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2026-06-19

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第39回「笑い話」その1

平成30年名古屋場所3日目、栃ノ心に外四つの体勢から吊り出される松鳳山

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大阪人が、あるいは関西人が、2人寄れば漫才になるって、よく言いますね。
話している中で、ここで突っ込めば笑いが取れる、というところを見逃さず、巧みに落として笑かす。
笑いは人生の潤滑油、生きるビタミン剤であります。
でも、この突っ込むタイミングというのが難しいんですねよ。
一つ間違えば相手の感情を害し、ケンカになりかねませんから。
大阪人はどうしてあんなに笑いを取るのが上手なんでしょうか。
力士と言えば、無口で、およそ機転の利かない人間のように思われがちですが、なかなかどうして。
大阪の人顔負けのおもろい会話ができる力士もいっぱいいます。
力士のユーモア感覚ってどんなものかって? 
まあ、聞いてください。笑ってください。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

明日はやめよう

力士はプライドが高い。たとえば、負け方によっても心が傷つく。
 
平成30(2018)年名古屋場所3日目、西小結の松鳳山は、この場所、大関になったばかりの栃ノ心にモロ差しになるが、両側からがっちり上手を取られる外四つの形で吊り出された。大相撲界ではこんなふうに高々と吊り出されることを「歳暮の鮭」と言うが、7月だったのでさしずめ「お中元の鮭」だった。
 
実はこの1場所前の夏場所も、松鳳山は、決まり手は寄り切りになったが、やはり栃ノ心に土俵際まで吊り上げられている。2場所連続の鮭状態だ。
 
このときの松鳳山の体重は141キロもあった。決して軽くはない。いかに栃ノ心が怪力の持ち主だったか、よく分かるが、負けた松鳳山にすればこんな屈辱はない。プリプリしながら支度部屋に引き揚げてくると、こう言って息まいた。

「ようし、こうなったら、オレも明日、(対戦相手を)吊り出してやる」
 
すると、そばにいた付け人が、やめた方がいい、と言わんばかりの顔で、

「明日(の相手)は逸ノ城関です」
 
と耳元でささやいた。ちなみに逸ノ城は幕内最重量で225キロもあった。とても吊れる相手ではない。松鳳山は急に表情を和らげると、小さな声でこうつぶやいた。

「まあ、明日はやめておこうか」
 
翌日、松鳳山は東関脇の逸ノ城を目の覚めるような出足を生かして快勝した。決まり手はやはり吊り出しではなく、寄り切りだった。

月刊『相撲』令和4年6月号掲載

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