14日、TKO勝ちでWBAスーパー・IBF世界バンタム級タイトルを守ったばかりの井上尚弥(大橋)が、15日、横浜市内の大橋ジムで一夜明け会見を行った。「ダメージはまったくないので、そろそろとロードワークを始めたい」と語る表情には、余裕と自信ととにに、次戦にかける闘志の火もうかがい見えた。 冒頭の代表質問で、「勝因は?」と問われた井上は「え? 何ですかねぇ」と返答に窮した。海外の猛者みたく「オレが強いからに決まっているじゃないか」と言わないところが、気遣いができる青年、井上らしい反応なのかもしれない。ただ、発言の端々に自信を忍ばせた。
「タフな相手を倒しきれたのがよかった点ですか。とにかく、春のビッグマッチにつなげられたのもよかったですね」
父・真吾トレーナーが「あっぱれ」と言うほどの無類の打たれ強さで立ち向かってきたアラン・ディパエン(タイ)にあらゆる手を尽くし、フィニッシュに持ち込んだ。それでも、井上は物足らない。
「タフネスに面食らってしまって。終わってから、もっと視界を広くできなかったか、もっと見せられたものがあったんじゃないかと考えました」
普段のジムワークで磨いてきたものを、全部出しきれたわけじゃないとも。強いチャンピオンは、常に前向きなのだ。
一方、今後はバンタム級の4団体統一とともに、スーパーバンタム級への転身する可能性を初めて口にしたことについては、現実性を帯びた選択肢の1つとした。
「研究として観戦したのは(スティーブン)フルトンと(ブランドン)フィゲロア戦(11月)が初めてですね」
そして、こうも言い切った。
「自分が望む試合が、ファンの望む試合だと思います」
ファンの信頼を勝ち得ている。確かな感触が、そんな強気の発言をさせるのだろう。