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2019-08-10

[甲子園・記者コラム] 2年半のありったけをぶつけた140球

 8月10の第2試合、山梨学院(山梨)は延長戦の末、1対2で熊本工(熊本)に敗れた。しかし、山梨学院の先発・相澤利俊の攻守走にわたる活躍が試合を熱いものしたことは間違いない。

※上写真=攻守走でチームを引っ張る活躍を見せた山梨学院・相澤。すべてを出し切った試合後には晴れやかな笑顔を見せた
写真◎毛受亮介

粘り強くやっていれば必ずチャンスは来る

 背番号1を着けた三番打者のキャプテン・相澤利俊が獅子奮迅の活躍を見せた。

 第1打席で先制につながる安打を放ち、マウンドでは初回と2回に牽制で一塁走者を刺した。
 足の上げ方や首の動かし方を使い分け一塁牽制だけで3パターンを持つ。もちろん、どちらもあわよくばではなく狙って殺しにいったものだ。

「球速が出るピッチャーではないので、牽制やフィールディングを磨いてきました」

 5回一死一、二塁でピッチャーゴロを打たせると、捕球から送球までの動きの素早さは野手顔負け、併殺を奪いピンチを切り抜けた。

 ピッチングでも4回に2点を失った以外は熊本工のスコアボードに0を並べていく。
 初回に2点を先制して以降は援護点のない展開となったが、「粘り強くやっていれば必ずチャンスが来ると思って、絶対に何が何でも点をやらないと思って投げていました」。

 相澤の熱投により試合は2対2のまま延長戦へ突入した。

 7回途中に左足がつった。練習試合でも9イニングを投げたことはない。
 それでも延長10回に安打で出塁すると、次打者の打席でスタートを切り、レフト前への安打で三塁を陥れた。激走の後のマウンドでも2つの三振を奪い無失点。

「佐藤(裕士)がヒジをケガしていて、とても投げられる状態じゃなかったので、試合が始まる前から投げ切ってやろうと思って強い気持ちでマウンドに立ちました。今まで佐藤に助けてもらっていたので最後は自分が助けようという思いでした」

 タイブレーク目前の延長12回、140球目をバックスクリーンに運ばれ試合には敗れたが、「苦しい試合だったんですけど、チーム一丸となってやることをやってきたので、悔いはないです。2年半苦しい練習を乗り越えてきたので、それを信じて戦っていました。この仲間ともう少し一緒に野球をやりたかったんですけど、一生の宝物になる2年半でした」。

 投げて、打って、守って、走って。2年半のありったけをぶつけた140球だった。

文◎小中翔太(スポーツライター)

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