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2021-05-26

【プロレス】桜庭和志が語る対杉浦貴「ジャンボ鶴田さんのジャンピング・ニーバットやジャイアント馬場さんのココナッツクラッシュもやれるならやりたい」

“IQレスラー”桜庭和志がNOAH「三沢光晴メモリアル2021 in 後楽園ホール ~Forever in our hearts~」5・31後楽園ホール大会で、杉浦貴のGHCナショナル王座に挑戦する。5月25日の調印式では同門対決ということでノンアルコールビールで乾杯。王者が「(試合は)かみ合わない」と言及する場面もあったが、全体的に和やかに互いに心境を語っていた。

 桜庭は2019年9月よりNOAHに杉浦率いる杉浦軍の一員としてセミレギュラー参戦。昨年はシングルリーグ戦「N-1 VICTORY 2020」にも出場し、10月には杉浦とGHCタッグ王座を奪取。「プロレス大賞」最優秀タッグチーム賞も受賞した。常に自然体でプロレスを楽しみ、総合格闘美のテクニックを武器に魅力的な闘いを繰り広げている。

 そんな桜庭に杉浦とのGHCナショナル選手権に向けてインタビューを敢行。決戦に対する意気込みを技術論を中心に聞いた。

――これまでパートナーとして濃密に関わってきましたが、桜庭さんにとって杉浦選手はどんな存在ですか?

桜庭「昔からの練習仲間で今は杉浦軍の隊長ですね。隊長って言ってもあんまり言うこと聞かないですけど(笑)」

――昔、練習はどのぐらい一緒にやっていたのですか?

桜庭「ずっと一緒にやってたわけじゃなくて、たまにポツリポツリって感じだった。レスリング関係で共通の知人もいるけど、特別な存在っていうのはないですね」

――タッグを組むようになって、あらためて気づいたことはありますか?

桜庭「特にないかな…いつも眉間にしわが寄ってる(笑)。何か怒ってるんですか!?って」

――NOAH5・15後楽園大会の前哨戦で肌を合わせましたが、対戦相手としての杉浦選手はいかがでしたか?

桜庭「どんな試合だったか忘れちゃいました(笑)。まぁ、基本はスカしますよね」

――杉浦選手はロープに押し込んだ際に放った張り手をガードされたことを驚いていました。

桜庭「だって、張り手は受けたくないからガードするじゃないですか。藤田(和之)と怪獣対決やってたじゃないですか(NOAH4・29名古屋のGHCナショナル選手権)。あんなの見た日には受けたくないでしょ(笑)」

――タイトルマッチでもスカしますか?

桜庭「はい」

――グラウンドで勝負?

桜庭「そうですね。自分の得意な分野に引き込んでって感じですね」

――昨年10月にグラップリングイベント「クインテット」でも対戦しています。杉浦選手の総合格闘技の技術はいかがでしたか?

桜庭「いい感じだと思います。力も強いし、脇が固い。地の強さはありますね。こっちは力の入らない方向に移動して、そこをキュッとやるぐらいしかないんじゃないですかね」

――杉浦選手は桜庭さんとのグラウンドの攻防について「逃げて、逃げて、逃げた先に罠があるみたいな感じ」と表現していました。

桜庭「まさにその通りです。いつものボクのやり方です」

――相手が強い杉浦選手だからこそ、桜庭さんもやりがいがあるのではないでしょうか?

桜庭「そうですね。いろいろ罠をしかけて、そこを100%通らせる。じゃないと罠にならない。今、練習してても『こっちに来ると思いました』とか言われるんだけど『いやいや、それはフリだよ』と。エサをまいておかないと乗ってこないので」

――それが前哨戦ではうまくはまってタッグながらも勝利を収めたということですね。

桜庭「あとはグレコローマンの全日本チャンピオンだったので、上半身は強い。ボクもレスリングをやってましたが、フリースタイルだったんで。(杉浦が)扱いづらい足の方を狙うしかないかなと。上半身もはまっちゃえばいいんですけど、はめるまでが…脇が固いから首や腕を取るのがけっこう難しいんで」

――足ならば…。

桜庭「つま先持っちゃえばいいんです。アマチュア・レスリングだとつま先を持つのは反則なんですけど、プロレスとか総合格闘技では反則じゃない。末端を持っちゃえば、いくら力がある人でも力が入らなくなるんで。たぶん足系は苦手だと思いますよ。差しとかはメチャ強いと思いますけど」

――レスリングでもスタンドの攻防だと…。

桜庭「やっぱ押されますね。タックルにしても低いタックルなら苦手だと思いますね」

――そういう部分をうまく使いながら攻めないといけない。

桜庭「体重差もありますし」

――前哨戦で非常に印象的だったのがフェースロックです。

桜庭「アレはボク、練習でもけっこう使います。若い子相手に嫌がらせで顔にヒジ立てたりもするんで。人ってアゴが上がるとほかが動かなくなるんで。顔を意識させて、腕とか足にいったりとか」

――ほおの急所を締めているのですか?

桜庭「それもあります。あと指に巻いてるテーピングを肌にこすりつけてるんです。なにげに痛い(笑)。本当は手首までテーピング巻けばいいんだけど、手首にテーピングしてると相手につかまれたら取れないんですよ。たまに手のひらにもテーピングします。ザラザラしてるところでこすって、決定打にならないけど、すりキズってメチャクチャ気になってくるんです」

――フェースロック後にもジワジワ効いてくるのですね?

桜庭「はい。手足への意識が薄くなってくる。その時に顔にいくふりをして、腕にいくとか。小技ですね。お客さんはわからないかもしれない」

――そういう小技も布石として重要な攻撃になりますね。

桜庭「はい」

――NOAHでフェースロックと言えば、三沢光晴さんです。5・31後楽園大会も三沢さんのメモリアル大会ですが、特別な意識はないですか?

桜庭「三沢さんとは会ったことがないですが、NOAHという団体としては大切な日。そういうものに対しては試合で応えたい。でも、それはボクにとって正面からぶつかり合うってことではないです。ボクにはボクのスタイルがあるので、スカして、スカして、三沢さんのメモリアル大会なのでいい試合をしたいです」

――NOAHのリングではフィストドロップなども使っていますね。

桜庭「フィストドロップは昔ロード・ウォリアーズを見てて『ホークのフィストドロップ、カッコイイな』って思ってたんです(笑)。もうちょっと足をそろえないとダメですね」

――ほかに今、やってみたいことはありますか?

桜庭「鶴田さんのジャンピング・ニーバット。鶴田さんはでかいから効くだろうけど、ボクのは効かないと思います」

――中央大学の先輩ですね。

桜庭「鶴田さんも会ったことないですね。あとココナッツクラッシュ。馬場さんだからココナッツ割れるだろうけど、ボクだったら低すぎて割れない(笑)」

――全日本プロレス系統ばかりですね。

桜庭「もともとタイガーマスクが好きで、そこからUWFにはまったんですけど(笑)」

――ジャイアント馬場、ジャンボ鶴田、ロード・ウォリアーズと出てきたので(笑)。

桜庭「ウォリアーズが来た時から全日本を見始めました。(試合で)やれるなら、やりたいですよね。そういう隙があれば。ボクは投げ系がそんなに得意じゃないんで」

――NOAHで闘っているとマサ北宮選手のセントーンを自分のものにしたりと対戦相手の技にも挑戦しています

桜庭「試合で見てて『オレもやりたいな』と思っちゃうんですよ。でも、軽いから威力がない(笑)」

――だんだんやっていくうちに桜庭さんの技になりつつあります。

桜庭「次はオリンピック予選スラム、盗もうかな…でも、あんまり見てないから盗めないかな。タッグでやって、エプロンから見るから『やろうかな』って思うんです」

――中嶋勝彦選手のコーナー踏みつけも拝借しました。

桜庭「アレもエプロンで見て『これ、パクッちゃおう』って(笑)。そしたら、ケンドー・カシンまでやり始めて『アレ!?』って」

――NOAHでの桜庭さんは型にはまっていませんね(笑)。

桜庭「やりたいことをやるし、できないことはできないし。トップロープからのブレーンバスターとかできないです。杉浦さんがやるじゃないですか。ボクなんか裸足だから、ロープで滑って自爆すると思います(苦笑)」

――杉浦選手とのシングルになれば、やられる可能性が高いです。

桜庭「そういえば、この前(5・15後楽園)やられそうになったな。簡単に上がっちゃう。危ないって!って言ってるのに…」

――杉浦選手は打撃戦も得意としています。

桜庭「途中でイラッときたら、やり返すかもしれないし」

――総合の試合でも意地を張って打撃勝負ということも何度かありましたね。

桜庭「それで逆にガーン!ってやられちゃう時もありますし。それはリングに上がってみて、ですね。リングに上がったボクと今のボクはまるっきり違う人間なので」

――NOAHでもさまざまな関節技でギブアップを奪っていますね。

桜庭「クインテットで外国人選手がいろんな“足関”をやるんですよ。それで学習しました」

――NOAH5・15後楽園で杉浦選手からギブアップを奪ったのは変型のアキレス腱固めでした。

桜庭「アレはサドルロックっていうのがあるんです。(相手の)左足に両足を絡めて、左足をヒールホールドか、深く入ったらヒザ十字固めにもっていくんですけど、それを相手が嫌がって必ず反対の右足が出てくるんです。その右足をつかまえてのアキレス腱固めでしたね。最近の外国人はそういうパターンが多いです」

――何かを誘い水にして、別の技で決める。

桜庭「外から掛けるのか、内から掛けるのかでもちょっと変わってくるし」

――4・29名古屋ではサソリ固めで井上雅央選手からギブアップ勝ちを収めていましたが?

桜庭「(グラウンドで足関節を攻めている)途中で『これ、回ったら逆片エビ固めみたいになるなんじゃないかな』と思って(笑)。で、回ってみたら『あっ、サソリ固めだ!』って。最終的な形はサソリ固めですけど、入り方はまったくサソリ固めじゃないです」

――もちろんNOAHで見せている関節技はごく一部ですよね?

桜庭「今も週3ぐらい練習してるので。頭の中で人って『こうやったら、こっちに動くな』とか何となくわかる。そういうのを考えて。別にパターンが決まってるわけじゃなくて、そこに足があるから足を取りにいくだけ」

――いつも非常に勉強になります。昨年5月にはデラヒーバ・フットロックで稲村愛輝選手からギブアップを奪いました。

桜庭「アレもクレイグ・ジョーンズってヤツが秒殺で決めてて、どうやるのか聞いてやってみたら、やっぱり決まるんですよ。わからない人にはかかると思います。わかる人にはバレちゃうんですよ」

――格闘技もさまざまな技術がありますね。

桜庭「プロレスはシューズを履いて、基本はレスリングなんで。グラップリングって柔術とかレスリングとか全部混ざったもの。決めちゃった者が正解。決めてしまえば問題ない。そこにプロレスでは3カウントってルールがあるんで。あっ、そっか!っていうのもあるし」

――桜庭さんがプロレスのリングで負ける時はだいたい下から攻めている時に3カウントを奪われます。

桜庭「3カウントのことを考えない練習ばかりしてるんで。そこはしょうがないですけど、レフェリーにはもうちょっと先に大声で教えてほしいですね。ワン!ツー!!をもっと大きな声で言ってくれれば、3カウントがルールにあるんだって気づくので(笑)」

――昨年12月、拳王選手のGHCナショナル王座に挑戦した際には右足を決めながらもブリッジされてフォールを奪われました。

桜庭「アレは自分の足で深くロックしてたんで、どうしようもないです。深くロックしていなければ、どうにかなったけど」

――拳王選手は捨て身のフォールだったわけですね。

桜庭「逆にクインテットでやったカーフスライサーっていうのがあるんですけど、決まったと思ったら、隙間が大きくて決まってなかった。相手も痛そうな顔をしてたんですけど、立ち上がられて何とかチョークを決められてギブアップした。その時も自分の絡めた足に片腕も絡まってて動けない状態だったこともあります。ピッタリはまれば、関節技っていいんですけど、その前に動作されると難しい場合もありますね」

――3カウントルールとの闘いが勝敗の分かれ目ですね。

桜庭「レスリングでフォールされる感覚ですよね。レスリングは1秒じゃないですか。なんかアレって負けた気がしないんですよ。ポイントでグチャグチャにやられると負けた気がするんですけど。ボクらがレスリングをやってる時、テクニカルフォールは12点だった。さすがに12点だとグチャグチャにされてるんで、そりゃ負けたって感じるんですけど。フォールは一瞬だけペタッて肩がついたら負け。ただプロレスの3カウントは長いじゃないですか。だから、そこらへんは頭に入れて…というよりか、レフェリーにしっかり大きな声を出して教えろ!って(苦笑)。そこだけ気をつけて、がんばります」

 NOAH5・31後楽園ホール大会はメインイベントの武藤敬司&田中将斗vs丸藤正道&船木誠勝ほか全7試合予定。オープニングマッチの試合開始は午後6時。インターネットTV「ABEMA」にて無料生中継される。
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