WBO世界スーパーフライ級チャンピオン、井岡一翔(志成)は25日、東京都内で記者会見を開き、12月31日に東京・大田区総合体育館でIBF世界同級チャンピオンのジェルウィン・アンカハス(フィリピン)と王座統一戦を行うことを発表した。「必ず勝って、4団体統一戦を実現させたい」と井岡は意気込んだ。「今回はKOしたいとか、いいパフォーマンスを見せたいというのはない。とにかく純粋に勝ちたい。IBFのベルトを獲るために懸命に戦っている姿を見てほしいと思っています」
まだ、1ヵ月以上も先の試合のことながら、井岡の言葉にはその1つ1つ力がこもっているように聞こえた。9月のフランシスコ・ロドリゲス・ジュニア(メキシコ=判定勝ち)では力量差は明白ながらも、内容的には意外に手こずった印象も強かった。「独りよがりになって、自分のやりたい形にはめ込んではいけないということです」。苦戦の経験は次に必ず生かせると、以降は年末にどうしても実現したかったこの統一戦へと思いを振り向けた。
「体を休ませすぎず、練習を再開しました」。毎週末には横浜・根岸に出向き、走り込みを重ねてきた。すでにスパーリングも開始して、12月に入れば長いラウンドの本格的スパーリングも実施するが、そのための準備は万全だという。
この日はビデオでコメントを寄せた対戦者アンカハスは29歳のサウスポー。IBFのチャンピオンになってから5年。すでに9度の防衛に成功している。
「むちゃくちゃ強い」。試合が決まり、あらためてその映像を見たアンカハスの印象を井岡はそう語る。「穴がない。アグレッシブである。ディフェンスも丁寧」。そして「ガードの上でも何でも打たせてしまうと、どんどんリズムに乗ってくる」。声高に強敵であると訴えるところに、何としても「勝ちたい」という意欲の高さを再び感じさせる。「どういう形で戦うかは、もちろん明かせません」と言ってみ見せた笑顔にも自信が漂う。
ときおり浮かべる笑顔にも、待ちわびた戦いが実現した喜びがうかがえた 井上尚弥(大橋)の2年ぶり日本登場、そして何より村田諒太(帝拳)対ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)の歴史的な戦いと続く、日本ボクシング界のとことん熱い師走。井岡は文字どおりその大トリをつとめることになる。
「ほんとうのところ、周りのことは意識していません。自分が勝つことだけで精いっぱいです」
その表情にも念願の戦いに臨めることへの喜びだけが浮かんで見えた。アンカハスに勝てば、残りのWBA・WBC王座に座るファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)がいるだけ。4団体統一戦実現もぐっと近づく。
「エストラーダとすべてのタイトルをかけて戦いたい」。だからこそ、アンカハスには必ず勝つと、井岡は繰り返し誓った。
写真◎本間暁