アメリカンフットボール・Xリーグの最上位「X1スーパー」は10月31日、大阪市のヨドコウ桜スタジアムで第5節の2試合があった。共に4戦全勝のオービックシーガルズとパナソニックインパルスの一戦は、パナソニックがオービックに競り勝った。パナソニックは5戦全勝で勝ち点15、オービックは4勝1敗で勝ち点12のままとなった。両チームは、上位4チームで争うプレーオフ進出が決まった。
パナソニックインパルス○13-6●オービックシーガルズ(2021年10月31日、ヨドコウ桜スタジアム)【得点経過】
オービック 第1Q 7:34QBジミー・ロックレイ→WR水野太郎, 11ヤードTDパス (星野貴俊キック失敗)
1プレー11ヤード0:12 [0-6]
パナソニック 第2Q 3:53 RBミッチェル・ビクター ジャモ―,17ヤードTDラン ( 佐伯眞太郎キック成功)
9プレー76ヤード3:35 [7-6]
パナソニック 第2Q 7:14 K佐伯39ヤードFG [10-6]
パナソニック 第2Q 12:00 K佐伯21ヤードFG [13-6]
オフェンスのこの出来は、満足できない 俳人の小林一茶風に言えば「めでたさも 中くらいなり おらが秋」という感じだろうか。試合後のパナソニック荒木延祥監督は、決して喜んではいなかった。昨年11月、逆転勝利を目前にしながら、ゲーム最終盤に痛恨のミスで敗れ、日本一への道を閉ざされたオービック戦。そのリベンジを果たしながら、荒木監督は納得が行かなかった。
「ディフェンスは、本当にようやりました。QBへよくプレッシャーがかかっていたし、パスカバーもよかった。」
昨年と打って変わった、ロースコアのタフな試合。オービックに第2Q以降の得点を許さなかった。3QBサックのOLBジャボリー・ウィリアムズを筆頭に、強力ディフェンス陣が、QBロックレイを常に追い込んだ。第3Qには、オービックWR西村有斗への、レシーブすればTDというパスを、マンツーマンで守っていたDB竹内廉が防いだ。


「でも、すっきりしない。これが(結果が求められる)準決勝とかであれば別ですが。この試合で、オフェンスのこの出来は、満足できない」
ランプレー自体は、立てたプラン通りに、ほぼうまく行っていたという。
「ランは、我々のオフェンスの大きな武器。RBは、横田も、(ルーキー)立川も、ジャモ―も藤本も、誰を出してもいい結果を出してくれると信じていた」
象徴的だったのは、第2Q冒頭の、自陣内のインターセプトから始まったドライブだ。イリーガルブロックの反則があって、2ndダウン16ヤードから、パナソニックはRB横田惇が6ヤードのラン。次の3rd&10では、横田へのスクリーンパス。今どきの流行、アウトサイドへのWRスクリーンではなく、フィールドの中央でOLがブロックし、RBが走るという実質的にランに近いプレーで23ヤードをゲインした。
仕上げはRBビクタージャモ―の17ヤードTDラン。何の変哲もないショットガンドローだが、パナソニックOLが完璧なブロック、大きな穴が開いていた。レシーバーがセカンダリーを引き付けていたので、ビクタージャモ―は誰にも触られずにエンドゾーンまで走り込んだ。


「OLは、しっかり仕事をした。特に前半よく(オービックディフェンスを)コントロールしていた。しっかり地上戦を戦えていた」
パナソニックのこのドライブの4プレー目には、QBアンソニー・ローレンスが外を突くランがあった。QBのオプションだったが、OLのインサイドブロックがオービックDLを完全にコントロールしており、RB藤本拓弥のダイブだったらロングゲインになっていた。
国内最強を自負するオービックDLが、ここまで連続してライン戦でコントロールされるシーンは見たことが無かった。大きくフィジカルに強いパナソニックOLの勝利だった。
「まず何よりも第一に、フィジカルで相手に勝つというのは、物凄くこだわってやってきている。コロナ下でも、みんなよく鍛えてレベルアップしてきたことは確か」

それなのに荒木監督は浮かない顔をしていた。
「試合のスタッツを見てみないからわからないけれど、ランプレーがある程度コンスタントに出ていながら、後半は無得点で、この点数、この試合結果というのは、オフェンスとしては駄目」
第1Qにはターンオーバーで失点した。QBローレンスは、勝負所でパスを決め切れず、成功率42.8%にとどまった。前半だけで120ヤードを超えたランが、後半はわずか3ヤードだった。
「ライン戦で勝つ、ランを出す。個々のプレーではそれはうまくいった部分もあるが、得点に結びつけないといけない。それが我々の大きな課題。一定のところがかみ合えば、気分良く笑える試合ができたと思う」という。
この2年間、試合の場が少なすぎる 荒木監督は、新型コロナウィルス感染症により、試合数が少なくなっているのが影響しているとみている。
「まあ、言うても、オフェンスというものは、やはり場数。試合を重ねてプレーを重ねて作り上げていくもの。それがこの2年間は、やはり少なすぎます。これはXリーグ全体の問題でしょう」と話す。それは、パナソニックだけではなく、「BIG3」の富士通やオービックにも共通することかもしれない。

3強が同時に進出を決めた準決勝まであと1カ月半。パナソニックが、6年ぶりの王座奪還を果たすためには、リーグ戦の残り2試合でどれだけオフェンスの完成度を高められるかにかかっている。