照ノ富士(寄り切り)御嶽海3日目を終わって幕内の全勝力士は照ノ富士、髙安、御嶽海、阿武咲、玉鷲、隠岐の海、千代大龍の7人となった。しかし、4日目は全勝力士が次々と敗れ、結びの照ノ富士-御嶽海戦の勝者が単独トップに立つことになってしまった。
当然、この相撲が今日の一番なのだが、幕内前半戦で疑問に思う判定があったので、少し触れたい。隠岐の海が千代翔馬の引きに乗じて一気に押し出し、木村元基の軍配は隠岐の海に上がったのだが、物言いがついて行司差し違いとなった。
千代翔馬は完全に負けていたのに左上手を離さず、隠岐の海も土俵下に落ちた。このとき隠岐の海の手つきが早かったと負けにされたのだ。隠岐の海が手をつく前に千代翔馬の体はなかった。相撲をある程度見ている人なら8割方、隠岐の海の勝ちと見るだろう。
そもそも、押されたり寄られたりして負ける場合、相手にしがみついていたら重ね餅で落ちて危ないから廻しを離せと教わるはずである。隠岐の海は気の毒だった。
で、結びの一番。御嶽海は照ノ富士に3連敗中で、まったく相撲にならず不甲斐ない負け方をしていたので、この日は気合が入っていた。立ち合いの当たり、踏み込みもよかった。しかし、照ノ富士が踏み込みよく弾き返すと、御嶽海は差してしまった。モロ差しの体勢も照ノ富士に両上手を取られて引きつけられると身動きが取れず寄り切られた。これで全勝は照ノ富士だけで、早くも単独トップに立った。
敗れた御嶽海は、「立ち合いで一発起こしてハズで持っていきたかったんですけど、自ら中に入ってしまった。ああなると、何もできないッス」とガックリ。力の差を見せつけられてしまったが、「今日も悪い相撲じゃないので、前に出る相撲を取っていきたい」と切り替えていた。
単独トップに立った照ノ富士は、リモート取材は拒否。花道を引き揚げるとき、NHKアナウンサーの問いには「よかったです」とひと言。集中モードに入ったようだ。
大関以下平幕上位まで力の差はそれほどないが、照ノ富士だけが抜けているようにも見える。しかし、照ノ富士にも苦手力士がおり、ヒザに爆弾を抱えている。照ノ富士の独走となるのか、大混戦となるのか、まだ先は読めない。
文=山口亜土