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2020-11-12

選手権初出場! 福島の絶対王者・尚志を破った学法石川の守備改革[後編]

福島県の学法石川高校で2006年から指揮を執る稲田正信監督が初の全国大会出場に導いた

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グループやチームをベースに、「個」で奪う

――今年度(2019年度)はプリンスリーグ東北に復帰しました。


稲田 2015年度のプリンスリーグ東北のときのようにずっと守るのではなく、より攻撃的に、そして意図的にボールを奪いに行くことに挑戦しています。しかし、現状の力関係では押し込まれる時間もあります。強いチームとの試合は厳しい戦いになりますが、自分たちのやっていることを信じてプレーし、失点を少なくできるように全員でやり切るようにしています。目標は残留です。

厳しいリーグではありますが、週に1度の試合で大きな経験を得ていると確信しています。個も強くなっています。ポジショニングのわずかなミスや緩んだアプローチが失点につながる試合が続きますが、そうした試合の中でも意図的にボールを奪うことを続ければ、いろいろな相手に対応できるようになると手応えも感じています。

――個で奪えるようになったとき、全国大会出場が見えてきそうです。

稲田 グループやチームというベースの上に「個で奪える」を加えていきたいと考えています。

映像を確認すると、学石の良い時間帯にはスリーラインが良い距離を保てています。ボールに対していろいろな方向から関われるポジションを維持するのを理想としています。実際には、運動量が落ち、しかも声も出なくなる後半に入ると維持できないのですが……。そういう時間帯になったときは、中をしっかりと守り、外で回されるのは仕方ないと冷静になってほしいのですが、真面目に頑張って前から前からとなってしまうのが課題です。この点も判断の問題と言えるでしょう。

攻撃も改善したいと思います。例えば強豪チームとの試合で、ボールを奪ってカウンター・アタックを繰り出すのもいいのですが、ボールをしっかりと保持して相手の攻撃を減らして守備の負担を軽減したいのです。そのためにはボールの保持時間を増やさなければなりません。奪ったボールを簡単に奪い返されないようにするのを目指しています。守備にはリアクションの部分があり、相手に合わせなければいけない時間が続くのは疲労につながります。選手たちも頑張れるようになりましたし、粘り強く泥臭い守備を伝統にしたい気持ちもあります。しかし、人工芝グラウンドなどの良い環境を手にしたこともあり、ボール保持率のアップにも取り組んでいくつもりです。

プロフィール



稲田正信(いなだ・まさのぶ)/1977年7月30日生まれ、大阪府出身。高槻南高校、大阪体育大学でプレー。大学卒業後、大阪の高校や大学でコーチを務め、2006年から学法石川高校(福島県)の監督に就任、現在に至る。守備の原理原則を浸透させ、近年はインターハイや全国高校サッカー選手権大会の福島県予選で何度も決勝進出を果たし、全国大会の常連である尚志高校と好試合を演じていた。2020年11月、初めての全国の舞台となる選手権出場を手にした

サッカークリニック 12月号 | BBMスポーツ | ベースボール・マガジン社

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取材・構成/小林健志

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