妙義龍(掬い投げ)貴景勝照ノ富士が2敗目を喫したことにより、にわかに混戦模様となってきた。1差で追う3敗は平幕の4人。まず遠藤が霧馬山に勝ち、隠岐の海が逸ノ城に敗れて脱落した。3人目の妙義龍は大関貴景勝と対戦。
妙義龍はこれまで貴景勝に13連敗で、一度も勝っていない。ともに埼玉栄高で妙義龍が10年先輩となる。先輩の意地で1つぐらいは勝っておきたいところだ。
立ち合い、妙義龍は右からカチ上げて右差しを狙うが、貴景勝に下からあてがわれて差せず、互いに細かく突いて様子を見る形。しばらくこの状態が続いたが、妙義龍が軽く叩いたところを貴景勝が一気に前に出た。下がりながら左を差した妙義龍が土俵際で掬い投げ。貴景勝が落ちるのと妙義龍が土俵を飛び出すのがほぼ同時だったが、軍配は妙義龍で物言いはつかず。スローで見ると、貴景勝のほうがわずかに早かった。
3敗を守った妙義龍は、「今までいろいろ考えすぎて勝てなかったので、思い切り踏み込んでからという感じです。最後の最後で勝ててよかったけど、いい相撲で勝ったわけじゃないし、たまたまです。俵に詰まっていたので、一瞬の勝負だったと思います。よく体が動いています」と振り返った。
優勝争いについては、「そんなに考えてないです。今は相撲が取れることに感謝して取っています。気を緩めず、自分らしくペースを崩さずやっていきます」と語る。
家での過ごし方を聞かれると、「いつもと変わらないです。食事をして体のケアをして」と苦笑い。長男の泰吉くんは4歳になり、お父さんの仕事のこともわかってきた。「相撲はテレビで見てるようですよ」と妙義龍は言うが、「相撲の話はしませんね」。おそらく奥さまがパパと相撲の話はしないようにと言い聞かせているのだろう。子供なりに気を遣っているのかと思うとほっこりする。
平幕3敗の4人目・阿武咲も正代を破って、3人が3敗を守った。照ノ富士が敗れれば大変なことになるが、左四つに御嶽海をつかまえて寄り切った。御嶽海の秘策とは何だったのか? 左差し、右おっつけが作戦だったのか。リモート取材を拒否したので、真相はわからずじまいだ。
文=山口亜土