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2021-07-23

【アメフト】フラッグに「選手を取った、取られたという時代ではない」日本協会・輿亮さんに聞く(1) 

JAFA常務理事の輿亮さんはフラッグにもアメフトにも精通している=撮影:小座野容斉

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7月24日、富士通スタジアム川崎で、フラッグフットボール男子日本代表が対戦する強化試合の相手は、6月に初開催された、大学対抗トーナメント「フラッグボウル」出場選手から選ばれた関東学連選抜チームだ。

 現役大学生アメフト選手で編成されたチームがフラッグ日本代表と戦う意義はどこにあるのか。日本アメリカンフットボール協会(JAFA)常務理事(フラッグフットボール担当)の輿亮さんにお話を伺った。

 富士通フロンティアーズの指導者として、常勝チームの礎を築いた輿さん。NFLファンには、解説者として、豊富な知識とユーモアあふれる話術でおなじみの存在だが、フラッグフットボールとも関係が深い。富士通のフラッグチーム「FFFC」で、長年にわたって、小学生を指導してきた。教え子の中には、今はXリーグや大学のトップレベルで活躍する選手も多い。フラッグ、アメフト双方に精通する輿さんの話をお読みいただきたい。(取材・構成:小座野容斉)

【インタビューの後編】【アメフト】五輪種目化をフラッグで目指す理由とは 日本協会・輿亮さんに聞く(2)

■関東学生アメリカンフットボール連盟(KCFA)が初めて開催した「フラッグボウル2021」について

 「アメフトの選手たちが、シーズンオフにフラッグフットボールの選手を兼ねる、これは僕たちは『兼部』という言い方をしています。もうお互いに選手を取った、取られたという時代ではない。」

 「アメフトの選手が、確かにフラッグフットボールに一番近い。彼らがオフシーズンに負傷リスクの少ないフラッグフットボールで、練習をして大会が開かれるというのは、アメフト協会の人間としても凄く良い話だなと思っています。」

 「KCFAがフラッグフットボールの大会を開催する意向を持っている話は以前から聞いていました。昨年は新型コロナウィルス感染症の影響で、アメフト本体も大変な状況の中でしたが、初志貫徹して(6月26日の大会という)一つの形に結びつけました。」

 「今年に入ってから、オンラインでフラッグのルールクリニックも行いました。IFAF(国際アメリカンフットボール連盟)のフラッグルールは厳しいこともあり、選手たちには『コンタクトが如何にいけないのか』ということを強く言いました。(フラッグの男子代表の)岩井歩監督もそういう反則の事例映像を用意してくれました。」

 「フラッグボウルを、見ている限りでは、危険なプレーに関しては厳しく判定をする、(止まらなければいけない場面で)オフェンスが止まらなければイエローを投げる、ということを意識的にやってもらっていたし、選手たちもしっかりそのような意識を持ってやっていました。サイドラインの味方から『止まれって言っただろ』というような声も飛んでいました。」

 「アメフトに似ているのだけれど、コンタクトを排した違うスポーツだという気持ちをきちんと持って皆さんが取り組んでいるのがわかっています。」

 「ひとつ残念だったのは、やはりコロナの関係で、アメフトが十分に練習できていない。だから夏のオフの取り組みだったはずのフラッグにも練習時間を割けていないという面があります。参加チームは少なかったし、女子も参加チームが無かった。」

 「そういう意味では(男子7校参加、女子はゼロと)当初の思惑の規模ではなかったですが、第一歩をしっかり踏み出すことができたのは良かったと思います。KCFAの廣田慶理事長が言うように、今直ぐは無理でも、将来的に、この学生の中からジャパンが出てくるかもしれない。」

■アメフトとフラッグの「兼部」

 「アメリカンフットボールは、やはり試合に出られる子、出られない子というのは出てきますから。サイズの問題もあるだろうし、いくら交代自由と言っても、試合に出られない選手はどうしても出てくる。でも、フラッグには向いている子は必ずいるはずです。」

 「繰り返しになりますが、いろいろなスポーツがある中で、選手を取った、取られたではないと思います。『兼部』を認める流れで、大学アメフト部がフラッグ部門を作る、フラッグの方が適性があるので軸足を移す子が出てくる。」

■大学生のアメフト選手と対戦する意味

 「男子代表の岩井監督が頭を悩ましている一つの問題は、代表選手の高齢化です。で、国際大会へ行くと1日の試合数が凄く多いし、選手の回復の問題が出てくる。」

 「他の国は、大学や社会人のアメリカンフットボールに熱心でなかったり、無かったりする。そうすると、その世代の若い選手たちがアメフトではなく、フラッグをやっているのです。それに比べて日本は、どうしてもアメフトがメーンということがあって。アメフトを終わってから(引退してから)フラッグという選手になっている。」

 「フラッグの世界でも、ベテランならではの熟達もあるのですが、やはりそれを上回るフィジカルの強さが出てくる。」

 「フラッグボウルに出てきた大学生選手のような、若い子たち、フィジカルで圧倒できて回復も早いというアスリートが、一人二人、熟達の技はなくとも、日本代表に入ってきたりすると良いのではないかと思います。」

 「今回の強化試合で日本代表が対戦する関東学連選抜が、チームとしてフラッグフットボールが本当に強いかどうかはわからない。でもフィジカルに強い選手、速い選手、でかい選手、パスの球速も速いとか。『そういうのはあるんじゃないですか』と岩井監督と話しています。」

 「それは、アメフトの国際大会で僕らが過去に対戦してきた海外チームとのフィジカルの差に近いものがある。そこに強化試合の意味があるのではないか。そう思っています。コンタクトはなくとも、競り合って負けるとか、パスのカバーをしたつもりがカバーできていないとか。」

 「アメフトで国際大会を戦うと、当たった瞬間に骨がきしむとか、よく聞きます。フラッグは骨はきしまないのだけれど、肌身で感じるスピード感の差があります。あるいはジャンプ力で差があるとか。」

 「コーチに聞くと、フラッグの女子の世界レベルは、バレーボール選手のようなタレントが出てきて、背が高い、ジャンプする、絶対にパスを捕られてしまうということがあるそうです。フラッグは、デイフェンスが腕を叩いて防ぐのも反則なので。」

 「そういう意味では、来年のKCFAフラッグボウルでは女子もぜひ参加してもらって、チームを作って強化試合で対戦してもらいたいと思います。」

■フラッグならではの魅力とは

 「フラッグフットボールは、男女がミックスしても試合ができる。男子選手と女子選手が、同じルールで同じフィールドに立てる、数少ないスポーツです。IFAFはミックスカテゴリーを持っていませんけれど、このレベルであっても個人的には男女ミックスはあっても良いのではないかと。それで女子選手がタッチダウンを取ったら得点を倍にするとか。そういう特別ルールがあっても盛り上がる」

 「ハドルボウルは女子選手(大学OB対抗戦のチャリティー大会)が混じって試合をやっているわけですから。」

 「富士通スタジアム川崎の田中(育郎)支配人と話をしたのですが、『フラッグフットボールはラグビーのセブンスと一緒で、いろいろな強いチームを1日で見ることができるというのが魅力です』と言われました。『こんなに多くのいろいろなチームを、しかるべき時間の長さで、一つのフィールドで、見られることはない』と。それもフラッグの魅力の一つです。」

 (次回に続く)

【小座野容斉】

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