close

2021-02-11

【プロレス】坂口征夫、DDTユニバーサル戦へ“勝ったら封印”を宣言

DDTユニバーサル王座挑戦に意気込む坂口征夫

プロレスには、一見すると水と油のような選手同士ながら、闘いを重ねることで試合の高度を上げていく例がある。2月14日(日)、DDT神奈川・カルッツかわさき大会で、DDTユニバーサル王座を懸けて闘う王者・上野勇希と、挑戦者・坂口征夫がまさにそんな関係だ。上野はDDTサウナ部というプロレスにあっては珍しい“部活動的ユニット”の一員。片や坂口は、樋口和貞&赤井沙希との3人から成る殺気立った硬派チーム“イラプション”を結成している。

 年齢も王者が25歳、挑戦者が47歳と倍近くの差があり、さらに今回の王座戦は昨年DDTにできたばかりの新設王座ユニバーサルタイトルを持つ若き上野に、団体最高峰ベルトたるKO―D無差別級を過去に巻いた経験がある坂口が挑戦者となる構図。1月に上野が挑戦者を坂口に指名する形でタイトルマッチは決まった。

 キャラクターの面では対照的な上野と坂口だが、たとえば上野に“殺気”がないかというとそれは違う。昨年の上野はある時期から、坂口を前にした時、感情ムキ出しで食らいつくようになった。とくに10月25日の東京・後楽園ホール大会ではDDT史上初となる、KO―Dタッグ&6人タッグ王座戦をセミ&メインで連続開催。そこでも上野と坂口は2試合連続でぶつかり、熱闘を展開していた。

 感情ムキ出しで世代関係なくぶつかり合ってきた間柄ゆえ、公式の会見などでは上野に隙を見せず常に殺気を崩さぬ坂口だが、じっくり話を聞いてみるとまた違う本音が飛び出した。

「正直な気持ちを言うと、アイツの前では絶対に言いたくないけど、やっぱり近い将来、KO―D(無差別)を巻くような選手になるだろうなと思うし、DDTの顔になる選手になっていくんだろうな…というのが自分の率直な意見。去年はずっと闘い続けて、あの10月のダブルタイトル戦。やられてもやられても向かってくる。俺が影の部分だったら、アイツは陽の部分。そういうのをすごく実感した」

 明るいキャラクターの底に沸々と流れる上野の“負けず嫌い”を、坂口はすでに発見している。王者から挑戦者に指名されたのは「なめられたもんだな」との思いはあるが、その闘いに充実があるのは言葉からも明らか。ただ、内心そうは思っていても、相手の前ではまず評価していることは口にしないのがプロレスラーという人種。まして坂口にとっては、健在を示すにはこれ以上ない舞台である。

「だからといって、俺も“じゃあ頑張れよ”と言うつもりもないし、リングに立ち続ける以上は壁になってやらないといけない。そういった部分では強いのも認めるし、華があるのも認めるけど、まだまだな部分も当然ある。アイツは自分みたいな闘い方は苦手だと思うので、そういう部分で“こういう闘いをする人間もいるんだよ”というのを教え込んで『オマエはまだまだ俺の足元にも及ばないんだよ』というのを見せつけますよ」

 事実、坂口は決戦に至る過程にあった数度の激突で、それを証明した。何度もスリーパーで失神させたり、強烈な右ハイキックでバッタリと倒すこともあった。上野にも相手の土俵で闘おうとする王者としての器量が感じられるが、総合格闘技がバックボーンにある坂口ゆえ打撃や関節技を中心とした闘いはお手のもの。一方で、それこそが上野に足りない部分でもある。

「スリーパー? 宣言しておきます。(2・14川崎でも)必ず出します。ただ、出されるとわかっていても決まるのが“必殺技”。ダウンもそうですけど、一回(失神して)落ちると癖がつくんですよ。脳が“これ以上やったらダメだよ”と勝手に(意識を)遮断してしまうので、そういう癖をずっと前哨戦で植え付けてきた。アイツは普通の人より数倍落ちやすい体になっているだろうから、落とすことに関してはあまり難しい作業ではない。何度も何度も去年から俺に落とされてるから、脳が“危ない”と締めてしまうことに、アイツは気づいていないですから」

 このあたりがプロレスの奥深いところ。普段プロレスの試合でスリーパーホールドは序盤に仕掛ける選手が多く、必殺技というよりはフィニッシュに至る過程で「相手にダメージを与える技」として使用される場合がほとんど。だが、今回は違う。坂口が長い時間をかけ理詰めで追い込んできたことにより、スリーパーが相手にもたらす意味合いが変質した。決まれば、落ちる。

 上野は青木真也に師事して防御に重点を置いた公開特訓をおこなったが、坂口は「培ってきた年数も違うので、オマエの一日二日の付け焼刃ごときじゃ、来るとわかってても(防御は)無理」とキッパリ。そして坂口はKO―D無差別に加えてできたユニバーサル王座自体に関しても“勝ったら封印”を提言した。

「(試合後のコメントで)何回か言ってるけど、ユニバーサルの意味がまったくわからない。ほかの団体もシングルのベルトが2つも3つもあったりするけど“なんなの?”と思う。シングルはその団体の顔のベルトで、体重別でヘビーとジュニアのベルトがあるのは構わないけど、なぜ(DDTには)無差別で2個もあるのか。もともと作る意味がわからなかったし、作る必要があったのかな。だから俺が取ることで“いらないんじゃないの?”という形を取りたい。つまり封印ですね。お客さんも推しの選手がベルトを持っていれば、それはかっこいい…ぐらいの“ファッション”ですよね。ファッションのベルトと変わらない。強さではないです。強さというのはKO―Dシングルなので」

 リングの上では理詰めのスリーパーで勝利に王手。さらに勝ってのベルト封印を宣言と、坂口はタイトルマッチを前に動いた。

 2・23名古屋国際会議場では樋口と保持するKO―Dタッグ防衛戦(相手は竹下幸之介&MAO)も控えている。川崎&名古屋の結果次第では再びKO―D無差別が視界に入ってきてもおかしくない状況。2・14川崎で自身の年齢と闘いベルトに挑むのは秋山準だけではない。坂口征夫もまた、自己との闘いをリングに投影する。

<週刊プロレス・奈良知之>
タグ:

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事