1964年の東京五輪で陸上競技中距離の800mと1500mで二冠を達成したピーター・スネル氏がアメリカ・テキサス州で亡くなった。80歳だった。
上の写真:2008年にランニング学会で講演するスネル博士。左はリディアード ・ファウンデーションの橋爪伸也さん
1960年のローマオリンピックの800m、決勝に進んだ選手の中で200mの持ちタイムが最も劣っていた選手がスネルだった。しかし、最後までペースを落とすことなく走り続け、金メダルを獲得した。当時、小国ニュージーランドの上下真っ黒のウエアを着た無名の選手の走りは、衝撃を持って報道された。
ニュージーランド選手団の主将として開会式では旗手も務めた1964年の東京オリンピックでは、800mは大会新記録で2連覇を達成した。さらに、1500mでも金メダルを獲得し2冠を達成した。
スネルを指導していたのが、ニュージーランドのアーサー・リディアード コーチ。持久力の土台の上に適切なトレーニングを行ってピークを高くするリディアード 式は、トレーニングの世界を変えたと言われる。800mと1500mの中距離が専門のスネルも、1週間に1度は32km走を行っていた。
有酸素運動の土台の上に、ヒルトレーニングなどを挟み、さらにスピードを上乗せするリディアード のピラミッドは、陸上競技でメダルを量産しただけでない。ラグビーのニュージーランド代表、オールブラックスの強化にも影響を与えたと言われている。
スネルは、引退後、34歳にしてアメリカの大学に進学、運動生理学で博士号を習得してテキサス大で運動生理学の研究を続けた。「学びの扉を叩くのに遅すぎる、と言うことはない」が持論だった。リディアード式トレーニングの科学的な裏付けとなるデータを数多く得た。
テキサス大の教授時代の2008年には、ランニング学会の招きに応じて来日し、日本国内で講演活動を行った。
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