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2021-07-16

【陸上】寺田明日香が違和感を持ちつつも「ママアスリート」として活動する理由【連載#2】

東京五輪女子100mH代表の寺田明日香(ジャパンクリエイト)

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何かを捨てるじゃなく両方のために考える

 私が「ママさんアスリート」として活動していると、「お子さんかわいいですね!」や、「結婚・出産と競技が両立できるならやりたいなぁ」と若い選手たちから言ってもらえることがあります。若い選手に興味を持ってもらえることは、私にとって本当にうれしいことで、今の競技生活スタイルにチャレンジして良かったと思わせてもらえる瞬間でもあります。

 日本人は、「大きな物を得るためにほかの物を捨てる」、ということをしがちに思いますが、「両方を得る」ためにどうしたら良いかを考えることは、決して悪いことではありません。 

 ただ、自分ひとりでできることには限りがあります。自分が進みたい道に進むには、誰かに頼る、助けてもらうことも必要になります。若いころの私は、「誰かに頼るなんて、絶対にしたくない」と思っていたし、自分ひとりで何でも解決したいと思っていました。今の私は、本当に多くの方々に助けていただきながら、競技をしています。

 2019年の世界選手権で、アリ選手と子どもたちのウイニングランを見た娘は、「果緒も(ウイニングランを)やりたい! 今はママの足が遅いからできない!」と言っていました。なかなかそういった機会はないかもしれませんが、今の私のモチベーションは、そこにあります。

「ママさんアスリート」と呼ばれ、活動することにはまだまだ違和感があるのですが、「ママさんアスリート」が当たり前に選択肢のひとつとなるよう、目標に向かう過程や結果で示していきたいと思っています。


Profile
てらだ・あすか
1990年1月14日、北海道生まれ。柏丘中→恵庭北高→北海道ハイテクAC(以上、北海道)→パソナグループ→ジャパンクリエイト。小学生時代に全国で活躍し、中学では伸び悩むも、高校では100mHでインターハイ3連覇、3年時は100m・4×100mRとの三冠。2008年の日本選手権では100mHで史上最年少優勝を飾り、10年まで3連覇。09年のベルリン世界選手権に出場。13年に引退し、大学進学・結婚・出産を経て、16年8月に7人制ラグビー転向。18年12月、陸上競技に復帰し、19年9月に12秒97(+1.2)を出し、19年ぶりに日本記録を更新。ドーハ世界選手権に出場。東京五輪イヤーの今季、4月に12秒96(+1.6)、6月に12秒87(+0.6)と立て続けに日本記録を更新。11年ぶりに日本選手権優勝。東京オリンピックでは決勝進出を目指す。

文◎寺田明日香 写真◎BBM

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