アメリカンフットボールの世界最高峰・NFLは、2026年レギュラーシーズンWeek5のサーズデーナイトゲームが現地10月8日(日本時間9日)に開催され、タンパベイ・バッカニアーズ(4敗)がアウェーでダラス・カウボーイズ(2勝2敗)を破り、待望の今季初勝利を挙げた。主役となったのは、負傷したベイカー・メイフィールドに代わって先発したルーキーQBジェイロン・ダニエルズだった。
Week4サーズデーナイトゲーム
タンパベイ・バッカニアーズ○24-16●ダラス・カウボーイズ
2026年10月8日@ AT&T スタジアム(テキサス州)
アウェーの大舞台でも物怖じすることなくプレーUDFA(ドラフト外入団)のルーキー、ダニエルズは、NFL屈指の人気を誇る「アメリカズ・チーム」を相手に、木曜夜のプライムタイムの大舞台でも物怖じすることなくQBとしてプレーした。
そして、NFL.comによると、ダニエルズは、UDFAのルーキーとして先発出場し、カウボーイズを破った史上2人目のQBとなったのだった。最初の1人は、1987年のワシントン・レッドスキンズのQBエド・ラバートだ。
ラバートは、1987年のNFL選手ストライキの際に、レッドスキンズの代替チームの一員としてプレーしたQBだ。その時のカウボーイズ戦も、プライムタイムのマンデーナイトゲームだった。労働組合員ではないレッドスキンズの代替選手たちがダラスを下したこの試合が、映画『リプレイスメント』の着想源となった。ラバートが、ハリウッドスターのキアヌ・リーブスが演じた主人公QBシェーン・ファルコのモデルだったという。
ダニエルズの話に戻す。ルーキーQBはパス19/25で189ヤード、1TDを記録し、ランでも23ヤードを走ってオフェンスを牽引した。試合序盤には15プレー、73ヤード、10分58秒のロングドライブを遂行した。8本連続でパスを成功させ、最後はRBバッキー・アービングへの5ヤードTDパスで締めくくった。このドライブはチーム史に残る長時間ドライブの一つとなった。
低評価だったダニエルズ、ドラフト指名もされず今春のドラフト前のダニエルズの評価を振り返ってみた。
「ダニエルズの評価は難しい。身体能力は高いが、カンザス大学での6年間、シーズンを通して一貫したパフォーマンスを発揮したことは一度もなかった。彼のインターセプトの多くは、ローテーションしてくるセーフティを見逃したことに起因する。」
「怪我の履歴は無視できない。2022年の肩の故障、2023年を棒に振った背中の問題、そして2025年シーズン前の膝の手術。しかも、彼の体格はQBとしては小柄な部類で、耐久性への懸念がさらに強まる。」
「優秀なカレッジQBは、高額のNIL報酬を求めて転校する。同じ大学に6年間とどまったのは、強豪大学からの強い誘いがなかったということを示す。」
「NFLでは、プラクティス・スクワッドでの経験と、忍耐強い育成計画が、最も現実的な道筋となる。しかし、彼の身体能力とスキルセットが、NFLでは別のポジションの方が適しているかどうかも、真剣に検討すべきである。」
などなど、かなり辛辣だ。つまりドラフト指名から漏れたのは、今年5月時点の評価としては妥当だったのだ。
AP通信は、ダニエルズ本人の試合後のコメントを伝えている。
「6カ月前に、もし『君の初勝利は木曜夜の(Amazon)プライム・フットボールの試合になる』と言われたら、なんて答えていただろうな」
4日前の、NFL初先発ゲームでは、インターセプトを連発し、パッカーズに敗れた。
「自分でいつも言っているように、浮き沈み、悪いことも良いことも、あらゆる感情を(試合では)経験する。結局のところ、それが自分を成長させ、将来起こるあらゆる状況に備えることになるから」
「10年前のシンデレラ」プレスコットの苦闘一方の、カウボーイズQBダック・プレスコットは、10年前のシンデレラだった。2016年、決して高い評価とは言えないドラフト4巡指名で入団。プレシーズンゲームで正QBトニー・ロモが負傷したため、先発QBの座が回ってきた。開幕戦は1点差で惜敗。しかし第2週から8連勝した。以来10年、プレスコットは、優れたパス能力で、好成績を積み重ねてきた。一方で、勝負弱さ、特にポストシーズンを勝ち抜けないことを常に指摘されている。
この日のプレスコットは、試合開始のオフェンスこそスムーズにTD(RBジャボンテ・ウィリアムズのラン)を奪ったものの、その後は苦戦した。パントで終わるドライブが続き、前半には1FGを追加するにとどまった。
第3Q、カウボーイズのオフェンスは特に悪く、3回のドライブは、インターセプト、ファンブルロスト、4thダウンギャンブル失敗で終わった。第4Q途中まで10得点に抑え込まれ、第4Q残り5分で、プレスコットのTDパスが、WRジョージ・ピケンズにヒットして、ワンポゼッション差としたが、最後のオフェンスでは、エンドゾーンまで24ヤードと攻め込みながら、プレスコットが、この日2本目のインターセプトを喫し、勝負は決した。弾かれたボールをバッカニアーズに奪われるという、プレスコットには不運な面もあったが、インターセプトには変わりがなかった。
カウボーイズは、前週17キャッチのキャリアハイを記録したエースWR、CDラムも前半は1キャッチ4ヤードに封じられ、さらに大腿部を痛めて途中退場。攻撃のリズムは最後まで戻らなかった。
試合を決めたのは、241ヤード対50ヤードの「ランの差」ただ、この試合の勝敗を分けた最大の要因は、両チームのQBの差ではなく、ラン攻撃の圧倒的な差だった。タンパベイはチーム合計241ヤードを記録し、ダラス守備陣を終始支配したのに対し、カウボーイズのランは50ヤードにとどまり、オフェンス全体のリズムを失った。
バッカニアーズは3年目のRBバッキー・アービングが躍動した。キャリアハイとなる165ランヤードを稼ぎ、後半開始直後には72ヤードのビッグゲインを見せた。この一発で完全に試合の流れを引き寄せると、その直後にはWRエメカ・エブカの14ヤードTDランも生まれ、カウボーイズ守備陣はランへの対応に追われ続けた。QBダニエルズも随所で機動力を発揮し、ディフェンスの対応を分散した。
その結果、ダニエルズへのカウボーイズ守備のプレッシャーを、パス25回中7回に抑えることができた。バッカニアーズは平均6ヤードを大きく超える効率的なランオフェンスと、ミスのないパス攻撃で、ボール支配と試合のテンポを握った。

一方のカウボーイズは、最初のドライブでTDを奪って以降は、ランゲームが機能せずオフェンスがパスに偏った。QBプレスコットは度重なるブリッツへの対応を迫られ、ロングシチュエーションでのパス勝負が増加した。
特に第3Q以降はバッカニアーズのラン攻撃が時間を消費したことで、カウボーイズは追いかける展開を強いられ、結果として4thダウンの失敗や、ターンオーバーを重ね、攻撃の継続性を失った。自慢のオフェンスを十分に組み立てることができなかった。

バッカニアーズはオフェンス64プレー中39プレーで選択したランが241ヤードを進んで試合を支配し、RBアービングが攻撃の主エンジンとして機能。一方のカウボーイズはオフェンス56プレーで、ランはわずか13プレー50ヤード。地上戦で後れを取り、QBプレスコットに必要以上の負荷をかけた。その差が攻守両面に波及した。まさに「ランゲームの完勝」が、タンパベイに今季初勝利をもたらした一戦だった。