9月11~13日、新潟で開催される第89回日本学生対校選手権(日本インカレ)。男子では三段跳(13日)で連覇、走幅跳(11日)ではメダルを狙う二刀流ジャンパー・伊藤陸(近大高専5年)に注目しよう。
上写真=9月6日の競技会で手応えをつかみ、日本インカレに臨む
撮影/中野英聡(陸上競技マガジン)
昨年9月の日本インカレで、止まっていた時間が動き出した。男子三段跳を制した伊藤陸(近大高専)が16m34(+0.6)をマークして、1977年に中西正美(日体大)が樹立したU20日本記録を42年ぶりに5㎝更新。インカレ実施種目で最古の記録が塗り替えられた。
さらに、伊藤は今年2月に行われた室内の日本選手権でも、最終6回目に16m23を跳び、U20室内日本記録を更新。2016年リオ五輪代表の山下航平(ANA)、17年ロンドン世界選手権代表の山本凌雅(JAL)らを抑え、シニアで初の優勝を飾った。
大学に進む選択肢もあったなか、走幅跳と三段跳の選手だった近大高専の松尾大介先生から継続して指導を受けるため、昨春、高専4年に進級。3年時にはU18日本選手権で走幅跳、三段跳の二冠を獲得しているものの、昨シーズンが飛躍の1年になったことは間違いない。伊藤自身、「こんなにも順調に来たことに、自分でもびっくりしました」と振り返る。
2001年1月の早生まれで、今シーズンもU20資格者。7月にケニア・ナイロビで開催予定だったU20世界選手権を目標にしていたが、新型コロナウィルスの影響でついえた。伊藤は春からある程度は練習を積めていたそうだが、試合がなかった分、その成果を実感する場がなかった。
初戦は7月下旬の三重県選手権。「体がフワフワしていて、練習と変わらないような感じだった」と久しぶりの試合で感覚をつかめなかったが、2戦目となった9月6日の富士北麓ワールドトライアルでは好感触を得た。
先に行われた走幅跳は4回の試技で、7m68(+1.7)で2位。ほとんど時間を空けずに始まった三段跳は3回の試技で、15m95(-0.3)を跳んで3位で終えた。5日後に開幕する日本インカレに照準を合わせていたなか、「満点ではありませんが、合格点だと思います」と納得の表情を浮かべた。
初日に行われる走幅跳は昨年、自己新の7m82(-0.6)で4位。表彰台を目指し、19年ドーハ世界選手権8位の橋岡優輝(日大4年)らに挑戦する。連覇を狙う2日後の三段跳は、自身の持つU20日本記録の更新に期待が懸かる。
身長185.7㎝の長身で、外国人選手のような、大きくて迫力のある跳躍を理想とする伊藤。「見た目では分からないかもしれませんが、跳躍のときにしっかりと力を加えられるようになったし、スピード感が上がったと思います」と、一歩ずつ、理想に近づいている。この日本インカレで良い流れをつかみ、10月1日から同じ新潟で開催予定の日本選手権に向かっていく。
文/石井安里
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