大栄翔(寄り切り)照ノ富士「急性扁桃炎」による発熱で3日間休んだ豊昇龍が復帰後2連勝。若隆景と対戦した豊昇龍は、一本背負いと払い腰(二丁投げ)の合わせ技、豪快な柔道技で勝ち、館内を大いに盛り上げた。9日目の一番はこの相撲かなと思っていたら、結びで大波乱が起きた。
ひとり横綱の照ノ富士は大栄翔と対戦。大栄翔が優勝した今年の初場所では、照ノ富士が完敗を喫したが、その後は攻略して照ノ富士が連勝している。安易につかまえにいかなければ、照ノ富士は負けないだろうと思われていた。
立ち合い、低く当たっていった大栄翔。照ノ富士も左足から踏み込みよく左手を伸ばして上手を狙うが、サガリしかつかめない。サガリをつかまれたことで大栄翔は突き放せず、互いに低い体勢で相手の肩に頭をつけ合う。
数秒の膠着状態から大栄翔が振りほどいて突き放し、左のノド輪押しで照ノ富士の上体を起こすと、右はハズ押しで前進。最後は二本差さる形で寄り切った。照ノ富士としては、立ち合いから廻しを取りにいったのが敗因か。
横綱となった照ノ富士から初めて金星を奪った大栄翔は、「本当にうれしいです。起こされたり、廻しを取られたら話にならないので、取られないように我慢でしたね」と振り返る。
サガリを取られて動きが止まったが、「自分ではよくわからないけど、攻められたのでよかったです。作戦なんてないんで、胸を借りるつもりで思い切っていった。全力で自分の力を出し切ったので、実になる相撲でした。自信になります。この先もこういう相撲を取っていきたい」と興奮気味。
金星はこれが3個目で、白鵬、鶴竜、照ノ富士から1つずつだ。「常に三役にはいたいので、早く戻りたい。勝ち越さないと」と、横綱に勝っても金星にならない三役復帰を熱望している。これが6勝目で勝ち越せば殊勲賞は堅いだろう。今場所は西の4枚目で、二ケタ以上勝てば三役復帰の可能性も出てくる。
初黒星を喫した照ノ富士だが、1差で追っていた妙義龍が敗れたため単独トップは変わらず。10日目は宇良との対戦が組まれたが、何をしてくるかわからないだけに、敗戦後の相手としては非常に嫌な力士だ。
文=山口亜土