
最初の取材は2019年4月16日夕方、17日昼に大阪・新地で行われた。場所は、これもまたアメフト部のOBが提供してくれた。こうした部分にも、彼らの絆の強さがうかがえた。
16日に2時間、そして17日の取材にいたっては3時間。こちらはへとへとだったが、監督は、
「もうええの? まだまだ喋れるで」
と意気軒高である。
いま思えば、へとへとになった理由が分かる。
監督の話は、自由自在に飛翔した。
これは引退会見でも感じたことだが、鳥内監督の言葉は「散文調」なのである。
用意された設計図があるわけではなく、その日、気になったことをきっかけに話が始まり、それが深遠な指導哲学へと広がっていく。
監督自身、こんなことを話していた。
「俺はディフェンス出身やろ。ディフェンスはリアクション芸やねん。漫才で言うたら、ツッコミやな」
監督の話は素早いリアクションを重ねていく即興劇のようで、テーマを選ばない。
当然、私もそれに合わせて話を進めていく。ただし、時間が経つにつれ、監督の呼吸が分かってきて、私も質問をぶつけられるようになってきた。特に常日頃、アメリカのスポーツで得た情報、知識についての解釈を求めると、必ず監督なりの解説をしてくれた。
本の中には、こんな単語が登場する。
エマニュエル・カント。
OODA LOOP。
監督は、教養の塊だった

監督室には大きなモニターが。練習のある平日の午後は毎日、ここで映像の分析をしていた
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