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2021-08-23

明徳義塾・馬淵監督のスクイズ論。「オレはスクイズは1回も外されたことがない」

勝つための確率を考えて采配を振る馬淵監督。頭を使った野球を選手に徹底させて戦う

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夏の甲子園2回戦で好投手・風間球打を擁する明桜を破り、25日に松商学園(長野)との3回戦に臨む明徳義塾高。分析をして策を練り、確率を見極めて勝利を目指す、名将・馬淵史郎監督の育成術をまとめた書籍『明徳義塾・馬淵史郎のセオリー』から、その一部を数回に分けて紹介します。

馬淵史郎のセオリー「どんな球もスクイズをする練習をする」

このセリフを何度聞いただろうか。

「オレはスクイズは1回も外されたことがない」

馬淵監督はそれぐらいスクイズを出すタイミングに自信を持っている。

「自慢じゃないけどスクイズは1回も外されたことない。甲子園でもウエストされたのは1回もない。というのは、外されるカウントのときにはスクイズは出さんということ。一塁があいてるときが一番出しにくいんよ。特に相手が敬遠気味にきてるとき。そうじゃないときは、『どうにもならん。スクイズで1点取られた方がいい』と思ってるチームはなんぼでもある。外されるカウントで出したら監督の責任や。『ここはどうしてもよう外さんやろ。外せるなら外してみぃ』というとこでしかオレは出さない」

外される心配はないから、あとは選手の責任。逆にいえば、監督を信用しろということだ。

「偶然、ボールになったときはあるよ。でも、そのときは(バットが)届かん球なんてない。だから選手には『オレが出したときはウエストはないと思っとけ。ただし、たまたまワンバンになったりするときはある。それはお前らの責任でやってくれ』と。外されたときの練習もするんやけど、そのときはファウルにしてくれればいい。『監督に恥かかすな』と言うとる」

ここまで言い切れるぐらいの自信があるから、セーフティースクイズは使わない。やるとしたら、スクイズだけだ。

「セーフティースクイズの練習はやってるけど、『戦法としてあるよ』と言うための練習。ほとんど使わない。よっぽど三塁ランナーがよくてバントがうまいヤツじゃないと決まらないから。それやったら、外せないカウントでスクイズを使う方がずっと楽ですよ」

監督の自信が選手に乗り移るのか、明徳の選手はボール球でもスクイズを決めることがよくある。11年夏の高知県大会決勝・高知戦では9回表一死三塁で今里征馬が頭より上の球を三塁線に落として成功させた。

馬淵監督にとって思い出の試合のひとつになっている14年センバツ1回戦・智弁和歌山戦。仲の良い髙嶋仁監督に勝った試合もスクイズが大きかった。12回表に1点を勝ち越されて迎えたその裏の攻撃。一死一、三塁、カウント3─1から一番の尾崎湧斗がスクイズを決めて同点に追いついた。尾崎は「初球から甘い球を振っていけ」と馬淵監督に言われていながら、「1ストライクになればスクイズがあると思った。スクイズの方が自信があった」と見逃し。言葉通り決めてみせた。尾崎は言う。

「高校入学後、バント練習は全部スクイズを想定してやってきました。スクイズができれば他のバントはできるからです。ボール球でもワンバンでも全部バットに当てようとやってました」

尾崎がバントしたのはストライクの直球だったが、監督に恥をかかせない準備はできていた。

監督の中にはケガや失敗したときの心理面を考えて投手にサインを出さない人もいるが、馬淵監督にそんな考えはない。

「ピッチャーは絶対せないかんよ。ピッチャーと四番こそ絶対やらないかん」

甲子園でも03年夏の甲子園2回戦・平安戦で四番・山口秀人にスクイズを命じている。1対2で迎えた8回表一死二、三塁、カウント1─1からサインを出したがファウル。結局、得点できずに敗れ、「100パーセント、スライダーのカウント。スライダーのスクイズ練習はしてたのに」と悔しがっていた。

「明徳の四番はスクイズができないとダメ。バッティングのいいヤツはタイミングがいいから、ほとんどがバントうまいよ」

打順、ポジション関係なく全員がスクイズを決められなければいけない。打てなくても点を取る。負けない野球の準備をするのが、明徳野球なのだ。

田尻賢誉・著『明徳義塾・馬淵史郎のセオリー』(ベースボール・マガジン社、2021年)より

明徳義塾高・馬淵監督の大胆かつ緻密な戦い方と育成術をまとめた『明徳義塾・馬淵史郎のセオリー』


『明徳義塾・馬淵史郎のセオリー』

明徳義塾高・馬淵監督の大胆かつ緻密な戦い方と育成術をまとめた一冊

『明徳義塾・馬淵史郎のセオリー』では馬淵監督の戦略と育成術について、第1章から7章までテーマ別に83のセオリーとして紹介している

明徳義塾・馬淵史郎のセオリー』
本書では馬淵監督の戦略と育成術について、第1章から7章までテーマ別に83のセオリーとして紹介している

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