無敗のサウスポー同士の一戦は、ダウン応酬の熱戦の末、劇的な幕切れ--。19日、兵庫・神戸市立中央体育館で行われた空位の日本ユース・スーパーフライ級王座決定戦は、高山涼深(たかやま・すずみ、23歳/ワタナベ/2戦全勝2KO)が大橋哲朗(おおはし・てつろう、20歳/真正/8戦7勝2KO1分)を最終8回35秒、逆転KOで下した。

写真上=元王者の伯父・渡辺雄二さんに祝福される高山

大橋のカウンターでダウン
「一瞬、意識なくなった」

昨年の全日本スーパーフライ級新人王で、日本同級15位にランクされる大橋。駿台学園高校から法政大学にかけてアマチュア通算51戦35勝(10KO・RSC)16敗の戦績を残し、今年2月にプロデビューした高山。注目のホープ対決は、序盤から動いた。

ジワリと圧力をかける高山は初回、右のショートフックで幸先よく倒すが、続く2回には勢い込んで攻め入ったところをものの見事な左カウンターで捉えられ、キャンバスに転がった。

「あんなにキレイに倒されたのは初めて。一瞬、意識がなくなったぐらいだったので」

ここからペースはスピードにまさる大橋に傾く。柔らかなボディワーク、サイドへのフットワークに上下への回転の速いコンビネーションを駆使して、ヒット・アンド・アウェイのリズムを巧みに構築していった。

最後はパワーの違い見せる

劣勢の高山を奮い立たせたのは、中学生のころから手ほどきを受け、高校、大学の先輩でもある小口忠寛トレーナーの“気合い”だった。

「ずっと、顔を合わせて『このままだと負けるぞ!何をしに(東京から神戸に)来たんだ!!』と言ってくれて。あれで気合いが入りました。後悔しないように、もう倒されてもいいから行こうと」

懸命に食らいついていく高山は、5回に左ストレート、7回には右フックを効かせる。だが、大橋もよく踏みとどまり、後半は両者の激しいせめぎ合いが繰り広げられた。

それでも、じょじょにダメージをためこんだ大橋。最後はパワーの違いがものを言った。迎えた最終8回開始早々、高山は大橋を後退させると、右アッパーを効かせ、返しの左フックをフォロー。耐えきれずに大橋が倒れこむ。ここは辛うじて立ち上がった大橋だが、高山の詰めは厳しい。すかさず叩きつけられた左オーバーハンドで力なくキャンバスに這いつくばる。レフェリーのカウント途中、コーナーのタオルで試合は終わった。

伯父・渡辺雄二さんの声援も届く

ここまではタイ人、韓国人選手に連続KO勝ち。「今日がデビュー戦のつもりだった」という高山は「1戦目、2戦目とは全然違いました。大橋選手は強かった。プロの厳しさを思い知らされました」と苦闘を振り返った。7回終了時点で64対67が1者、65対66が2者のポイントビハインドをひっくり返した。

東京から応援に駆けつけ、試合開始から「スズ!アウェーだぞ!ぶっ倒せ!白黒ハッキリつけてこい!」と“攻め”の声援を送り続けていた伯父、渡辺雄二さんの声もしっかり耳に届いていたという。

「最後はスズのスタミナも切れかけていたと思うけれど、よく頑張ってくれた」と甥の劇的勝利に渡辺さんは相好を崩した。デビュー戦では、1990年代にその豪快な倒しっぷりと端正なマスクでスター選手となり、世界にも2度挑戦した“渡辺雄二の甥”として注目された高山だったが「高山涼深として有名になりたい」ときっぱり口にしていた。

画像: 「来年は日本チャンピオンになりたい」と高山

「来年は日本チャンピオンになりたい」と高山

高校国体チャンピオンからプロ転向し、B級トーナメントでデビュー。3連続KOで優勝を果たし、同時に日本ランク入りを決めた伯父と同じく3戦目で確実にしたランク入りは、その第一歩。

「この段階で、こういう経験をできたのはよかった。これを次に生かして、来年には日本チャンピオンになれるように頑張りたい」

表情を引き締め、さらに上へと真っ直ぐな視線を向けた。

取材・文◎船橋真二郎

おすすめ記事

ボクシング・マガジン 2019年11月号


This article is a sponsored article by
''.