京都選手権2日目(最終日)は前日に続き、場内マスク着用(競技中以外)や声援自粛、手指の消毒奨励など感染症対策が呼びかけられる“新時代の競技会”として開催された。大会記録は生まれなかったが、自己記録更新や明るい展望を描けた選手も少なくなかった。
岩本は、目標記録には届かなかったもの、自己ベストをマークした
撮影◎椛本結城
男子で印象深い走りを見せたのは、400mHの岩本武(Gloria)。50秒59の自己ベストをマークした。フィニッシュ後、「49秒台を出したかった」と悔しがったが、2年前までの苦悩を思うと、再起の階段を上り始めたといえる。
岩本は社会人2年目。順大入学時は日本陸連が認定するダイヤモンドアスリートの第1期認定選手だった。しかし、腰や脚のケガを繰り返し、特筆できる記録は残せなかった。本人は「空白の4年間でした」と言い、陸上競技をやめようとしていた。
そんなとき、「実の兄のように慕っています」(岩本)という安部孝駿(ヤマダ電機)から「故郷に戻って出直すこともひとつの選択。一緒に日の丸を背負おう」と言われたという。これが意欲再燃の源となり、大学卒業後、京都に戻って再始動。「安部さんと大舞台で一緒のレースを走ることが夢のひとつです」と前を向き始めた。
この日、前半はスムーズにスピードに乗った。後半14歩に切り替えるところで課題を残したが、「自分本来のダイナミックな動きになってきて、49秒台前半とか48秒台を感覚的にとらえることができました」と好感触を得たようだ。原石として期待されたポテンシャルが開花するシーズンになるか、注目したい。
女子400mHには、高校歴代3位、高2歴代最高の57秒77を持つ山本亜美(京都橘高3年)が登場。予選1分00秒03、決勝1分00秒14(優勝)だった。
山本の走りそのものは、4×400mRの4走で、先行する昨年インターハイ400m2位の吉岡里奈(立命館大1年)を抜いて逆転Vに貢献するなど、2日間を通して軽快だった。しかし400mHでは、1~3台目を16歩にしたことで、逆脚になる2台目でブレーキがかかってしまうなど、技術的な完成度が間に合わなかった。
「今季は高校新記録を目指していますが、16歩がまだ自分のものになっていません。技術も心も鍛えないといけないなと思います」。久々の実戦で把握できた自分の現状。この日は物足りない記録だったが、より高い目標に挑むための収穫になるに違いない。
文/中尾義理
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