ドイツなど欧州の3カ国を拠点にしたアメリカンフットボールの新しいプロリーグ、ELF(ヨーロピアン リーグ オブ フットボール)が6月19日に開幕した。開幕週第2日の6月20日には、昨年の日本代表主将、WR近江克仁(IBM)が加入したライプチヒ・キングスが、ベルリン・サンダーに快勝した。
近江は、第2クオーターに、エースQBで昨年のXリーグMVP、マイケル・バードソン(元富士通)からパスをキャッチしタッチダウン(TD)を決めた。
ライプチヒ・キングス○37-27●ベルリン・サンダー(2021年6月20日、ベルリン) 第1Q、サンダーは、QBカルビン・スティットが、WRティノ・ンドンゴに84ヤードのパスTDを決めて先制。しかし、キングスは、このTDのエクストラポイントでボールを奪うと、エンドゾーンまでリターン、6-2とした。この後、サンダーは、キングスQBバードソンのパスをインターセプトするとフィールドゴールに結びつけ、9-2とした。
ここからキングスは反撃。バードソンが第1Q終盤に、WRティモシー・ナトルにTDパスを決めて同点に。バードソンは、さらに第2Qナトルと近江に連続でTDパスを決めて2ポゼッション差とした。その後両チーム1TDずつを加えて、キングスが29-15とリードして折り返した。
第3Q、キングスはセーフティーでリードを16点差とすると、バードソンが4本目のTDパスを決めて、突き放した。サンダーは第4Qに、TD2本で追いすがったが届かなかった。
近江とバードソン、Xリーグ勢が存在感 WR近江は12ヤードのTDパスキャッチ、QBバードソンは4TDパスと、Xリーグ勢が欧州で存在感を示した。
特に近江へのTDパスは、エンドゾーンの隅に、マンツーマンカバーのDBの頭の上を超す絶妙のコントロール。タイミングよく走り込んだ近江が「技あり」のキャッチだった。
近江は「ELF初戦でTDできて嬉しく思います。試合中に(フレッド・アームストロング)ヘッドコーチとマイケル(・バードソン)に、ゴール前でマンツーマンがくるからフェード(パス)を投げてくれと頼みました。完璧なパスを投げてくれました」と語った。
近江は、立命館大で主将を務め、IBMに加入後は、2019年に544ヤード7TDで、オールXリーグに選出された。2020年の日本代表チームでは主将を務めた。その後は、米育成プロリーグのTSLに参加、今季はカナダのプロフットボールCFLを目指していたが、4月中旬のCFLグローバルドラフトでは指名がなかった。
5月にEFLのキングス参加を発表したが、米国人選手と同等の扱いで、プレー機会は欧州出身の地元選手に比べ制限がある。それでも、この試合はTDパスを含めて5回28ヤード、パントカバーで2タックル、キックオフで26ヤードのリターンと、スペシャルチームでも活躍を見せた。
キングスでは、2TDパスキャッチのナトルも、米のカレッジフットボール経験者で、CFLグローバルドラフトにもエントリーしていた実力者。富士通のハイパーオフェンスで磨いたバードソンのパス能力を引き出すレシーバー陣をそろえている。
終盤、大量リードの緩みからか追い上げられたが、NFLEのチーム名を引き継いだ有力チーム相手に大量点を取ったキングスのパスオフェンス力は、他チームも座視できないだろう。
近江は「ここから毎週試合と、タフな戦いが始まりますが、怪我せずTD量産したいと思います。引き続きご声援のほどよろしくお願いいたします」と力強く語ってくれた。
ELFはドイツを中心に、スペインとポーランドの3カ国が参加して、今年から新規に始まったヨーロッパのプロフットボールリーグだ。組織は新設だが、2007年まで活動したNFLヨーロッパリーグ時代のチーム名称を引き継いだフランクフルト・ギャラクシー、ベルリン・サンダー、バルセロナ・ドラゴンズなど8チームが参加した。2021年は、レギュラーシーズンは10試合で、8チームが南北2つのカンファレンスに別れ、地区内は2試合、地区外1試合の計10試合を戦う。上位2チームずつがプレーオフに進み、9月26日に王座決定戦を行う予定だ。
中継映像を見る限り、観客数が少ないのが気になったが、近江によると、この試合はベルリン州の規制で選手、スタッフ、観客の人数上限が500人となっていたという。