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2021-05-23

棒高跳高校記録保持者の古澤一生。「体が小さくてもやれることを証明したい」。その視線は世界へ

古澤は初出場の関東インカレ男子1部棒高跳で3位入賞を果たした(写真/中野英聡・陸上競技マガジン)

関東インカレ3日目の男子1部棒高跳に、5m51の高校記録保持者である古澤一生(筑波大1年)が登場。
腰痛を抱え、万全の状態ではないなか5m20で3位入賞。
中学、高校と各年代で歴代記録を塗り替えてきた大器に、今後4年間で見据える目標について語ってもらった。

 「すべて自分の責任」

 期待のルーキーは、どこか安堵の表情を浮かべていた。初めての対校戦、筑波大の代表として、現時点の自身が出来得るパフォーマンスで3位入賞を果たし、きっちり6点を獲得できたからだろう。

「5m20という結果は良くなかったですが、この大会はしっかり順位をとることが大切です。その点では良かったと思います」

 5月9日のREADY STEADY TOKYO(東京オリンピックテストイベント)に続き、今季2戦目。昨年末に腰を痛めた影響で全助走ができず、5m15を跳んだテストイベント時と同様、14歩の中助走で臨んだ。

 試技を始めた5m00を1回で成功。5m10、15をパスすると、6名に絞られた5m20を2回失敗。3回目は中助走ながらスピードに乗った助走で見事にクリア、思わず右拳を突き上げた。1回目で使用した15.7フィート、170ポンドのポールを2回目で175ポンドのポールに変更。まだ柔らかさを感じていたが、3回目でアップライトを微調整して成功試技につなげるなど、歴戦の修正能力を発揮した。

 大崎洋介(日体大3年)、尾崎駿翔(日体大4年)が5m30を成功した後、5m35に挑んだもののクリアできず。最終的に5m50の大崎、5m40の尾崎に次ぐ3位で初の関東インカレを終えた。

「全助走ができないまま、関東インカレに臨んだのは自分の責任です」

 自己記録の5m51に遠く及ばない結果にも一切の言い訳はなかった。


腰の負担を考慮し、制限のあるなか5m20を3回目で成功させた(写真/中野英聡・陸上競技マガジン)

再び世界の舞台で活躍を


 小学4年生のとき、地元・群馬のベルアスレチックスで棒高跳を始め、全日本中学校選手権連覇、前橋育英高(群馬)2年時に全国高校総体を制した。5m05の中学記録、5m51の高校記録を保持するなど、輝かしい経歴を誇る。高校では部活動と並行し、跳躍練習を棒高跳専用室内施設のあるベルアスレチックスで行ってきたが、筑波大進学と共に独り立ちすることになった。

「高校まではコーチに頼り切りでしたが、これからは自分でもいろいろと考えながらやっていきます。それが自分の力になると思っています」

 これまでの感覚頼りだった跳躍を、自身の動きをとらえ直し、理解した上で実践していく。その研究ができるのが志望理由の一つだったという。

 その先に見据えるのが、大学4年時に迎える2024年パリ五輪になる。

「参加標準記録が5m80だと思うので、80を跳んで出場したいです」

 途上には山本聖途(中京大、現・トヨタ自動車)が保持する5m75の学生記録があり、日本記録の5m83にどこまで迫れるかを、この4年間で追い求めていくことになる。

 当面の目標は、今年8月にケニア・ナイロビで開催予定のU20世界選手権出場だ。すでに参加標準記録は突破しており、代表選考会となる日本選手権で結果を残すことに注力していく。高校1年時にアルゼンチンで開催されたユースオリンピックで銀メダルを獲得して以来、世界大会への思いは強い。24年パリ五輪につなげる意味でも、代表の座をつかみ、ナイロビで同世代のライバルたちと真っ向勝負を演じるつもりだ。

「ユースオリンピックでは、出場選手中で一番小柄でしたけど2番になれました。体が小さくてもやれるということを証明したいんです」

 身長170センチの古澤。中学時代から目標の選手として挙げていた江島雅紀(富士通)のダイナミックな跳躍とは違うスタイル、すなわちスピードを磨くことでさらなる高みを目指す。

 江島の背中を追うように記録を伸ばしてきた自身のように、これからの4年間が後に続くボウルターの新たな道しるべになっていく。古澤の決意は、その重責を十分に認識しているものだ。

文/石井 亮

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