日本の男子800mが新たな群雄時代に入った。そう表現できる活況が連続している。5月3日の静岡国際で落合晃(駒大2年)が自身の日本記録を0秒90も更新する、1分43秒90で優勝。2位の松本純弥(成洋産業)は日本歴代3位(当時)となる1分45秒64をマークした。
その1週間後、木南記念で1着の源裕貴(NTN)が1分45秒46、2着の田邉奨(中大3年)が1分45秒57をたたき出した。共に松本の記録を上まわり、日本歴代3位、4位にランクイン。この4人に加え、1月に室内レースで1分45秒17をマークし、3月の世界室内で日本人初の入賞(6位)を果たした、クレイアーロン竜波(ペンシルベニア州立大)がいる。今季の日本男子800mは日本歴代5傑が中心となって火花を散らす、異次元の戦線なのだ。
元日本記録保持者の源に軍配木南記念では、元日本記録保持者の源と、400m45秒39の記録を引っ提げて今季800mに本格参戦してきた田邉の激突が大きな歓声を呼んだ。400m通過を51秒で引っ張ったペーサーが500mで離れると、田邉を前に、源が食らいつき、600mを1分17秒前後で通過。400mも600mも静岡国際の落合と互角のペースだ。好記録・好勝負の気配をまき散らしながら、ラストの直線。800mのキャリアにまさる源がフィニッシュ直前で田邉を逆転した。
「田邉くんには負けられないと思って、最後はがんばりました。1分46秒台は出したいなと思っていましたが、45秒台が出るとは思わなかったですね。田邉くんのおかげです」
そう言って、ハイペースで競り合えた若手に感謝した源は、環太平洋大4年時の2021年7月にマークした当時日本記録タイの1分45秒75の自己記録を4年10ヵ月ぶりに更新。優勝が確定すると涙ぐむような表情を見せたのは、社会人になってから自己記録を更新できない年月、「絶望的になった」と言う2月のケガ、トンネルを抜けた安心感、周囲の支え、さまざまな感情がよぎったからだろう。
自信と存在感を取り戻した源。「ラストは出し切ってはいたんですけど、伸びてはいなかったので、そこが次の課題になってくると思います」と、“さらに速く”を求める。勝負の日本選手権へ、「自分を信じて走り抜きたい」と完全燃焼を誓う。
東京世界選手権4×400mR代表が800m本格参戦 田邉は昨年の日本選手権400m3位。東京世界選手権の4×400mリレー代表メンバーに選出された。元々400mで後半の追い上げに強みを感じており、「大学に入ったら800mをやろうと思っていました」と言う。2027年世界選手権、2028年ロス五輪を見据え、800mチャレンジを決意。昨年6月の初800mでいきなり1分48秒16。今季は4月に1分47秒71、そして今回の日本歴代4位。加速が止まらない。
田邉の400m自己記録からすると、800mの1周目通過が50~51秒としても、約5秒の余裕がある。そのアドバンテージに加え、ロングスプリントから「中距離寄りと言いますか、インターバルやジョグなどボリュームが増えた感じ」と話す練習の変化にも適応。「800m寄りの(400m)選手なのかな」という自身の適性を磨きながら、「アジア大会を狙っています」と強気で日本選手権に備える。
記録では落合が1秒以上先行しているが、取材した源、田邉、松本、さらには昨年日本選手権2位の四方悠瑚(4DIRECTIONS)、誰もが落合に勝つことをあきらめてはいない。800mがおもしろくなってきた。