WBSSバンタム級決勝(11月7日・さいたまスーパーアリーナ)の前日計量が6日、東京都内のホテルで行われ、WBAスーパーチャンピオンのノニト・ドネア(フィリピン)、WBA・IBF統一チャンピオンの井上尚弥(大橋)ともに53.5キロのバンタム級リミットをクリアした。また、同じリングで行われるWBC世界バンタム級王座統一戦、正規チャンピオンのノルディーヌ・ウバーリ(フランス)、尚弥の実弟で暫定チャンピオンの井上拓真(大橋)の両選手とも一発で計量をパスしている。

写真上=計量はともに一発でパス。あとは戦いのリングが待つだけ

 実際の試合並みにリングアナウンサーのコールに呼び出されて、最初に秤に乗ったのはドネアだった。つい1年前までフェザー級で戦っていただけに心配されたが、リミットを200グラム下回る53.3キロで合格。決められたことはしっかりと守る。それもレジェンドの誇り。健診結果では脈拍97とかなり高い値が出ていたが、己のプライドをかけて最後まで体重と戦い抜いた結果である。

 続いて登場した井上は53.5キロ。リミットちょうどの数字は、緻密に計算されたウェイトコントロールがきちんと成し遂げられたことを証明している。こちらも完全無欠に戦いの序曲を奏でてみせた。

「お互い最高の状態で、最高の試合ができる。今は最高の気持ちでいっぱいです」

 最高を連発した井上の目には、もうリングという戦場しか映っていない。

「有利のオッズは関係ありません。自分のことだけを考えています。ボクシングは何が起こるかわからないスポーツです。オッズの数字は頭から外して考えてきました」

 アナウンサーの問いに、そう答えた井上は、予定されていた囲み会見を取りやめて、そのまま帰途についた。大橋秀行会長は「最高の状態。ドネアと戦うことで気持ちも高ぶっています。こんなときは気持ちを引き締めたほうがいいと」と会見を取りやめた理由を記者に説明した。

 抜群の集中力こそが、井上尚弥というボクサーの最大の強み。彼の頭のなかには戦いしかない。まっすぐ帰ったのは賢明な判断だったと思う。

リミットのピタリと合わせてきた。ウェイトコントロールは完ぺきだった

「(優勝者に贈られる)モハメド・アリ・トロフィーを獲ることは、ベスト中のベストだと証明すること」

 計量直後のアナウンサーの問いかけに、そう答えたドネアはいささかの余裕を演出する。計量から30分後に短い取材に応じた。

「イノウエと顔を合わせたが、とくに何も感じなかった。リングで向き合って、初めて感じるものがあるだろう」

 対井上に“秘術”はないか。もしそういう策があったのなら、明かすはずはないのだが、記者の誰かがズバリと訊いた。

「作戦といはいえないけど、あるとすれば経験かな。いろんな引き出しを開けて、ときどきの戦い方を考える」

 もちろん、不利の予想など鼻にもかけない。

「他人の評価はあくまで他人の決めたもの。自分の信じること。それがすべてだ」

 戦いは明日夜。ときめきは止まらない。

WBC統一戦の両者も計量を無事一発でパス。ウバーリはリミットを200グラム切る53.5キロ、井上拓真は兄と同じく53.5キロのリミットいっぱいだった

文◎宮崎正博  
写真◎山口裕朗

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