心配してくれている」というが、同時に「悔いのないように、最後までやりなさい」という言葉も、母からはかけられたという。
 
この日の炎鵬は、おなじみだった赤の締め込みではなく、紫の締め込み。「やっぱり赤で、という声も多かったのですが……」とはいえ、生まれ変わったという気持ちを、新しい締め込みに込めた。
 
そして、以前の炎鵬と違うところがもう一つ。「場所前、体重が初めて110キロ台に乗りました。110.3キロ。かなり無理して食べてます」とのこと。もちろん動きの速さが武器、というところは変わらないが、首への負担を少しでも減らすには、体重増は悪いことではないはずだ。

「あしたも相撲を取れるのが何よりの喜び。(この先)どうなるのかは自分でも分からないが、相撲を取れることに感謝してやっていきたい」と炎鵬。その思いを胸に、力士として戦い続けられる限り、ファンの前にその勇姿を見せ続ける覚悟だ。

「一人でも多くの方に、(自分の)相撲を見ていただいて、“(どんな困難に遭っても)あきらめなければ、何とでもなる”というところを見せていきたい」とも言う炎鵬。その姿はこれからも、多くのファンに勇気を与え続けるはずだ。

文=藤本泰祐

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事