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2020-10-29

松井大輔に聞く正しい「ファーストタッチ」の身につけ方[後編]

横浜FCで、カズ、中村俊輔とチームメイトになっている松井大輔



相手に取られない場所にボールを収められる

――間合いを身につけるには、どんな練習をすればいいでしょうか?

松井 1対1ですね。僕自身は、1対1をたくさんやったことで相手との間合いが身についた部分があると思います。どれくらいの強さでボールに触ればいいのか、自分のスピードはどれくらいなのか、どこにボールを置けば、次のプレーに移りやすいのか、といったことがわかっていきました。1対1をやって身につけられることは、たくさんあります。相手を抜ける感覚や、空間をどう使えばいいかといったことがわかってくると思います。

――松井選手のプレーを見ていると、1対1の場面では自信を持ってプレーしていることがうかがえます。それも練習を繰り返すことで培ったものなのですね。

松井 サッカーは11人対11人で行なうスポーツですが、試合では1対1の局面が多いものです。相手と競り合いながらボールに先に触り、そして、どこにボールを置くかで、次のプレーが決まります。1対1の練習をやると、ドリブルしながら自分の間合いを把握できることに加えて、どこにボールを置けばいいのかがわかるので、いろいろなプレーが身につくと思います。ファーストタッチで重要なのは、相手にボールを取られないこと。そのためには反復練習しかありません。相手に取られないところにボールをしっかりと収めることが、オンザボールのプレーのスタートだと思います。

――ところで、ファーストタッチが上手な選手を揃えれば、試合に勝てると思いますか?

松井 それは難しいと思います(笑)。ファーストタッチがうまくても、ドリブルが下手だったらボールを取られますし、キックが下手だとパスがつながりません。サッカーは総合的なものなので、バランスが必要です。ただし、ファーストタッチはプレーの始まりなので、ファーストタッチができないとサッカーが始まりません。ファーストタッチでボールが毎回跳ねていたら、相手にボールを取られてしまいます。

――海外の選手でファーストタッチがうまいと思うのは誰でしょうか?

松井 昨シーズンまでマンチェスター・シティに所属し、現在はレアル・ソシエダでプレーしているダビド・シルバはうまいと思います。小柄ですが、相手に取られないところにボールを置くのがうまいですよね。相手からすると、奪おうとして飛び込むことができません。それも空間把握能力の一つだと思います。

――今シーズンの横浜FCは13年ぶりにJ1で戦っています。スタジアムやテレビで松井選手のここに注目してほしいというプレーがあれば教えてください。

松井 僕は楽しくプレーすることが大事だと考えています。それを踏まえた上で挙げるなら、今シーズンはオーバーヘッドキックでゴールを決めたいと思っています。足でボールを浮かせて、オーバーヘッドキックをやるとかですね。それができるところにボールを持っていきたいです。オーバーヘッドキックは見ている人も喜んでくれると思うので、そういう場面をつくり出したいですね。

 
プロフィール
松井大輔(まつい・だいすけ)
1981年5月11日生まれ、京都府出身。2000年に鹿児島実業高校から京都サンガFCに加入。1年目から主力となり、02年度には天皇杯で優勝。04年にフランスのル・マンに移籍し、持ち味の創造性あふれるプレーで称賛された。その後、サンテチエンヌやグルノーブルなどでプレー。日本では14年から17年途中までジュビロ磐田で、18年から横浜FCでプレーしている。日本代表としては03年に国際Aマッチデビューを果たし、04年にはU-23日本代表としてアテネ・オリンピックに出場。10年の南アフリカ・ワールドカップでは全4試合に先発出場し、日本のベスト16進出に貢献した。175cm、66kg

サッカークリニック 11月号 | BBMスポーツ | ベースボール・マガジン社

別冊付録]ゲーム分析ノートブック 2020 FALL PART1:ワールドカップを経験した現役Jリーガーのファーストタッチ論 PART2:強豪高校の指導者が世界基準の視点で語るファーストタッチ PART3:実戦的な技術を身につける上で静岡学園中学校が大切にするもの PART4:将来の活躍を目指して小中学生を育成する指導者2人の技術向上策 谷元希(西宮タイガース代表) ×大路照彦(市立西宮高校監督兼西宮タイガースCOD) PART5:Jリーグで活躍したブラジル人アタッカーのファーストタッチ PART6:日本屈指の理論派指導者・風間八宏に聞く「止める」と「運ぶ」 特別インタビュー [SPECIAL INTERVIEW] 女子中学生年代をサポートする「HER TEAM」プロジェクト 「高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグ2020」開幕リポート 「高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグ2020」試合日程2020.10.10~2020.12.13 バルサアカデミーキャンプの誌上再現リポート Vol.4(最終回) ジュニアからジュニアユースへ「3人のジュニア指導者と考える『ジュニアユース年代へのうまい移行』」 ジュニア年代クラブ訪問(第94回)Grant FC(東京都) タウンクラブの指導者が実践する「メンタル」アプローチVOL.1「小学生」前編 スペインで活躍する日本人指導者が聞く「ランデルコーチとの一問一答で考えるスペイン流サッカー講座」VOL.1 今月のテーマ:ファーストタッチ バックナンバー&次号予告&編集後記 出し手と受け手のほかに3人目の選手がボールに関わることを指す攻撃戦術。 うまく決まれば、相手の守備を崩すのに大きな力を発揮する。 Jクラブの監督に「3人目の動き」をより良くする方法を聞くほか、 小学生、中学生、高校生、それぞれに対して求めることのできる 「3人目の動き」やその指導方法の違いなどを各カテゴリーの指導者に聞いていく。 下平隆宏(横浜FC監督)& 風間八宏(前名古屋グランパス監督) ◎ 小林伸二(ギラヴァンツ北九州) による「選手の才能の伸ばし方」 ◎ 「プレーコンサルティング型キャンプ」の誌上再現リポート

取材・構成/鈴木智之

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