
2敗の照ノ富士の単独トップで迎えた千秋楽。照ノ富士が3敗の御嶽海に勝てば、すんなりと優勝が決まるが、敗れれば、3敗同士の朝乃山-正代戦の勝者を含む巴戦となる。
※写真上=単独トップの照ノ富士が両上手から御嶽海を寄り切り、5年ぶり2回目の優勝を決めた
写真:月刊相撲
運命の大一番はあっけなく勝負が決した。照ノ富士が踏み込みよく左上手を取ると、右も浅く上手を取った。御嶽海はモロ差しの形だが、上手を浅く取られているので、差し手が効かない。両上手を引き付けられると、何も抵抗できずに土俵を割った。
館内からは割れんばかり大拍手。照ノ富士は厳しい表情を崩さず、勝ち名乗りを受けた。土俵下に降りてから2階席を見上げながら、5年ぶり2回目の優勝をかみしめた。前回は関脇で優勝して大関に昇進。この5年の間、両ヒザのケガと病気で大関から陥落し、休場が続いて序二段まで落ちた。
「続けてきてよかったなと思います。いろんなことがあったけど、笑える日が来ると信じてやってきた。信じてやるだけだった。支えてくれた人に恩返しがしたかった」としみじみ。幕内から序二段に落ちて、返り入幕を果たしたのも初めてのことだった。史上最大の復活優勝と言っていいだろう。
場所入りする前、部屋の安治川親方(元関脇安美錦)から、「3番取るつもりでいけ」と言われたそうだ。本割で負けてもまだチャンスはあるから、肩の力を抜いていけということだろう。「それを頭に入れていたけど、できれば1回で終わらせたかった」と厳しい攻めだった。
優勝を決めたあと2階席を見上げていたのは、「自分の優勝額を見ていたんですよ」と言う。国技館に掲揚される優勝額は32枚。5年半前のものは外されていく。「自分の優勝額が撤去される前にもう一度優勝したかった。それをかなえられて本当にうれしい」。
何度も辞めようと心が揺れ動いていた照ノ富士。この復活優勝は、ケガに苦しむ力士たちにとって大きな勇気になるだろう。また、相撲だけでなく、何かを続けようか、あきらめようかと思い悩んでいる人たちにとっても、励みとなる優勝だった。
今後の抱負を聞かれた照ノ富士は、「今場所と同じく自分の全力を出して、やれるところまでやっていきたい」と力強く決意を語った。今場所のような相撲が取れれば、再び大関に昇進することも夢ではない。
文=山口亜土


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